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01-06 飛行魔法

 ……さて、新展開(笑)

 どこまで矛盾を無くせるかという、私自身との勝負っぽいものです。


 今回は、比喩や背景の描写を少し入れてみました。

 これがかえって裏目に出ないか心配ですが、書いてみないと何も上達しないですよ……ね?


 では、本編をどうぞ~!

 ある日アレイシアは、すっかり彼女の魔法魔術研究所となってしまった屋敷の地下室にて、飛行魔法の研究をしていた。

 何故この様な突拍子も無い研究を始めてしまったのかといえば、話は三ヶ月程前にまで遡る。


 いつも通り、自室で魔法魔術関連の大本をテーブルの上に広げた時、たまたま目に入ったのが飛行魔法の研究の項目だった。

 その本によればどうやら、この世界に飛行魔法は存在しないらしい。人型で空を飛べるのは、獣人の中でも鳥人や、獣人の最強種である龍人と竜人のみなのだという。

 極東の地に住まう"ヨウカイ"という人外の中には、人型で空を飛べる者も居るという噂だが、その辺りの真偽は全くの不明である。


「そうかぁ……」


 項目を一通り読み終え、飛行魔法が存在しないという事実に落胆の表情を浮かべるアレイシア。ついでに、腕を前にだらしなく伸ばして本の上に突っ伏してしまう。

 身一つで魔法を行使して飛ぶどころか、御伽話(おとぎばなし)の様に箒に跨って飛ぶ事も不可能なのだ。

 魔法にこの様な期待を少なからずしていたアレイシアは、ならどうすべきか、と考えを巡らせた。結果、現在の研究を始めるに至ったのである。


 最初は、下から吹き上げる風で自身の体を浮かせられないかと考え実行に移した。スカートが大きく捲れ上がったものの、足が僅かに浮いた状態を五秒間維持する事が出来たのだ。これで希望の光が見えたと思い、アレイシアは更に研究を続けた。

 そして今日、スカートの件の反省を活かし、風を弾く結界を自身の周囲に張るという結論に辿り着いたのである。


「願いよ届け。我、宙を舞わん事を望む! 飛行(aviate)!!」


 ゴォッ……!!


 アレイシアが一から作った完全オリジナルの魔法であり、東次による地球の物理学の知識をフル活用した飛行魔法は————


 ……ガツン!!


「……痛ぁっ!!」


 一瞬浮かぶもすぐに頭から落ち、失敗に終わってしまった。

 アレイシアは涙目で頭をさすりながら何がいけなかったのかと考える。そして、アイデアが記された卓上のノートに手を添えた。


「んー……」


 羽ペンで描かれた、円の中央にある棒人間の絵と、その周囲を覆う幾つもの矢印。恐らく、円が風を弾く結界、棒人間がアレイシア、矢印が気流を表しているのだろう。

 アレイシアは、円の上部の矢印に指を走らせていた。そこでは、上向きから下向きに矢印の方向が変わっており、結界を包み込む様に風を流すという意図が感じ取れる。

 ただ、彼女は考えた。この上部の下向きの風が、自身の落下を引き起こしたのでは無いかと。上昇に合わせて気流も上へと昇らなければ、風によって床へと押し戻されるのは当然の事なのだ。

 思い立ったが吉日。気流を見直さなければと思い、すぐに研究机へと向かって行った。目標は飛行魔法で世界を見て回り、いずれは極東の地へと海を超えて行く事だ。






 それから数ヶ月。満月の下、テラスで本を読んでいたナディアは驚きの光景を目の当たりにする事となる。


「か、あ、さ、ま!!」


「……え? あ、アレイシアちゃんどうしたの!?」


「ふふっ、飛行魔法が完成したので、外に出たくて来てみただけです」


 浮かんでいるアレイシアのその言葉にかなり驚いたナディアだったが、すぐに驚きを何倍も通り越してしまったため……


「……はぁ、行ってらっしゃい。二刻以内に戻って来てね」


 と、幾分呆れを含めた声量でそう言った。


「分かりました、行って来ます!」


 そう言い残し、アレイシアはその場を離れて行った。









「失礼します」


 イルクス城の王の間に、一人の男が扉を開け中へと入って行く。その男は茶髪混じりの濃い金髪を持ち、一目で貴族と分かる様な豪勢な服装に身を包んでいる。中央の王座に座るのは、三年前にアレイシアの断る断る攻撃を受けたイルクス国王だ。窓には全て緋色のカーテンが掛けられており、王の間は全体的に薄暗くなっている。

 王座の手前。段差になっている場所に立ち止まった男は、立ち膝の姿勢を取ると視線を上げ、国王に向かって何の前置きも無く話し始める。


「アレイシアは、物凄い才能を持つ少女だ。国の上層部に入れられればなかなか有用な人材だろう」


「確かにそうじゃ……しかし、三年前に息子の嫁にと思って誘った時も断られてしまったから、誘い事は難しいじゃろう」


「何!? 国王の誘いを断っただと?」


 広間全体に男の声が響き渡る。彼は国の政務の一部を任される者であり、国王に従う者の一人だ。その様な立場上、国王の誘いを断るなど言語道断だと思うのは当然の事であった。


「……しかし、彼女の種族が何だったかという事くらいはお主も分かっておるじゃろう?」


「……吸血鬼……!!」


「そうじゃ。今となってはこの国の中心となっているのは人外の貴族。例え相手が幼い少女であろうとも、吸血鬼の貴族であるという時点で容易く無理を強いる事は出来なくなるんじゃよ」


 国王の言葉に男はどこか追い詰められた様な表情になる。それはまるで、アレイシアが国王に従わなければ己が不利になるかの様な反応だった。しかし国王は、その事を少々疑問に思うも気のせいだったかとそのまま話を続ける。


「それに彼女は……あの二人を両親に持っておるんじゃ。オーラスとナディア、家名をラトロミアと変えて十何年か前に結婚しておった」


「あの二人、反乱側の……!? アレイシアは、そうだったのか……」


「まぁ、彼女が素晴らしい才能を持つのも納得じゃな。しかし、アレイシアが息子の嫁に入ってくれればのう……」


 国王の憂いを含めた声が響き、王の間は再び無音の空間となる。返答を出しにくい国王の言葉と、男の感情から来る気まずさが、二人が話し出すのを邪魔している様だった。


「……では、私はそろそろ失礼しても?」


「ああ……」


 静寂を先に割ったのは男の方だった。彼は立ち上がると、失礼しました、と一言残して王の間を去って行った。

 国王は勿論、これが後に悲劇をもたらす事になるとは思いもしなかっただろう。



 今回、大丈夫だったでしょうか……?

 読者様にはこの文がどの様に映っているのか、指摘を頂けたら幸いです^^;


 では、感想評価をお待ちしております!



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