03-16 厄介事は降りかかる
すみません、またまた更新が遅くなりましたが、現在始めから小説の全面改定を行っています^^;
理由はというと、矛盾を見つけたからでしょうか?
あとは描写不足の箇所もあったので、そこに改定を入れたいと思っています。
では、どうぞっ!
ひんやりとした風を受け、アレイシアとリセルは王都の上空を飛行する。
眼下に見える景色は、いつか闘技大会で二人が学園を上空から見下ろした時よりも更に明かりが多くて煌びやかだ。
特に、城門へと繋がる中心街は、多くの商店と酒場でかなりの賑わいを見せていた。
「……どこに降りればいいんだ?」
「路地裏とか?」
「そうだな」
これ程までに人が多いと、自然と着地出来る場所は限られて来る。誰にも見られずに着地しようと思ったら、路地裏に降りるしかなかったのだ。
絶対にスカートの中を見せまいと、これまでさり気なくリセルの後ろを飛行していたアレイシアは、翼の角度を調整し、受ける空気の抵抗を減らして一気に降下し始める。……勿論、スカートを両手で強く押さえながら。
タタッ!
着地したアレイシアに続き、リセルも地に足をつける。右を振り返って見れば、明かりの多い中心街が遠目に見えた。
アレイシアとリセルは適度に離れつつも横に並び、翼を収納してから中心街へと歩いて行く。
「ここは、酒場だな」
二人は暫く歩くと、ついに火系統魔法のランプが多く設置されている中心街へと出た。
リセルが言う通り、二人が出たのは酒場の裏だったらしい。酔っ払った男達が、酒場の屋根付きのテラスでてんやわんやの大騒ぎを起こしている。
「あ、厄介事フラグ」
「そう言うなよ……なるべく考えない様にしているんだから」
騒ぎ立てる男達をよく見てみると、中心にある何かを囲うように動いているのが分かった。さしずめ、何かしらの野次馬が集まっているのだろう。
「よっしゃああ! 茶髪の奴が勝ったぞぉお!!」
人集りの中央からその声が聞こえて来ると同時に、両手を上げて喜ぶ物もいれば、頭を抱えて床に崩れ落ちる者も————
「……賭け事だ」
「なんだ、やって見たかったり?」
「私はそういうの嫌いだから」
アレイシアはそう言うが、路地裏に立って酒場の中に目を向ける少年少女というのはどうにも目立ち過ぎた。
二人は何時の間にか、酒場の呑兵衛の注目の的となってしまっていた。そして、話は変な方向へと向かって行く。
「俺とこの女、どっちに賭けるか!?」
「へへっ、そりゃぁお前に決まってるだろ!!」
「待て、私が何時やると言った?」
口調が戻りっぱなしのアレイシアの言葉は、話に集中する男達の耳に全く届かない。
その時アレイシアが驚いたのは、意外とリセルが乗り気だったという事である。
「ならアレイシアに……銀貨一枚賭けるよ」
「ちょ、リセル何を!?」
銀貨一枚を賭けると聞き、男達の表情が明らかに変わった。
「……そりゃぁ面白い! 始めようぜ!!」
一番手前にいた男がそう言うと、周りの男達も同意する様に大声を上げる。
それをきっかけにし、ルトスはアレイシアの方へと思いっ切り殴り掛かった。
————あ、死んだなこいつ。
この場の誰もがそう考えた。
しかしリセルだけは、一言一句違わず同じ考えを持っていたにも拘らず、全く正反対の事を考えていたのだ。
「食らえやぁぁ!!」
「……うるさい」
雄叫びを上げるルトスに対し、むすっとした表情でそう呟いたアレイシアは、迫り来る右手にそっと左手を添える。
「うぉ、あ……!?」
アレイシアが手を添えた場所から痺れが広がり、ルトスは一瞬にして体の自由を奪われた。
全身が硬直して動かせない。そんな状況に彼を追いやったのは、アレイシアが手を添えた場所に流し込んだ魔力だった。
左手を流れる様な動作で後ろにやると、アレイシアは続け様に風魔法『気弾』を発動。
麻痺した体では指先を動かす事すらままならず、ルトスはその攻撃によって大きく吹き飛ばされた。
ザザァァッ!!
「あぐぁっ!!」
地を滑り、建物の壁に当たってやっとルトスは静止した。
アレイシアの狙いが上手かったのか、それともただの偶然か。通行人や店には全く迷惑が掛かっていない。
だらし無く足を伸ばすルトスに視線を向けると、アレイシアは呆れた様に口を開いた。
「……攻撃がストレート過ぎる。やるなら、もっと凝った攻撃を入れればいいのに」
「まだ戦……!」
「だめ、面倒だし」
余りにもキッパリと戦いを断るアレイシアの様子を見て、ルトスは完全に戦意を失ってしまった。
彼としても、幼い少女相手に本気で戦うのは気が引けたのだろう。例え、口元に見えた牙から彼女が吸血鬼だと分かっていてもだ。
「……戦意喪失でお前の勝ちか? なら、賭けの三倍の銀貨三枚でどうだ」
「いらない。精々ここで楽しく飲み明かしなさいな」
そう言い残し、リセルの腕を掴んでアレイシアは逃げる様な早足で歩き出した。何故なら、店の周囲に人が集まって来てしまっているからだ。あまり騒ぎを起こすと下手すれば、この区域の警備兵に御目にかかられるかもしれない。
……ただこの時、ルトスがアレイシアのポケットに銀貨一枚を滑り込ませた事に、彼女は全く気が付かなかった様だ。
それから暫く。談笑を交えつつも二人は歩き、中心街から少し離れた広場に辿り着いた。
それなりの広さを持つ広場の中央から、円を描く様に並べられた煉瓦の幾何学的模様が美しい。
「さっき、あの男の動きを封じるのはどうやったんだ?」
「魔力を軽く流し込んだだけ。心臓や肺は停止させない様にするの」
「……それ、滅茶苦茶難しくないか?」
何時の間にやら話題に登っていた先程の戦闘について、二人は会話をしながら木のベンチに座る。
少しずつ元に戻って来たアレイシアの口調。どうやら、感情の起伏に影響されて変化する物らしい。
ベンチに座った所で一旦話を切り、リセルは気になった事をアレイシアに問い掛ける。
「そう言えばその首飾り……」
「えーと、まぁ、某ワルキューレの人に貰った物よ」
「成る程、理解した。やっぱりあいつか……」
アレイシアの胸元にある十字架の首飾り。
それは、黒美さんが彼女にプレゼントとして渡した物だ。それは今も、広場の街灯の仄かな明かりを反射して弱い輝きを放っている。
「その人の名前知ってる?」
「知ってるが、アレイシアには教えられないな……」
「それは酷い」
「仕方無いんだ、約束だからな」
リセルのその表情から、言いたいけど言えないという感情が伝わって来た。アレイシアが、
黒美さんの本名を本当に知りたがっているという事が理解出来たからだろう。
「……吸血鬼に十字架って良いのかなぁと」
「良いんじゃない? 吸血鬼が十字架嫌いって言う考えが生まれたのはそもそも宗教上の問題だと思うし。それに、神と吸血鬼がこうして近くに居るのが何よりの証拠よ」
アレイシアはそう言うと、飛び上がる様にして勢い良く立ち上がった。
佑は竜人に適合しているとはいえ、神としての存在はきちんと保たれているのだ。言わば『竜神』であり、神力を持っている事もこの証明になる。
「私、その辺の武器屋見て来るわ。フィア達に御土産も買わなきゃだし」
「そうか、行ってらっしゃい」
「……違う、貴方も来るの」
リセルの腕をガシッと掴み、アレイシアは引っ張る様にして走り出した。
見た目の割に彼女の力が強かったせいか、リセルは半ば予想外な物事が起こったと同じ状態になる。つまり、彼はアレイシアを止める事が出来なくなったのだ。
「うぁ、待てって!」
「あ、見つけた。そこの武器屋とか良さそう!」
遊園地に来た子供さながら腕を引くアレイシアは、以前もこんな事あったかなと思いつつも広場の隅の武器屋へと入って行った。
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アリア「実はこれからの改定で、私と繋がりの強いキャラが一人増えるらしいけど……?」
クレア「そうらしいですね。名前はまだ決まっていないそうですが」
アリア「そう痛い所突かないでよ……」
クレア「では、感想評価をお待ちしております!」
アリア「次回も見てよねっ!!」




