03-15 王城内の騒乱
更新が遅くなり、すみませんでしたm(_ _)m
では、本編をどうぞっ!
アレイシアと国王は一先ず話を終え、接客室から出る事にした。また明日、続きを話す予定となっている。
飲み終わったアテのカップを従者の一人に手渡し、アレイシアは立ち上がる。国王に一度視線を向けてから、アレイシアは彼より先に部屋を後にした。
カチャッ——
「あ、レオル王子」
「アレイシア、話は終わったか?」
レオルは扉の前で待っていたのか、部屋から出て来たアレイシアに近寄って行く。そして、優しく彼女の右手を取った。
……しかし、アレイシアの表情からして、若干嫌々と手を握られている状態だというのが伺える。
「俺と少し来てほしい。話したい事があるんだ」
「……求婚以外なら幾らでも」
「それは残念だ」
そう言って笑うレオルに対しアレイシアは、求婚の件は国王の独断で言い始めた事では無かったのかと、若干身の危険を感じて身を震わせた。
アレイシアがその様な事を考えているとは全く知らずに、レオルは彼女に対してある提案をする。
「なら、リーシェに会ってくれないかな?」
「それなら、する事も無いし良いけど?」
ギィィ……
アレイシアのその言葉と同時に、接客室とは反対側の扉がゆっくりと音を立てて開く。
そこには、アレイシアの方をじっと見つめるリーシェの姿があった。心なしか、以前よりも可愛らしく飾られた服を着ているのは気のせいだろうか。
彼女は早速アレイシアの方へ駆け寄って行き、唐突にも彼女を強く抱き締めた。
「アレイシア、待ってたわ!」
「ぐ、苦しっ……!! 離し、て……」
ガクッ。
「あ。……って、大丈夫!?」
リーシェがアレイシアを固く抱き締めた直後、彼女は力無く首を後ろに傾ける。
それを見て、まさか気絶してしまったのではないかと考えたレオルだが、そこでリーシェはあまりにも予想外な言葉を発した。
「わ……だめっ! 死んじゃだめ!!」
「誰が死ぬかっ!」
そんなリーシェに反応し、アレイシアは首を一瞬で元の位置に戻すとツッコミを入れる様に彼女のの額を軽く叩いた。
仲良く漫才をしている様にしか見えない二人の様子に、レオルは呆れのため息を吐く。
「あー……アレイシア?」
「何?」
「今日は、泊まって行く気は無いか?」
始めの呼びかけには無愛想に答えたアレイシアだが、今日の宿を取っていない事を思い出すと途端に真剣な表情になる。
確かに、以前泊まった宿でもギルド三階の宿でも、王都を探せば幾らでも宿屋は見つかるだろう。しかしこの際、イルクス城に泊まって行っても中々面白そうだとアレイシアは考えたのだ。
「泊まって行く気は、どちらかと言えばあるわね」
「そうか、なら……」
「儂からしっかりと伝えておこう」
先程の接客室から出て来た国王は、三人の目の前に立ちそう言った。
リーシェが何やら、最高の客室を用意してあげてと国王に言っているが、アレイシアはあまり迷惑は掛けたく無いと、その話に割って入る。
「あ、私はそんなに」
「大丈夫! 迷惑が掛かるとか思ってるんでしょ?」
「う……べ、別にそんな事は」
「あるんでしょ?」
あまりに息がぴったりなアレイシアとリーシェの会話。
二人の様子を国王は、良い友達が出来た様で何よりだと思い見守っていた。
「そういう訳じゃ、準備させておこう」
「はぁ……」
その後アレイシアは、自身が生まれ育った屋敷の部屋よりも大きな客室に通された。
如何にも高級品と分かる机と箪笥、窓を縁取る緋色の鮮やかなカーテン。しかしそれらには全く目もくれず、奥にあった寝室の、これもまた上質な毛布が敷かれたベッドにダイブした。
ポフッ!
「んんー……」
肌触りの良い布に頬擦りをし、両手両足を動かしてその心地よい触感を堪能する。
寝返りを打ち、体を大の字に伸ばしたアレイシアは、腰のベルトを外すとそのまま毛布の下へと潜り込んだ。
馬車の中では寝足りなかったために、彼女は一先ず寝ておく事にしたのである。
「おやすみ……」
誰に言うでも無くそう呟いたアレイシアは、髪を傷付けない様に右に寄せ、対物理魔法障壁を自身の周囲張ってから眠りに落ちた。
アレイシアがベッドに入ってから六刻が経つ。少しずつ日は傾き始め、空に浮かんだ太陽は王都を橙色に染め上げる。
そんな黄昏時に、イルクス城の屋根の上に一つの人影があった。
長めの白髪を首元で結えたその男は、そこから屋根を蹴って大跳躍し、アレイシアがいる部屋の窓へと滑り込む。
彼は部屋の奥、アレイシアが眠っている寝室へと入って行き、無防備な姿を晒すアレイシアの隣に立った。彼女は現在、折角の最上級の毛布を暑さのせいか胸の下辺りまで剥いでしまっている。
そのままでは風邪を引くと考えた彼は、アレイシアの胸の下の毛布へと手を延ばし————
バチッ!!
「……ッ!?」
あともう少しで毛布に手が届くというところで、彼の手は見えない壁によって弾き返された。アレイシアが自身に掛けた対物理魔法障壁だ。
「何……?」
彼が障壁を感知しつつも再びアレイシアに手を延ばしたところで、彼女は運悪くも目を覚ましてしまった。
アレイシアは、ベッドの脇に立つ人物が誰なのかを理解し、眠そうな声で彼の名を呼ぶ。
「……リセル?」
「そうだけど」
「……ッ!! 貴方、今何しようとしてた!?」
「っと、ちょっと待った。アレイシア、これはだな……えーと」
彼は丁度、結界に注意しつつも布団に手を伸ばした所なのだ。
その途中で目覚めたアレイシアが見た光景は、リセルの手が自身の胸の上にかざされている所。例え、風邪を引くと思い心配してやった事でも、その光景は傍から見れば、容易にあからさまな勘違いを生む物であった。
「貴方まさか……わ、私を弄ろうとしてる訳じゃ無いだろうな……!」
「い、いや、それじゃ風邪引くと思って……ほら、そこに」
リセルは、つい素の口調を出してしまったアレイシアに、毛布のかかっている場所を指差して示す。
「……んむーっ!!」
バサッ!
顔を赤くし、布団を掴んだアレイシアは勢い良くそれを被り直した。それは、勘違いをした自分を恥ずかしく思ってやった事なのかもしれない。その言葉が嘘では無いという事も、アレイシアは既に確認していたのだ。
ただ、リセルはかなり強い。嘘を隠蔽する術を持っていたとしても全く不思議な事では無いのだが————
「最悪だ……」
「機嫌直してくれって……そうだ、ちょっと王都の街を見に行ってみないか?」
「ん……まぁ、いいぞ」
どうも口調が直らないアレイシアだが、リセルは部屋のソファに腰掛けるとアレイシアの方に向かって一言、準備待ってるぞ、と言う。
それに反応し、アレイシアはベッドの上から飛び降りると、横に置かれたベルトを腰に巻きつけた。彼女の準備はこれだけだ。
「それで良いのか?」
「私はこれだけ」
「なら良い、出発しよう」
リセルはそう言い窓に足を掛けた。これから彼が何をするつもりなのか悟り、アレイシアもその横に並んで窓に足を掛ける。
そして二人は夜の王都へと身を投じ、今まで隠していた翼を大きく広げて空高く舞い上がって行った。
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セリア「感想も待ってるから!」
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アリア「では、作者が第一部から改訂作業をしているみたいだけど、次話で会いましょうね!