03-08 依頼の結果
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お気に入りに登録して下さってる方々や、評価を入れて下さった方々。感謝してもしきれないとは、まさにこの事ですね^^
次話に一つ挟んでから、展開部へと入れて行きます。
拙い文章ですが、これからもこの小説をどうぞよろしくお願いします!
では、第三章八話、依頼の結果。
どうぞっ!
コトッ——
「ほら、飲みな」
「ありがと」
ギルドの隅に置かれた机を挟み、アレイシアと受付の人は向かい合う様に座る。先程アレイシアが尋ねた所、受付の人、どうやら名前はグルーヴというらしい。
グルーヴが運んで来たジュースをぐびっと大きく一口飲み、アレイシアは彼の眼を真っ直ぐと見つめた。
「依頼達成の件を含めて、どうなったのかしら?」
「そうだな、まずは依頼の方だが……」
そこで一息置いたグルーヴは、膝の上に用意されていた紙を順番に机の上に広げる。枚数は全部で六枚だ。細かい文字が、読む気を失せさせる程にびっしりと書き込まれている。
「ここに六枚の紙があるが、三枚で一つの依頼分の書類だ。順を追って説明して行くぞ」
「うん」
そう相槌を返すと、アレイシアは机の上に乗り上げる様な形で上体を傾かせた。そして、大雑把に紙の内容に目を通して行く。一枚目が報酬関係、二枚目が盗賊の後処理となっており、三枚目がアレイシアのギルドランクについてであった。
前の二枚はともかく、最後の一枚に関しては全く心当たりが無いアレイシアは、状況反射的に思わずグルーヴに問う。
「えと、私のギルドランクがどうかしたの?」
「あぁ、君は今までFランクだったんだが……今回受けたのはBとCランクだっただろう? Cは三個、Bは四個上のランクの依頼なんだ。四個上のランクの依頼は、成功したらすぐにランク上げという事になってる」
頭の中で、耳から入って来た情報と今までの記憶を順番に組み合わせて行く。そして、辿り着いた結論が——
「……あ。つまり、私もしかしてEランク?」
「そうだ。初回の依頼でランクアップとか、この学園じゃ始めてだな……」
グルーヴは呆れ気味にそう言うと、一枚目の紙を手に取った。今回の依頼における報酬関係の書類だ。
「実は君が受けた依頼、あの山の鉱石採掘員の一人が出した物なんだ」
ジュースを飲みながら、グルーヴの話に耳を傾けるアレイシア。相槌が打てないためか、口元に当てたカップを通して『んんぅー』という声が聞こえて来る。
「だから、報酬として出る銀貨二十四枚とは別に、好きな鉱石十モルト(五十キログラム)を取っていいという事になってるんだが……鉱石なんて使わないだろう?」
グルーヴが言うのも尤もだ。例えば、武器の購入や修理の際に、鉱石を使えば安く済んだり優先して作って貰えたりという利点があるのだ。これは恐らく、武器を持つ冒険者向けの報酬だったのだろう。しかし、今回の依頼を成功させたのは魔法魔術学園の生徒————それも少女だ。
「だから、鉱石の分を報酬金に上乗せして……」
「しなくていいわ」
「銀貨十枚……え?」
かなり予想外な返答だったのか、グルーヴは目を白黒させる。その反応が面白く、アレイシアはつい小さく笑ってしまった。
「だから、しなくていいのよ。私、丁度鉱石は欲しかった所だし」
実はアレイシア、ユーニスの剣を直すために、鉱石から自分で鉄を取り出す事に決めたのだ。能力を使った物質の変形が、どれ程可能なのかを確かめるためでもあった。
「そうか、鉱石は彼らから直接渡すそうだ。……と、三枚目の件だけど、盗賊を国に送ってどうするんだ?」
「秘密よ!」
「あ、あぁ……」
満面の笑みで楽しそうに答えるアレイシア。この様な言い方をされてしまっては、誰も聞き返す気にはなれないだろう。そしてグルーヴは、残念そうとも嬉しそうとも取れる微妙な表情で、机に広げられた紙を纏め始めた。
「話はこれで終わりだな。書類は君が持っておく事を勧めるよ。今、奥から報酬分を持って来るから待ってな」
「うん」
アレイシアに、纏めた六枚の紙を手渡したグルーヴは、その場から立ち上がって受付の奥の方へと歩き出した。ここで、何故書類をアレイシアに渡したのかといえば、この先の将来、アレイシア自身の経歴の証明として非常に役に立つからだ。
「……と、これが銀貨二十四枚だな」
ジャラジャラと音を立てて、受付の奥から出て来たグルーヴは、アレイシアの隣に立つとそう言った。彼はしゃがみ、アレイシアに銀貨が詰まった袋を手渡す。
「ありがと」
「礼は言わなくていいぞ。お前が働いた分の報酬だからな」
今回の報酬である銀貨二十四枚は、丁度金貨二枚分に当たり、平民の一般家庭が一週間暮らせる程度の金額だ。一人の少女からしてみれば、それが例え貴族令嬢であろうとも、中々の大金なのである。感謝の言葉が口をついて出てしまっても、それは全く不思議な事ではなかった。
ちなみに、金貨一枚は銀貨十二枚、銀貨一枚は銅貨八枚と同じ値段となっている。これは、イルクス王国を含め五つの国で使われているため、かなり広い範囲で使用出来る通貨なのだ。また、金貨二十枚分に相当する『白金貨』なる物も存在するそうだが、多くの場合は国同士の取引などに使用され、表に出る事はあまり無い。
「じゃ、明日の朝にまた来るんだったな」
「そうよ」
明日の朝、馬車が盗賊を乗せて王都へと向かう。アレイシアは、それに同行する形で王都へと向かうのだ。丸一日掛かってしまうが、飛行魔法を使う訳には行かないため仕方が無い。
「気を付けて帰りな」
「言われずとも」
小さくグルーヴに手を振ったアレイシアは、ギルドの扉を押し開け、寮室へと戻って行った……筈なのだが。
「よっ!」
「……あ」
ギルドの前には、何故かリセルが立っていた。彼は、アレイシアの姿を見るなり歩み寄って行き、彼女の手を取って歩き出す。
その姿はさながら、中の良い兄妹の様にも見えるだろう。ただ、身長的な意味で、流石に恋人の様には見えない。
「ちょっと裕、何を……」
「君の部屋に、少し邪魔しようかと思ってな」
「邪魔するなら帰って」
アレイシアの若干捻くれた返事にリセルは笑うと、彼女の肩に、空いている方の手を乗せた。それに対し、アレイシアはむすっとした表情になる。
「そう言わずに、良いだろ?」
「……まぁ、良いけど」
「よーし、なら行こう」
結局アレイシアは、一緒に風呂に入るか否かを言い争った時と同じく押し負けてしまった。そして、リセルは彼女の寮室へと一緒に向かう事になったのである。
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アリア「感想評価、絶対に入れて行ってよね!」