表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/100

03-04 盗賊の隠れ家 3

 更新遅れてすみませんです!

 インターネット繋がらないって辛いですね……


 では、今回少し長めでどうぞっ!

 アレイシアは、泣き疲れて眠ってしまった少年を横に退かし、地下牢の人達の様子を見るために立ち上がった。彼女の服は、少年の涙と地下牢の土で汚れてしまっているが、当然そんな事は気にしていられない。なるべく早く盗賊の長を倒し、この場にいる全員と脱出するのが先決だ。


 辺りを見回せば、木箱に腰を下ろした者。壁に背を預けている者。ただ呆然と仰向けに寝転がっている者。

 誰もが皆、意気消沈としているのが分かった。


 しかしその中には、アレイシアの方を希望の眼差しで見つめている者もいる。


 ―――この状況を救ってくれる女神様は彼女なのではないかと。


 当の本人としては、何て傍迷惑な希望なのだろうかと突っ込みたくなる所なのだが。彼女の容姿は実際、一般的には女神と勘違いされる程には整っているというのもまた事実なのである。


 何にせよ、先ずは行動を取らなければ始まらないと考えたアレイシアは、ランプが一つしか無い暗い地下牢を照らすために、初級光系統魔法を発動させた。


照射(イレジエート)!」


「……!?」


「お、おぉ……これは……!!」


 アレイシアが胸の前に掲げた両手。その間には、地下牢全体を十分に照らす明るさの光があった。その光景、他の者にはさぞ神秘的に見えた事だろう。

 ちなみに、ここでアレイシアが照射を発動させたのは、暗視の効かない人間までもが地下牢に居るのを確認したからである。


治癒結界(スフィアオブヒール)……っと」


 アレイシアは更に、地下牢全体に治癒魔法結界を張った。それは、結界を張った場所にそのまま治癒の効果を付加するものであり、大人数を一気に治癒するのに向いたものだ。

 当然、治癒する人数相応の魔力を消費する事になるのだが。アレイシアにとっては雀の涙である。


 地面に座り込んだ猫人の男。アレイシアと一緒に連れ込まれてきた四人の内一人だ。その男に、アレイシアは話しかける。


「……ここから脱出しましょう。貴方達はここで待っていればいいわ。その間に私が盗賊を打ちのめしてくるから」


「本当に大丈夫か? さっきも……下手したら襲われてたぞ?」


「あの時はまぁ……油断してたわ」


「心配したんだからな……本当に……」


 そう言うと、男は下を向いて黙りこくってしまった。照射を発動しているとはいえ、薄暗い地下牢の中では、その表情を窺い知ることは出来ない。


「行って来いよ……早く」


「……ふふっ、分かったわ。他の人達にも言っておいてね」


 ぶっきらぼうな言い様から『何か』を察したアレイシアは、口元に笑みを浮かべながら歩き出した。

 男は小声で、アレイシアの背中に向けて呟やく。


「お前、吸血鬼……か?」


「……いつから気付いてたの?」


「笑った時に、牙が丸見えだったぞ?」


「あ。……別に、隠す事でも無いんだけどね」





 その後、瞬間移動で地下牢から脱出したアレイシアは、暗くて狭い、迷路の様な洞窟の中を全力疾走していた。

 頼りになるのは、自身が地下牢に運び込まれた時の記憶と、現在進行形で発動し続けている気配察知魔法。それと、直感だけだ。


 やっと辿り着いたT字路。

 左側は恐らく、先程アレイシア達がいた出入口付近だろう。そして右側からは、十を超える人間の気配が感じられる。


 アレイシアは右に曲がると、それからすぐに行く手を阻む木の扉を見つけた。その扉を木端微塵に斬り捨てようと、腰の刀に手を掛け――


「……!?」


 ――られなかった。

 いつもは腰に携えてある筈の刀が、そこに無かったのである。


「なら……ッ! 風刃(エッジオブガスト)(エソテリック)!!」


 この技は、本来武器に纏わせて使う風刃を、アレイシアがそのまま使える様にと改良した物である。純粋な風を手に"握"り、その刃を扉に向けて連続で振り下ろした。


 ガガコォン!!


「何だぁっ!?」


「うわ!?」


 バラバラになった扉は風で吹き飛ばされ、その一つ一つが(つぶて)の攻撃と化す。そして、扉の破片は二人の盗賊を気絶させるに留まった。


「こ、こいつ……!! 地下牢に入れたんじゃ無かったのか!?」


「いや、確かに入れた筈で……」


「脱出したのよ」


「な……!?」


 ギャーギャーと(うるさ)く話をする三人。その背後に瞬間移動したアレイシアは、男三人を同時に仕留める様に風刃を横に振るった。


「うぁ……! し、死ぬ……」


「死なれたら私が困るわよ……」


 斬り裂かれた服の上から血が滲み出す。アレイシアの計らいにより、傷は比較的浅めだ。

 倒れこんだ三人を尻目に、アレイシアは部屋の奥に目を向けた。その鋭い視線に、盗賊の男は一瞬強く威圧される。


「私の刀……じゃなくて、黒くて弧状の棒みたいな物、知らないかしら?」


「……! だ、誰が貴様に、教えるかッ!!」


 そう言う男だが、言葉の前の間をアレイシアは見逃さなかった。明らかに動揺しているのが分かったのである。

 本当ならここで聞き出したい所だが、盗賊が刀を奪ったという事が分かっただけでも良かったと言えるだろう。


「なら、貴方達のボスはどこに居るの?」


「……言うと思ってるのか?」


 あまりにも予想通りの返答だ。やはりそう簡単には教えてくれない。

 そこでアレイシアは、小さく息を吸い、言った。


炎嵐(ブレイズストーム)。私が十を数えるまでに言いなさい。……十」


 アレイシアの周囲に火の粉が発生する。それは風で渦を巻いて行き、徐々に勢いを増して行く。


「八、七……」


「ちょ、待てっ! 教えるから!!」


「こ、こっちだ!! こっちに着いて来てくれ!」


 その場の男の一人が怯え切った表情で、右の奥に続く洞窟を指差してそう言った。

 アレイシアは、元々放つつもりなど無かった炎嵐を霧散させ、歩き出した男の後を着いて行った。脅しにも近い事をしてしまった自分自身への罪悪感を背負いながら―――





「……こ、ここだ」


「うん、ありがとう」


 どうやらボスが居るらしい場所に到着したアレイシアは、ここまで案内してくれた男に、満面の笑みで感謝の言葉を述べた。先程の罪悪感からのせめてもの償いだ。

 だがその男は、顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。それを見たアレイシアは考える。


 ———そりゃあ……脅迫させられて、ありがとうって言われても怒るよね……?


 ……存外アレイシアは、かなり典型的な鈍感であった。


 アレイシアが居る洞窟の先、広くホールの様になっている場所にボスとやらが居るらしい。


「誰か居ますかー?」


「貴様ぁッ……」


 アレイシアの呑気な問いに答えた、机の椅子に座っている男が盗賊の長で間違いないだろう。顔を見てみれば、アレイシアが縛られた時に横に立っていた男と同じだという事が見て取れた。


「……さて、話してもらいましょうか。猫人の村を襲って、女子供まで見境無く攫って来て、一体何をするつもりなのかしら?」


「お前には関係無い事だ。とっとと出て行きやがれ!! それとも……」


「その先禁則事項!! 言ったら即気絶よ?」


 言いかけた長はその言葉を飲み込む。アレイシアが目の前に迫り、魔力の込められた拳を鳩尾(みぞおち)に当てていたからだ。


「答えなさい。何をするつもりだったのか」


「そ……!」


「……?」


 何かを言っている長だが、その言葉は小さくて聞き取れない。アレイシアが再び問おうとしたその瞬間———


「……の程度で、言うと思ってんのかぁッ!!」


 ゴキッ!!


「ぐぁ……っ!?」


 右から迫る拳骨を、脇腹にもろに食らってしまったアレイシア。今更ながら、長の両手を押さえなかった事を後悔する。

 体の中で骨が砕ける嫌な感覚。痛みは殆ど無いものの、肋骨が何本か折られてしまった様だ。しかし、それは高い自然治癒能力であっと言う間に治って行った。


「聞き出したけりゃ、体か力ずくで来るんだな」


「……分かった。なら、力ずくでッ!!」


 風刃改を発動したアレイシアは、即座に盗賊の長に向けて風の刃を放った。


 ———ゴォォッ!!



 感想評価や誤字脱字の報告、アドバイスなどはいつでも大歓迎です!



フィア「感想評価、遠慮なく送って下さいね! 私との約束ですよ〜♪」


アリア「フィア、それはちょっと…… で、では、感想評価、お待ちしておりま〜すっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ