02-33 闘技大会本戦 昼食タイム
第三回戦終了後、アレイシアは昼食を食べるために、学園街のあるレストランに来ていた。そのレストランとは、学園に来たばかりの頃、アレイシアがフィアンと一緒に食事を取ったあのレストランである。
二人は度々、シェリアナとクレアを誘ってこの店に来ているため、四人はすっかりこの店の常連となっていた。
店の一番奥の席には、アレイシアだけでは無く、ナディアとオーラス、フィアンを含めた五人の姿もある。それぞれが好きな料理を頼み、会話を楽しんでいる様であった。
「ありゃーひゃん、ふぉんほーいゆーひょーえっひょーえふぇー!」
「……はいはい、言いたい事は分かったから。まずはそれを飲み込みなさいよ」
フィアンが今食べているのは、焼いた肉を生野菜で包んだムティーと呼ばれる食べ物である。今の意味不明な発言は、口の中のムティーを飲み込もうともせずにアレイシアに話し掛けた結果であった。
フィアンは、コップに並々と注がれた水を飲み干し、アレイシアに再び話し掛ける。
「……んっ……今ので分かったんですか?」
「……アリアさん、本当に優勝できそうですね! でしょ?」
「すごい! 何で分かったんですか?」
「直感だけを頼りに、後は状況で判断したわ」
そう言ってアレイシアは、大皿に盛られたムティーを一口食べる。先程フィアンが食べていた物とは別の皿だ。
「……あれ? そっちの皿は何が違うんですか?」
別の皿から取った事を不思議に思ったフィアンは、大皿の方を指差してアレイシアに問う。
「これは焼き加減が生焼なのよ」
「? ……あ、そう言う事ですか」
アレイシアは吸血鬼、これは周知の事実だ。例え獣の血といえども、ほんのりと香る血の香りには食欲をそそられるものがあった。向かい側を見れば、ナディアとオーラスまでもがレアムティーを頬張っている。
「ほふぇあほふっ……これが美味しいんだ。吸血鬼で生焼があまり好きじゃないって言ったのはアリアくらいだよ。今は普通に食べられるみたいだけど」
「そうなんですか」
オーラスの話を聞いたフィアンはそう言って、ムティーをもう一口頬張る。半生焼程度しか食べた事がないフィアンは、その味がどの様な物か全く見当がつかなかった。種族の壁は厚いんですね、と楽しげに言い、ムティーの横に置かれたジュースに手を伸ばす。
そこで、アレイシアから見て右側に座っていたシェリアナが、思い出した様に口を開いた。
「アリア、そういえば第四回戦の相手って……」
「……あー、そうよ。そうだったわ……あのウェルム……」
アレイシアが第四回戦で戦う予定の相手は、何故か勝ち上がって来ていたウェルムであった。彼女としては、またウェルムと戦いたくないというのが本音なのだが。
「……また私と戦えて嬉しいとか思ってるのかしらね?」
「それよりもやっぱり……今度こそは勝つ、とか思ってるかも」
そこまで話をした所で、レストランの客がやけに少なくなっている事に気が付いた。店の中には、アレイシア達の他に五、六人程しか客がいない。
「あれ?」
「……あ! もしかしたら闘技場に……っ!!」
アレイシアは、横に置いた刀と魔導書を抱え、若干慌てた様子で立ち上がる。もしかしたら、第四回戦がもう始まるかもしれないと考えたからだ。……ついでに、黒美さんに懐中時計をねだってみようかとも考える。
「あ、アリアさん、どうしたんですか?」
「ごめんっ! 先に行ってるから!!」
そう言って、アレイシアはすぐに店から出て行ってしまった。その場に残された五人は、しばらくしてからやっと状況を把握し、アレイシアが待っているであろう闘技場へと向かって行った。
『さぁさぁっ! 第四回戦、残ったのはこの四人だけ!! これからどの様な戦いを見せてくれるのでしょうかッ!?』
今までと同じ様に、司会が観客席を大いに盛り上げる。
闘技場の中央に立った四人。その中には当然アレイシアの姿もあった。その隣に立っているウェルムは、アレイシアの方をせわしなくちらちらと見ている。
『ではまず、第四回戦まで残った四人の選手を紹介しましょう! 一人目は、今大会最年少のアレイシア・メル・ラトロミアさんだぁぁッ! 種族は吸血鬼! その可愛らしい容姿とは裏腹に、持っている戦闘技術にはただただ驚かされるばかりだ!!』
———かっ……可愛らしいとか、言うなぁぁっ……
心なしか、司会が『可愛らしい』と言うと同時にアレイシアの頬に朱が差したのは気のせいでは無いだろう。
照れが原因と言うよりも、多くの人の前で可愛らしいと言われた事が原因なのかもしれないが。
『そしてこちら、二人目は、ウェルム・レダールさんだぁぁっ!! 火系統魔法と格闘を得意とする犬人、同時に放てる魔法の数は圧倒的! 戦略的に敷き詰められた火球は回避不能と言われている!!』
その放送を聞いたアレイシアはウェルムの方を向く。そして、私かわせたけど? と一言。それにはウェルムも反論出来ないのか、アレイシアと目を合わせようともせずに視線を彷徨わせる。
「あー……まぁ、司会が勝手に言ってるだけじゃね?」
「……うん、納得」
『三人目はこちらの、ラセル・ディトリーさんだぁぁっ!! なんとこちら、四人目のリセル・ディトリーさんの弟に当たるそうです! 種族は竜人。その種族ゆえの高い身体能力で、多くの選手を打ち負かして来た二人だ! 第四回戦では、この二人が戦う事になります!!』
その放送で一層沸き立つ観客席。アレイシアも、この事については良く知っていた。何故かといえば、アレイシアが読んでいる学園紙に、今大会の注目の的として大きく取り上げられていたからだ。兄弟が闘技大会で戦う事になるなど、そうそうある事では無い。
『第四回戦は間もなく始まります! 第四回戦の一戦目は、アレイシア対ウェルム!! 決勝戦へと上れるのはどちらなのでしょうかッ!? 両者、前へ!!』
アレイシアとウェルムは一歩前へと進み出る。その一歩で、正方形のステージ上に立った二人。
ステージ内で距離を取り、そのまま向かい合う。後は、司会の言葉を待つだけだ。
『第四回戦、一戦目っ! 始めぇぇッ!!』
弾かれる様に走り出した二人。アレイシアとウェルム、二回目となる戦いが幕を開けた。
誤字脱字の報告や感想評価、アドバイスなどをお待ちしております!
〜返信してみる謎コーナー〜
七篠「どうもおはこんばんちは! 今回の謎コーナーは、気になるWeb拍手メッセージに返事をしてみようというコーナーです」
セリア「じゃ、早速行くよ〜! 一つ目はこれっ!」
『いつも楽しみに拝見させてもらってます 』
七篠「こういうコメントには癒されますね〜 ホント、やる気が出てきますよ」
セリア「次はこれ、二連続でどーぞ!」
『これからもがんばってくださいね~(^_^)b 』
『更新がんばってください! 』
七篠「ハイ、思いっきり頑張りますよ〜!! 更新速度も上げたいですが……更新が最近遅れ気味ですみません」
セリア「では次……っと? えーと……これはアリア宛かな?」
七篠「ん? どれどれ……」
アリア「何?」
『アレイシアかっこいい』
アリア「ゎ……ま、これは置いといて……感想評価、お待ちしております!」
セリア「話そらした……で、では、Web拍手の方からでもメッセージを送って下さいね!!」