02-29 闘技大会予選 2
総合評価が遂に千まで届きました!
読者の皆様、本当にありがとう御座います!! そして、これからもよろしくお願いします!!
右側から勢い良く迫って来る、巨大な炎を纏った大剣。アレイシアはそれを咄嗟にしゃがんでかわし、相手の地についている方の足を刀で薙ぎ払う。片方の足が浮かんだ状態で、地についたもう一方の足が離れたらどうなるか。当然、バランスを崩して転ぶ事になるだろう。
「うをっ!?」
———ドザザーッ!
転んだ男の首筋に左手を当て、極微量の魔力を瞬間的に放つ。ただそれだけで、体内の魔力をかき乱し、相手を気絶させる事が出来る。
気絶させた男をそのままにし、横から向かって来た二人の男に目を向ける。その内一人は魔導書を開き、描かれた魔方陣を発動していた。
「……っ、火球!」
放たれたいくつもの火球はアレイシアのすぐ横を掠め、後ろに立っていた選手数人に当たる。元々の狙いは自分だけでは無かったのかと安堵したその時、火球を放って来た男の隣に居たもう一人の男にアレイシアは蹴り飛ばされた。
「うぁっ! ……ぁ……か弱い乙女を、蹴り飛ばすなんて……!!」
「いやいや……お前、絶対か弱くないだろ……」
そう言った男は腰に下げた剣を抜き、アレイシアに向かって振り下ろす。
直線的で何の捻りも無い剣の一閃はしかし、アレイシアに当たる事無く宙を斬る。
「ならこれで……!!」
「隙ありっ!」
次の攻撃を放とうと、剣を斜め後ろに振り上げたが運の尽き。
アレイシアは全くの無防備になった体の前面に近付き、至近距離の風魔法を打ち込んだ。
ブォワァッ!!
「うわぁぁっ!?」
風魔法に当たった男はそのまま吹き飛ばされ、大きな音と共に闘技場の壁にぶつかった。この闘技場には屋根が無いため、斜め上に魔法を放っていたら最悪ホームランだったかもしれないとアレイシアは考え身震いする。
『さぁ、今ので残りが十人になりました! あと二人が脱落すれば、その時点で残った選手の決勝トーナメント進出が決まります!!』
その放送を聞いた選手は皆、大体同じ事を考えた。———弱そうな奴を順番に二人倒せばいいと。
だが、アレイシア一人は違った。
——私を狙って来た奴を、順番に二人返り討ちにすればいい!
アレイシアの方へと周囲の選手六人が向かって来る。それは全く、アレイシアが想定していた事と同じだった。
倒すべき相手は二人。そこでアレイシアは、六人の中から如何にも弱い者いじめをする様な表情の男を二人選び、取り合えず攻撃をしてみる事にした。
「水球!」
「……んぉ! もごぁっ!?」
「がっ!? ごぼ、ごぼぽ……」
水魔法を頭部周辺に発動したら、男二人は息が出来ずにその場に倒れこんでしまった。その様子にアレイシアは、自身が行った事ながらもこれはひどい、と思うのであった———
そして次の瞬間、風魔法の放送がかかり、闘技場の観戦席全体から大きな歓声が上がる。
『決まりましたぁっ!! 第四チームの決勝進出はこの八人です! 黒髪の少女のこれからにも期待できそうだ!』
——ワアアァァァァ!!
「……別に、期待しなくてもいいわよ」
そう呟いて、アレイシアはすぐに闘技場から待合室へと戻って行った。何故すぐにその場を離れたのかといえば、今の放送でファンクラブの人達が騒ぎ出したら大変だと思ったからである。
その後、待合室から出たアレイシアは、周囲に群がる人を避け、すぐにフィアン達と合流する事が出来た。
アレイシアの姿を見るなりすぐに抱き付くシェリアナ。そんな二人の様子を、ナディアは微笑ましく見守っていた。
その後、闘技大会予選終了の放送がかかり、アレイシアと三人は寮室へと戻って行った。そんな三人の後ろを、ナディアとオーラスが着いて行く。
オーラスの話によれば、学園からアレイシアが闘技大会に出場すると書かれた手紙が送られて来たという。それからすぐに支度して学園に来たため、泊まる宿については何も考えていないとの事だった。だから、寮の部屋に泊めてくれないか、と三人は相談されたのである。この事に関してアレイシアは勿論、何故か三人も快く承諾した。
何故かと言えば、シェリアナ曰く『アリアの両親だから』だそうだ。本人からしてみれば、理由になっていないと言いたくなる所だが、一先ずは寮に帰る事にしたのである。
「ここが私の部屋で、フィアと一緒に住んでるのよ。ここ、隣にあるのがセリアとクレアの部屋」
「へぇ……この学園の寮ってすごく綺麗ね。廊下はどこ見ても紅いカーペットだし。……ふふっ、安心したわ」
「それで……学園証。これが鍵にもなって扉を開けられるわ」
アレイシアは懐から学園証を取り出し、扉の右の穴に差し込んだ。カチャッと軽い音と共に扉が開き、六人は部屋の中へと入って行った。
アレイシアは寮室に買い貯めてあったアテを淹れ、ナディアとオーラスの前に置く。フィアンとシェリアナ、クレアも、すぐ隣で雑談をしている。
「ね、アリアちゃん。三人も友達が出来ちゃって、楽しそうで何よりだわ」
「……所でアリア、今までで吸血衝動って起きなかった?」
学園でのアレイシアの様子にナディアは安心したのか、ソファにより深く腰掛けアテを少し口に含んだ。それに対しオーラスは、アレイシアをかなり心配しているのか、アテを口に運ぶ事もせずにじっとアレイシアの方を見ている。
心配そうな表情のオーラスに答えたのは、クレアのエルフ耳を弄くっていたシェリアナだった。
「あ、吸血衝動については私が…………血を吸いたくなった時に、互いの血を吸い合う事で万事解決としてるわ」
「そうか、なら安心だ……よかった」
「二人共、互いに血を吸った事があるの?」
そう言うのはナディア。アレイシアとシェリアナは、その事問いに対して即座にこう答えた。
「うん。アリアの血はすごく美味しい!」
「互いの首に顔をうずめる感じでね」
「……あ、どうしよ。アリアちゃんの血、私も吸ってみたくなっちゃったわ」
「……今はダメっ!」
この日は結局、アレイシアとナディアが一緒に寝る事となった。オーラスは何故か、ソファで寝ると自分から言い出したため、そのままにしておいた。
……オーラスがソファで寝ると言い出したのは、誰と寝ようが女子と添い寝をする事になってしまう、というのが理由だとは誰も思わなかっただろう。
その夜、アレイシアの部屋にて———
……プツッ
「ん……本当に美味しいわ!」
「ぁ……母様、やめた方が……」
親子二人の吸血行為が繰り広げられたというのは余談である。
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~久しぶりの謎コーナー~
七篠「前書きにもある通り、この小説の総合評価が遂に一千に届きました!」
アリア「更にはお気に入り登録数も三百突破!! これからもよろしく~♪」
クレア「そういえば、総合評価が一千超えでタイトルを……」
七篠「あー、それは一先ず先送りと言うことになりそうです(笑)」
アリア「……では、感想評価をいつでもお待ちしておりま~す♪」
クレア「これからもこの小説をよろしくお願いしますね!」