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01-01 生誕

 主人公の名前を考えるのに大体合計三、四時間程かかった。疲れた……

 書くべき文字数として提案してくださった三千文字、思ったより長くて驚きましたw


2011/1/8追記:

 感嘆符(!?)の後にスペースを入れました。

 若干の訂正をしました。


2011/6/3追記:

 全面改定と再投を行いました。所々、セリフや描写に差異が出てると思います。

 あれからどれ程の刻が経ったのかと、微睡(まどろ)む意識の中で考える。

 確か、東次は『世界の狭間』の中に創られたという真っ白な四角い空間にて、神を名乗る祐と話をしていた筈である。

 ならば此処は何処なのか。

 まさに朝、これから目覚めようとする時の感覚にそっくりだ。


 やはりあれは夢だったのかと、そう考えた所で急に辺りが明るくなったのを感じる。例え瞼を閉じていたとしても、それ位は瞼を通して感じ取る事が出来るからだ。


「来た、女の子だ! 吸血鬼の間の子なんて数ヶ月ぶりだぞ!!」


 そこで突然、誰とも分からない男の叫び声が聞こえて来る。

 東次はその内容を必至に理解しようとするが、彼が知っている限りのどの言語にも当てはまらなかった。

 そして彼は、何故か息が出来ないためについ泣き出してしまう。

 記憶の中に『産まれたばかりの赤ん坊は泣くことで呼吸を得る』という物はあったのだが、この状況に全く落ち着けなかったが為に、その様な事一つでさえ思い出すに至らなかった。


「良かった……女の子だってよ。一人目は女の子がいいって願いが叶ったじゃないか」


「はぁ、ふう……良かったわ。彼方、名前は既に決まっているんでしょう?」


「少し前に神様からのお告げがあったんだそうだよ。名前は『アレイシア』にするが良い、と」


 嬉しそうに話す二人だが、東次、いや、アレイシアには、それが何の話なのか欠片も理解出来ずにいた。

 唯一分かった事は、どうやら異世界に転生する事に成功した様だという事だけ。冷静な判断が出来る様になり、やっと思い出した知識の中から引っ張り出した、産まれたばかりの赤子の視力はあまり良くないという事から推測出来た。


「え? じゃあ私が前に提案したメルヴィナは採用してくれないの? 神様のお告げじゃ仕方がないか……」


「んー……だったらミドルネームに入れてみるのはどうだ?」


「このままだと少し長いから、呼ぶ時はメルでいいかしらね……? ふふっ、あなたの名前はアレイシア・メル・ラトロミアよ。よろしくね」


 そう言う母親に抱きかかえられたアレイシアは、母親の喋る理解出来ない言語の中から自身がアレイシアと名付けられた事を推測する。

 妙に女らしい名前だと疑問に思うも、すぐにその考えは飛んでしまう。何故なら、これから来る新しい人生に期待を膨らませていたからであった。




 刻は遡り二年前。

 イルクス王国外れのベルムと呼ばれる貴族が治める領地にて、後にアレイシアの両親となる二人は出会った。イルクス王国は、多種族が比較的友好に暮らしている事で有名であり、勿論吸血鬼も言わずもがなである。

 二人は、両者共にかなり力のある吸血鬼の貴族として広い範囲で有名だ。ここで言う有名とは別に悪名という訳でもなく、イルクス王国に多種族への平等を訴えた戦争があった時に、非常に活躍したと言うだけの話である。


 彼らが出会ったのは、お遊び感覚で参加したパーティーで偶然同じワイングラスを取ろうとした所からであり、互いに遠慮しあうも何時の間にか意気投合して仲良くなって行った、というものだ。

 ちなみに二人共、人間で言う十四歳程度の身体をしているが、実際の年齢は母が百二十四歳、父が百二十七歳だ。吸血鬼は所謂エルフなどと同じく長寿な種族としても知られている為、実年齢が見た目の十倍という者でさえかなりいるのであった。

 ————そんな中で比較的年齢が近い二人だからこそ、互いに惹かれ合って行ったという節もあるのかもしれない。


 彼らはパーティーの参加後暫くしてから吸血鬼が多く集うイルクス国内の街、クラードに居を共にし始め、結婚時には家名をラトロミアに変更する事となる。

 家名がラトロミアになったのは実は、アレイシアの名前を決めた神による仕込みだったという事は誰も知らない。





 アレイシアが産まれてから二日後の夜。出産のパーティを催す事となり、流石貴族、と言わせる様な屋敷の中庭には続々と人が集まって来ていた。

 貴族でありながらもあまり格差を気にしない二人が催す物だからか、その人混みの中にはちょっとした他所行きの服を着た平民も混じっている。

 ——勿論その平民も、吸血鬼の中の一だ。


 その中庭の隅、料理が積まれている机が直線状に並べられているその場所に、母のナディアと父のオーラス、そして二人の間には今日の主賓とも言えるアレイシアが籠の中で寝かせられていた。

 オーラスは、穏やかな寝息を立てるアレイシアの腕に触れる。確かに存在する命に、彼はふと笑みを零した。




 丁度その頃、アレイシアは夢を見ていた。他でもなく、それは神が念話の応用で見せている物だ。


「ぅ……またか? ここは何処だ?」


「こんにちは、転生は無事に成功した様で何よりだわ」


「……誰?」


 東次(アレイシア)は前回の時と同じく真っ白の四角い空間に居るものだから、てっきり祐が来ると思っていたのだが。目の前に立つ黒髪で緋色のドレスを着た美人さんは、そんな期待を大きく裏切ってくれた。


「あぁ、私? 一応神界で最近あまり仕事無いワルキューレやってますが何か? 祐に念話で伝える事だけ伝えろって頼まれたから」


「……そうですか。で、その伝える事とやらは?」


「えっと、気付いて居ないみたいだけどまず、あなたは吸血鬼の女の子として産まれました。都合があって今は東次の姿を取らせているけど」


 そう告げた美人さんの言葉に絶望の表情を浮かべた東次(アレイシア)だったが、すぐに立て直す。


「何で女に産まれなければ……やけに女らしい名前だと思ったけど、それ位は決められないのか?」


「ごめんっ! その辺りはランダムで決めないといけないって決まりだったから」


「まぁ、いいか……な? いいのか? ……で、祐が言っていた能力にはどの様な物が?」


 東次(アレイシア)は、そう言えば祐が能力もこちらで決めると言っていたのを思い出し、まずは聞いて見る事にした。

 その言葉に、彼女は一度考える様な仕草を取ると、何かを思いついた様に話し出す。


「能力はですね…………矛盾を操る程度の能力に決まりました!」


「ちょ、その言い方は……東の方の世界じゃ無いだろ!」


「あれ? おかしいな……祐がこうやって言うとアイツは喜ぶって言ってたけど?」


「誰が喜ぶかいっ! ……っと、待て……?」


 某東の方の物語の様な能力発表に突っ込むも、よくよく考えて見ればかなり強力な能力であると言う事に気付き、問いてみる。


「……その能力ではどんな事ができるんだ?」


「この世でパラドックスと言われていた事を現実にしたり、最強まで究めれば存在を消したり、無から物を創り出したりも出来るわ。勿論、始めは全然使いこなせないと思うけどね。始めから使いこなせる能力を創れるほど神は全能でも無いし」


「分かった、ありがとう。精々頑張って使いこなして見せますよ」


 笑いながらそう言う東次(アレイシア)に軽くどういたしましてと返し、そう言えばと思い出した様に続ける。


「産まれた時点の魔力、気を一般的な吸血鬼の十倍ほど、本来持ち得ない筈の微少量の霊力、妖力、神力も使えるからそれも試してみるといいわよ。訓練すれば増やせる……らしいし? 何歳でも好きな時に強く念じれば不老になれる上に、体も死ににくくなるからね」


「うーん……何かサービスが良すぎないか? かえって怪しいんだけど」


「いーのいーの! こっちとしては神界の勢力強化にもつながるし、見ていて娯楽にもなるから」


 かなり焦って怪しむ誤解を解こうとするが、東次(アレイシア)も彼女同様、思い出した様に言う。


「そう言えば、佑もそんな事言ってたっけ? 必要な時に協力すればいいんだったよね」


「あ、そうよ。必要な時は私から念話で呼ぶから。……と、そろそろ時間だから、じゃあね!」


「あ、待てって! 貴女の名前は何て……!!」


 そこまで言いかけた所で急に意識が遠のき、名前を聞きそびれてしまう。

 次に会う事があったら絶対に聞くと決心し、彼は消えてゆく意識に身を任せた。



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