02-26 学園全体闘技大会
遅くなってすみません、忙しかったもので……
今回はちょっと、もう少し細かい描写はできないものかと考えてみました。上手くいったか心配ですが、アドバイスをくれたら作者が喜びます。
二月の十三日、この日は今月三回目の休日に当たる。アレイシアは机に向かって魔法魔術の研究をしていた。内容は主に、魔法魔術の新しい系統を開発するための方法などである。
机の隅に置かれた本を取ろうとした時、玄関の扉から硬い音が響く。
——コンコン、コココン!
「はーい!」
普通に真面目にノックするよりは遥かにリズミカルな音に、先に反応したのはフィアンだった。アレイシアは万年筆を机に置き、何故か身につけていた眼鏡を外す。
ガチャッ……
「誰ですか?」
扉を開けたフィアンは目の前に立つ人物に目を向ける。そこに居たのは、この学園のイルクス側学園長だった。
———そう、入学当日にお世話になってしまった、あの人である。
「君は……エンレイスだな。ラトロミアはいるかね?」
「あ、はい。アリアさんは奥にいます」
「私に何か用があるのかしら?」
フィアンが案内しようとした丁度その時、アレイシアは既に扉の前まで来ていた。学園長はアレイシアの方を見ると、咳払いをして話し始める。
「少し話がある。学園長室まで来てもらえるか?」
「……分かった。行くわ」
「じゃあ、着いて来なさい」
アレイシアはいつも通り、魔導書を持って早足に校長の後を着いて行く。部屋に残されたフィアンは、また怒られてしまうのかと心配になっていた。
学園長室に入り、アレイシアは椅子に座る。目の前には学園長と、机に置かれた三枚の紙。
アレイシアは内心、飛んでいる所でも見られてしまったのかと緊張していた。
「……で、話というのは?」
「えー、話というのはだな……まぁ、この三枚の紙を見た方が早いだろう」
そう言って、学園長はアレイシアに三枚の紙を手渡す。恐らく羽ペンで書かれたと思われる文字がびっしりと紙全体に敷き詰められていた。多少面倒に思いながらも、アレイシアは上から目を通して行く。
「あー……」
その内容は何故か、アレイシアの良い点を片っ端から列挙して行く様な物であった。気配察知が優れている、実践戦闘のセンスがある、凄く可愛いなどである。そして、文の最後はこう締めくくられていた。
———アレイシア・ラトロミアの学園全体闘技大会出場を、一年S組担任フィズが、実力を見込んで推薦する。
———アレイシア・ラトロミアが学園全体闘技大会に出場する事を、一年剣術科の担任、ベルクが本気で推薦する。
———アレイシア・ラトロミアの学園全体闘技大会出場を、一年実践戦闘科の担任ダルが推薦する。
不可解な内容に、アレイシアは学園長に問う。
「……これは何?」
「見ての通り、三月一日から一週間行われる、学園闘技大会出場の推薦状だな」
学園全体闘技大会とは、第三学年以上の生徒が競い合い、優勝を目指すという単純明快な催し物である。毎年三月一日から一週間行われ、優勝した者には賞金などが贈呈されるという。
———そういえば、推薦状を貰った場合は第三学年未満でも出場できるって書いてあったっけ?
寮入り口の掲示板に、その様な事が書いてあったかもしれないと考えを巡らすアレイシア。
「それにしても……第一学年が推薦状を、しかも三つ貰うとは前代未聞だぞ……」
「絶対出なければいけないのかしら?」
「三つも推薦状を貰って、断る訳にはいかないだろう?」
頭を抱え、こちらも悩んでいるんだと主張するかの様な姿勢を取る学園長。その様子に、アレイシアの口から自然と笑みがこぼれる。
「仕方ない……か。ふふっ、それはそれで、出てみるのも面白そうね」
「……ま、出てくれるのならこちらも楽だ。手配しておこう」
失礼しましたと一言残して学園長室を出たアレイシアは、先程までとは打って変わり、優勝すると意気込んでいた。三人の先生の期待には、応えなければならないと思ったのだろう。一先ずは、寮に戻って三人に知らせなければと、学園内の道を走って行くのであった。
寮に戻ったアレイシアは早速、隣のシェリアナとクレアを部屋に招き、学園全体闘技大会に出場する旨を話す。この時シェリアナが、全力でアリアのサポーターをやると言い出したため、アレイシアは取り敢えず承諾しておいた。
「アリア、大会まであと二週間でやれる事はない?」
「んー……刀の扱いを練習した方がいいかもしれないわね。力だけでねじ伏せるなんて詰まらない、技も極めたい所だわ」
「流石……アリアらしい! ま、それなら鍛錬あるのみでしょ!」
サポーターらしく、予定を決める様に話すシェリアナだが、すぐいつもの調子に戻ってしまう。アレイシアはその様子を見て、すぐに刀を手に取った。勿論、外に出て鍛錬をするためである。
何故か付いて来た三人に見守られながら、刀を振るうアレイシア。
普通、見るだけというのは詰まらないものだろう。だがアレイシアの刀の扱いは、独学では有り得ない程に惹き付けられる、魅力の様なモノを感じられた。
刀を横に一度振るい、そのまま上方へと持って行く。知識でだけ知っていた、最も効率の良いといわれる円運動の刀の振り方である。そこから方向を変え、垂直に振り下ろす一閃。それだけで空気が斬れるのが三人にも分かった。
「すごい……! すごいですっ!!」
「凄く滑らかな動きですね。どうやったらあれ程……!」
感激の声を上げるフィアンとクレア。その横のシェリアナに至っては、目を輝かせ魅入っている様だ。
アレイシアが刀を手にしてから一月も経っていないのに、どうしてこれ程まで扱える様になったのか。
それはやはり、吸血鬼の高い身体能力で、刀を思い通りに扱う事が出来たからだろう。他にも理由があるとすれば、亜空間内で剣を使った事も関係しているのかもしれない。
左下から上へと振り上げる。全身を無駄なく使ったその動きの後、そのまま刀を前方に構え直した。
「……ふぅ、こんな感じかしら」
「アリアすごい! もう一回見たい!!」
「セリア……ちょっと休んだらね。連続はきついわ……」
暫くの休憩の後、更に半刻に渡って刀を振り続けたアレイシアは、三人と一緒に寮へと帰って行く。
この事がきっかけで、三人、特にシェリアナの好感度が今まで以上に上がったというのは余談である。
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