02-18 剣術科の場合
1/8追記:
感嘆符(!?)の後にスペースを入れました。
最後の方の描写を加えました。
その後、本を無事に借りたアレイシアは、一人で剣術科へと向かう事にした。今は一先ず、魔法魔術の各系統よりも剣術科に行っておきたかったのだ。もしかするとこれから、マイソードが必要になるかもしれないとアレイシアは考える。
マイソードは店で買うべきか、注文するか、自分で作るべきかと考えている内に、いつの間にか剣術科のクラスに到着していた。流石に屋内で剣を振り回す訳には行かないからか、第三実践魔法用闘技場の一角が剣術科のクラスとなっている。
「ハイ、ではみんな注目!」
前方に立った先生に生徒全員が注目し、話を聞く姿勢を整える。周りの生徒を見回せば、既にマイソードを持っている人も何人か見受けられた。
「これから、剣術科の授業を始める!!」
「…………」
「こらぁッ!! そこは『よろしくお願いします』と言う所だろ! もう一度! これから、剣術科の授業を始める!!」
「よ、よろしくお願いします!!」
生徒達は皆、先生のあまりの気迫に引き気味になりながらも、言われた通りの挨拶を返す。アレイシアも若干、この先生に対しては引いてしまった。
「よろしい! では、剣の基本的な種類から説明して行くぞ! いいな?」
「…………」
「こらぁッ! 問いかけられたら『はい!』と答えるものだろ!!」
「はいっ!!」
……この授業は大変なものになりそうだと、アレイシアは不安な気持ちで一杯になった。それは他の生徒も同じらしく、中にはあからさまに嫌な顔をしている者もいた。先生はそれを気にする様子も無く、話を続けて行く。
「俺の事はベルク先生と呼べ! じゃあ、まずはこれを見ろ!」
「は、はいっ! ベルク先生!」
地面に置かれたいくつかの剣を拾い上げるベルク先生。よく見れば、それぞれ長さや幅が違うのが分かる。
「これらが今のお前達にオススメの剣だ。一般的な剣、短剣などがある。近くに来て見てみるといい」
その言葉を受け、ベルク先生に近寄って行く生徒達。ベルク先生はどうやら、剣の事になると真面目になる様だ。アレイシアもそれに続き、剣に視線を向ける。
「これがよく使われる普通の剣で、これが小回りのきく短剣、こっちにあるのが突きに向いた細剣だな。あと、これが大剣、重いからあまりオススメしない。この中から一つ選んで、扱い方を学んでいく。重要な決定だから慎重にな。既に剣を持ってる奴は、学園支給のこれらの剣から選んで使わなくてもいい」
そこでアレイシアは、すぐに普通の剣にすると決めた。他の人からしてみれば、適当に使えそうなの、という理由で決めた様にしか映らないだろうが、普通の剣を選んだのにもアレイシアにはちゃんとした理由がある。それは、いつかは刀を使いたいという理由であった。短剣も細剣も、刀に応用するには難しいと思ったからだ。大剣などはもっての他、刀とは全くの正反対に当たる武器だろう。
「どの剣にするか決めた奴から、闘技場地下の武器庫に取りに行け。そこに階段がある」
ベルク先生がそう言い終わると同時に、半数以上の生徒が武器庫へとなだれ込んだ。その様子を見ていたアレイシアは、急いで取りに行かなくて良かったと安堵するのであった。その証拠に、今も武器庫の中から叫び声が聞こえてくる。
「おいっ! その剣は俺が取ろうと……」
「学園支給のだから全部同じだろ!?」
「キャアッ! そこの大剣使いの方、危ないわよっ!!」
「静かにしろお前らぁぁあ!!」
最後の声は、ベルク先生のものである。しばらくして騒ぎが収まってから、アレイシアも遅れて武器庫の中へと入って行った。
「ベルク先生、普通の剣はどこに……!?」
「ん? 普通の剣なら右側の棚の三番目だが……どうしたんだ?」
ベルク先生が疑問に思うのも無理はない。アレイシアは、ベルク先生の後ろを見つめて固まってしまったからだ。
「お、おい! 俺の後ろに何かいるのか?」
「先生……そこにあるのって……!!」
「ん?」
アレイシアにそう言われ、後ろを向くベルク先生。それと同時に、アレイシアは棚の上のある物を指差した。
「それは確か……百年以上も前に極東の地から漂流して来た、ある旅人が持っていたカタナという武器らしいぞ? 斬るという事に関しては剣と同じだが、上手く扱うには特別な技術がいるらしい。俺も使ってみたけど全然斬れなかった。何でだろうな?」
「それはそうよ。刀を扱うのなら、ただ力で押し切るだけではいけないわ。押しと引きが重要だからね。やり方次第では、純粋な人間の力だけで鉄さえも切り裂く、扱う者の技術も問われる武器なのよ。……ま、私も実際使った事は無いんだけどね」
そう言い、刀に触れて微笑むアレイシア。黒く光る鞘に、真紅と漆黒の紐が巻かれた持ち手。その色合いは、アレイシア本人を表しているかの様であった。鞘と柄の間から覗く白銀の刃が、妖しい雰囲気を醸し出す。ベルク先生は、何故こんな少女がカタナについてこれ程知っているのかと、幾分当惑した様であった。
「……決めたわ。この刀を私にくれるかしら?」
「まぁ、使える奴がいないし、知識を持った奴に渡すならいいかな?……そうだ、カタナはやるから条件がある」
「条件? 金と身体はお断りよ?」
「ははっ、言うねぇ! そんな事は言わないよ。ただ……」
そこでベルク先生は一息置いて、告げた。
「絶対に、使いこなして見せろや!」
「ふふっ……面白い。分かったわ、絶対に使いこなして見せる!」
「あぁ、たのむぜ。今から始める予定の『第一回、魔法もいいからとにかく何でもありの剣技大会』でも使ってくれよ! ちなみに、俺命名」
「分かった、使うけど……まずはそのネーミングセンスを何とかしなさいよ。わざわざ試合名にそんなに詰め込む必要が無いでしょうに」
ネーミングセンスについてを軽く説くアレイシアと共に、武器庫から外に出たベルク先生は、早速『第一回、魔法もいいか(略』についての説明を始めた。クラス全員を同時に戦わせ、大体の実力を見るのだという。勿論試合名の通り、殺しさえしなければ魔法の使用も大丈夫らしい。
「では、全員! 試合開始ッ!!」
その合図と共に、アレイシアを含め、全ての生徒が前へと駆け出して行った。
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~誕生祝いの謎コーナー~
七篠「知ってた?今日はアリアの誕生日だったりするんですよ」
アリア「あ、本当だ。一月七日(地球時間)ね」
セリア「誕生日おめでとう!」
フィア「本編じゃまだですけど」
七篠「ま、そうだけどね。実は今回、元男設定のフラグを一つ回収しました」
アリア「やっぱり武器は刀でしょ~」
七篠「……という訳で、感想評価など、お待ちしております!」
アリア「お待ちしておりまーす!」