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02-12 黒翼のアレイシア

 既に修行を始めてから十三年が経つ。神力の扱い方について黒美さんに教えてもらっていたアレイシアは、ある事に気が付いた。


「……ねぇ、私の神力が少し増えていないかしら?」


「それはそうよ……私の血を吸いまくって増えない訳がないわ。私、これでも神だし?」


「ええぇっ!?それ本当?」


 それは当然、驚くに決まっている。神力の扱い方にかなり慣れたアレイシアとしては、多い神力を持つのはとても良い事なのであった。……とは言っても実は、消費する神力の半分近くを無駄に出してしまうため、まだまだ修行が必要なのだが……


「ならもっと吸わせて?」


「えー……いいわよ……」


 少し嫌がりながらも吸わせてくれるあたり、アレイシアは嬉しく思っていた。なんと言ってもその血は絶品、世界中どころか異世界中のの吸血鬼が吸いたがることは間違いないだろう。そんな血を独り占め出来るとは、少しシェリアナに悪い気もした。


「あのねー、神も生命体なんだよ?血を吸われすぎたら……」


「大丈夫、そんな時は私一人で修行出来るから」


 口元を血でべったりと濡らしたアレイシアに、今度は黒美さんが、そういう問題じゃない!と脳内でつっこみを入れた。




 アレイシアは、神力の直接的な力の使い方を学んでいる。どうやら、魔法よりも遥かに効率の良い神力ならではの力の使い方という物があるらしく、例えば一瞬の間に多量の魔力を出す必要のある技を簡単に使う事が出来るそうであった。そして現在、空を飛ぶ黒美さんに、それを体をもって教えられているのである。


「ほらっ!そこは斜め下じゃなくて横に避ける所よ!!」


「うわあぁぁっ!ちょっ!?お手柔らかに頼みますぅぅ!!」


 魔法魔術を行使する上で重要なのは、どれ程の速度で魔力を放出する事が出来るのかという事である。普通の人間なら、魔力放出量は秒速二十から三十もあれば王宮で一級の魔法騎士団長に就任する事が出来るそうだが、アレイシアは既に秒速百もの高速で魔力を放出する事が出来るのだ。神力は魔力の七倍もの効率を誇り、アレイシアの神力放出における効率は七十パーセント、つまり神力を使用すれば、秒速五百程度の巨大な魔力を放出するに等しい攻撃を生み出す事が出来るのである。


「焔球、二十、密!」


「お!?なかなかやるわねッ!!」


 アレイシアは、二十もの巨大な焔の球を生み出す。あのデカ猪と戦った時も一つしか出せなかった炎球を、更に大きく更に多く、そして複雑な動きをさせて黒美さんに近づけて行く。相手の周囲を囲んで近付けて行くからこその『密』なのである。


「っ……!!」


 ゴオォォォ………


 黒美さんは焔に包まれ、地面へと落ちて行く。アレイシアは急いで落下地点へと瞬間移動し、黒美さんを抱きとめた。


「ふふっ……まだまだ私は本気じゃ無いわよ」


「何か負け惜しみにしか聞こえないけど、本当なんでしょうね……」


 その日の夜、黒美さんに始めて勝った褒美として、失血死しない程度に毎日血を吸わせろと要求したというのは余談である。






 それから七十年以上も修行を続けたアレイシアは、能力や神力の扱いに関してはかなり強くなっていた。


 まずは矛盾の能力。例えば、学園西の草原で試した必中の攻撃を、剣、槍、弓など、どの様な武器でも使える様にと練習した。この辺りのものは要するに慣れなので、練習あるのみであった。


 またある時は、亜空間内の家に引きこもり、そこに存在しないものが存在するという最も難しい矛盾を起こそうと必至になって練習したりもした。……結局出来なかったのだが。


 神力の扱い方については、基本的に魔法と同じ様な鍛錬を続けて行く事によって、発動効率の改善を図ろうとしたのである。それは、焔球を百個浮かべたまま三日間放置などの、あまりにも酷すぎる修行であった。


 時間当たりの消費魔力量が異常に多い飛行魔法を、神力を用いて省エネ化する事に成功した。更に、自身を取り巻く結界、周りを囲う風、その両方を研究する事によって、より効率的で高速な飛行を可能にする事も出来た。


 他にもまだまだあるのだが、一先ずはこれでいいだろう。





 修行開始から八十七年、アレイシアが百九歳のある日、眠りから目覚めてみれば、肩から背中にかけてとんでもない違和感を感じた。違和感の正体が気になりながらも、朝の微睡む心地よいこの時間を堪能しようと、自然と布団の中に深く潜り込む。


 だが、そこで異変は起きた。


「ぁっ……!!」


 何故か布団に潜り込もうとすればする程、背中でも肩でもない変な場所から痛みが走る。どこが痛んでいるのか、彼女には全く見当が付かなかった。


 結局、その痛みに眠りを妨げられたアレイシアは、ベッドの中からゆっくりと這い出して来る。


 そして遂に、『それ』を見てしまった。



「え……何、これ……?」


 部屋の角に置かれた鏡を覗き込んだアレイシアは茫然とした。それも当然、これで驚かない者はいないだろう。何故なら……








 バサッ……


 自身の背中に蝙蝠の様な漆黒の翼があったのだから。








「うーん……そうねぇ、先祖返りみたいなものかしら?やっぱり私の神力の影響を受けたのかも知れないわね」


「これも血を吸い過ぎたから……?」


「毎日毎日真夜中に、私のベッドに忍び込んでは寝込みを襲うあんたの自業自得ね!!」


 起きて来た黒美さんに早速相談したアレイシアは、どうしても気になっている事を聞いてみる。


「……どうしよ、このままじゃ学園の皆に……隠せる方法とか無いかしら?」


「自業自得よ、自分でなんとかしなさい!さて、今日も始めるわよ!!」


 そう言って家から出て行ってしまった黒美さんを急いで追いかけて行くアレイシアは、何とかするってどうするのよと、考えを巡らせていた。





 アレイシアの翼が現れてから三年、遂に九十年もの修行を終わらせ、亜空間から神界に戻ったアレイシアはある事に悩んでいた。それはもちろん、結局隠す事が出来なかった翼についてである。


「この翼、どうしようか……」


「自業自得よ、学園の寮に返すからこっちに来てねー!」


「え、ちょっと待って……!」


 黒美さんはアレイシアの襟元を掴み、神力を集中させ始めた。このままではまずいと、神力を放出して妨害するアレイシアだが、本物の神の神力に敵うはずも無く、一分程で転移は発動してしまう。


「や、やめてっ!ストップ!!」


「じゃ、またいつか。用事があったら呼ぶわね」


「その……!」


 アレイシアが最後に言った言葉は、途中までしか黒美さんの耳に届かなかった。

誤字脱字の報告や、感想評価、アドバイスなどをお待ちしております!ユーザ登録をしていない人も感想を書けますので、ぜひ送って下さい。



~きっと、あまり誰も見ない謎コーナー~


七篠「総合評価が四百を超えました!しつこい様ですが、読者の皆様、ありがとうございます!」


クレア「私、あまり出られなくて寂しいのですが……」


七篠「大丈夫、次回からどんどん出して行きますよ!」


フィア「次回から、学園の本編が始まります」


クレア「感想評価、よろしくお願いしますね♪」



黒美さん「私って、次はいつ出るの?」

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