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02-11 神の血

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読者の皆様、ありがとうございますっ!

低い轟音が近づいて来る方向、そちらを向いたアレイシアがまず目撃したのは、ただのデカイ猪と表現するのが最も適切であろう、巨大な獣だった。体高は十二テルムにも届こうかという程の巨体を揺らし、高速でアレイシアの方へと近づいて来る。


既に魔導書を左手に開き、神力を右手に溜めて臨戦体制を取っていたアレイシアは、ただこちらへと突っ込んでくるだけの獣に、氷の矢を生成する中級魔法を無詠唱で多量に放つ。


氷魔法とは、水属性と風属性を合わせる事によって生まれる応用魔法である。それは、水魔法で空気中の水蒸気を凝縮し、風魔法で低温を保つ事によって氷を生成するという物であった。風魔法で低温を保つには、螺旋状の気流を水に巻き続けなければならないため、かなり難易度が高く、使い手も少ない魔法なのである。だが、そんな事は知らないと言わんばかりに大量の氷魔法を放つアレイシアは、他の者から見ればやはり、異常の一言に尽きるだろう。


勢い良く放たれた氷の矢は、四百テルム以上離れた巨大な猪までわずか一秒足らずで到達、その猪を木端微塵に粉砕―――出来なかった。到達する直前、何故か風魔法が消滅し、速度による空気の摩擦熱で氷が水に戻ってしまったからである。


それを見たアレイシアは、初級火炎魔法を過度の魔力でわざと暴走させ、巨大な火球を放つ。その時に込められた魔力は、魔力量の数値で表せば裕に一般的な人間の総魔力量である百を超える。だが、その火球も獣に届く直前で消滅してしまう。そこでアレイシアは推測する。このデカ猪は、魔法を完全に無力化出来る障壁を張っているのではないかと。実際、一部の上位の魔物は魔法魔術を行使して来る事もあるという。


そして、遂に猪がアレイシアの元へと到達する。その猪の背後に瞬間移動で回りながら、このまま魔法を使うだけでは対処出来ないと考えた。ならばと、右手に溜めた神力を放出し、一点に凝縮、形を取るように調整する。そして右手に現れたのは、巨大な一筋の光剣。それは神力を圧縮する事によって生まれる発光現象によるものであった。何故かは知らないが、神力を扱える者の多くはその技を使える……らしい。


「あぇ?何となくやってみたら出来たし……大丈夫かな………?」


そう言ってアレイシアは、方向転換をして戻って来る猪に向かって光剣を構えた。実はこの技、黒美さんがやり方だけ教えてくれたもので、一度も使った事は無かったのである。


「っ!てぇぇぇいッ!!」


ザクッ!


「グギイィィェァア!!」


その猪はいとも簡単に真っ二つに斬れてしまった。恐らく、魔法以外の耐性はかなり低いのだろう。辺りには、猪が光剣に焼き斬られたからだと思われる、焦げた肉の匂いが漂っていた。


そしてアレイシアは学園へ、空を飛びながらゆっくりと帰る。先程の獣は、何かにはなるかもしれないと、一応角だけ折って持って帰っておいた。




学園に到着したのは既に夕方、着陸が面倒だったアレイシアは、窓からそのまま寮室へと入る。すると、


「ただいま、遅くなったわね」


「遅いですよーっ!これからみんな外で夕食を食べようと思っていたんですから……って窓から!?」


「アリア遅いッ!罰として私に血を吸わせ……窓!?」


「窓ですか!?アリアさん……もう慣れましたわよ…………」


何故か呆れられてしまった。


その後シェリアナが、「血を吸わせろー」と叫びながらやたらとアレイシアを追いかけていた事を除けば、大して何も起きずに一日は終った。





次の朝、もとい、夜中という程の早朝に起きたアレイシアは、着替えた後、棚から丸められた紙を取り出す。それは言うまでもなく、黒美さんに場所を知らせるための魔法陣が描かれた紙であった。


そう、彼女はこれから十年修行に向かう予定なのである。あえてこの時間を選んだのは、皆に心配をかけない様にという配慮による物だ。取り出した紙を広げてその上に立ち、魔導書を手に持って魔力を込め始める。薄く光る魔法陣だが、前回と同様、この程度の魔力では全く反応が見られない。それからしばらく、遂に三段階までの魔力を開放したその瞬間、アレイシアは突如発生した眩い光とともにその場から消え去った。




少しづつ浮上する意識、動かしにくい体を何とか動かして声を発する。


「ん……ぅ?」


「起きた?今回は直接亜空間内に呼んでみたのよ。成功して良かったわ」


聞こえたのは黒美さんの声、首を回してそちらをの方を向く。今日は緋色のドレスの様だ。


「……失敗したらどうなっていたのかしたら?」


「それは…………何処とも知れない異世界の宇宙空間や『無』に放り出されていたかもね……」


「私はまだ死にたくないわよ……少なくとも私は寿命で死ぬ事は無いだけなんだから」


そう言ってため息を吐いたアレイシアは辺りを見回す。前回ここを去った時と何も変わらず、この空間内に建てた家がそこにあるだけだ。


「さて……十年間よろしく!」


「という訳には行かないのよ………下手したら、魔界がもっと早く攻め入るかも知れないって情報があって、これから九十年は悪いけどここで修行してもらうわ」


「え……フィア、セリア、クレアもいるのに………」


「大丈夫、外では九刻しか経たないから」


その答えに、そういう問題じゃない!と脳内でつっこむアレイシアは、とりあえず素直に九十年、修行を積む事になるのであった。





それから僅か三日後、アレイシアはいつかあった不思議な感覚を覚えていた。


「うぅ、黒美さん……あの、私ちょっと……」


「どうしたの?」


妙に頬を朱く染めて慌てた様に言うアレイシアを心配し、黒美さんはアレイシアに近寄って行く。だが、それが間違いだった。


「あのっ、血を……少し吸わせて欲しいの………」


「…………え?」


すぐに瞬間移動を発動、背後から抱き付いたアレイシアは、黒美さんの首に牙を突き立てる。黒美さんの方がアレイシアよりもずっと身長が高いため、腰に足を回して抱き付く形になっている。


プツッ……


「あっ!うぁ……っ!私のっ、血はあまり……吸うと……」


「むぅぅう!」


アレイシアは、その血のあまりの美味しさに夢中になる。何処までも深く、甘く、そして力のあるその血は、瞬く間にアレイシアを虜にして行った。これからアレイシアは、短い時は数日、長い時には数年おきに起こる吸血衝動の度に、黒美さんの血を吸うというのが習慣となってしまったのである。これが、後にある事件を引き起こすとは知らずに……

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~何処か無駄な謎コーナー~


七篠「前書きにある通りで、これがすごく嬉しかったです!」


フィア「読者の皆さん、ありがとうございます!」


七篠「でさ、アリア。あのー……モーツァルトのオペラで『魔笛』っていうの知ってる?」


アリア「クラシック好きねぇ……」


七篠「いや、珍曲マニアだからモーツァルトとかベートーヴェンに興味無いよ。アムランとか、アルカンとか、ゴドフ……」


アリア「それはいいから!……で、その『魔笛』がどうしたのよ?」


七篠「いや、なんかそのオペラに『夜の女王アリア』ってのg」(バキッ!)


フィア「……作者不在のため私が。感想評価など、いつでもお待ちしておりますっ!」



七篠「全く……関係、無いのに……言葉だけなのにっ………!」

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