02-07 アレイシアファンクラブ
二日連続投稿です。
早く話をすすめないと……w
アレイシアとフィアンは三階、一年Sクラスと思われる部屋の前に立っていた。クラスの中はどうも騒がしく、何やら面白い話題で盛り上がっているようであった。
「開けるわよ」
「はい……」
話の内容も気になったが、静かな声で、フィアンに扉を開ける事の確認をとる。先程からどうも怯えている様な感じのフィアンだが、別にアレイシアに怯えているという訳では無さそうであった。
「失礼します。遅れてすみません」
「すみません」
アレイシアは扉を開け、フィアンと共に中に居るであろう担任の先生に声をかける。すると、
「おー!あれが噂の!?」
「あのウェルムを降参させたという」
「そうね、『黒翼のアレイシア』で間違えないわ」
「羽は見当たらないが……?」
「こらっ!そこの君達、そろそろ黙ったらどうだ?」
何やらイタい二つ名をつけられていた。
このクラスの担任はあのフィズ先生だったらしく、騒がしく話をしている生徒たちを鎮めている。アレイシアは、現状確認のためにもフィズ先生に話しかける。
「……ちょっ、これは一体どういう事なのよ?」
「あぁ、ホールでウェルムと戦っただろう?その時に空を飛んだのが原因で、もしかしたら今では伝説になっている翼持ちの吸血鬼なのではという話になってな……僕も半分信じていたよ」
翼持ちの吸血鬼というのは、年齢は裕に一万を越える、この世界の神話に出て来る吸血鬼の事であった。大体二千年程前まで、翼を持った吸血鬼は実在していたそうだが、今では全くいなくなっている。少し歴史の話をすれば、千五百年程前に現れたある翼持ちの吸血鬼は、わずか十五歳で二つの軍を相手にし、戦争の地にて勝利を収めたという。強さで比べれば、アレイシアも同じくらいはあるかもしれないが、背中の何処にも翼は見当たらない。要するに、虚構である。
「いや、信じるなって。私は別にそんな大層なものじゃな……」
「お願いだ、サインくれっ!!」
「抜け駆けはずるいぞ!俺もだ!」
「アレイシア!俺だ!結婚し……」
「アレイシアファンクラブで会長をする事になりました。公認のものにしたいのでご本人の許可を……」
「私もサイン欲しい!!」
「はははっ、すっかり人気者だね。やっぱり僕もサインをもらっておこうかな?」
ついにフィズ先生にまで見捨てられた気分になったアレイシアは、もうこうなってしまっては仕方が無いと、一人ずつ順番に対応して行った。サインをほしがる者には、自分は翼持ちではないという事を告げ、それでもサインをほしがった者には、エングライシアで適当に『Alysia M. Latrommia』と書いて渡しておく。更に、ファンクラブに全く興味のなかったアレイシアは、自称ファンクラブ会長に、自分に迷惑がかからない程度にならいくらでも好きにやっていいと告げ、求婚はあっさりバッサリスッパリと断っておいた。求婚を断られた後の絶望した様な表情はなかなか見物であったというのは胸の内に秘めておく事にする。
「ふぇぇ……これは心労で死ねるよ……」
「あ、アレイシアさん!?大丈夫ですか?」
「えぅぅ……」
もしかすると、フィアンはこれを心配していたから怯えた様になっていたのではないかと思い当たる。
その後、かなり時間をかけて落ち着きを取り戻した一年Sクラスは、やっと予定通りの説明に戻る事が出来た。アレイシアが指定された席は、一番左の窓際、最前列の席である。右にはフィアンが座っている。
「ではまず、この学園での方針について説明させてもらいますね。一般的な言語、演算能力から、魔法魔術や戦闘など、幅広い範囲を学園では教えています。午前は三時限、午後も三時限と、計六時限制になっているのですが、その内、午前の三時限は数学、国語などの必須科目、午後の三時限は、それぞれが選ぶ選択科目となっています」
なるほど、とアレイシアは思った。午前の必須科目は、国語がこの世界の三国共通語である事以外、地球でやっていた事とあまり変わらないのである。そのまま話を続けるフィズ先生に耳を傾ける。
「選択科目において、一学年の終了時に規定以上の単位を取得出来ていれば合格、クラスが一つ上がります。まぁ、皆さんは一番上のSなので変わらないという事になりますが。それ以下でありながらもクラスの平均程度の者はそのままのクラスを維持、それ以下なら不合格と見なされ、クラスを一つ下げられます。学園卒業時にどのクラスにいるかで、どれほど優れているかが判断され易いですね。クラスは上から、S、A、B、C、Dとなっています」
それはつまり、単位制と学年制の見事な融合であった。七年という決められた期間の中で、どれ程上位のクラスに入れるかが鍵となるというわけである。
と、そこで、アレイシアの右にいるフィアンが立ち上がった。
「質問です!どの様な選択科目があるんですか?」
「ああ、そうだね。それが書かれた紙を今から配る所だったんだ」
そういってフィズ先生は順番に、座っている生徒たちに紙を渡して行く。アレイシアも紙を受け取り、たくさん並んだ選択科目に上から目を通す。
「この中から三日後までに、自分がやりたいと思う科目を選んでおくように。数はいくらでも選べるけど、あまり選び過ぎはすすめないよ。その勉強が疎かになるからね。三日後、選択科目が決まるまでは午前中の授業だけになるかな」
そう言ってフィズ先生は、さらにもう一束の紙を生徒たちに配って行く。
「これには学園の規則が書かれているから良く読んでおくように。学園校舎内で魔法魔術は使ってはいけないというのもあるなぁ」
「う……」
その言葉に心当たりがあるアレイシアは、知っていて言ったのではないかと思いつつも、自分がやった事を悔やんでいた。
その後も学園内ギルドの使い方、学園証などについての説明も受けたアレイシアは、説明された学園証の機能にかなり驚いていた。学園証は、磁気の代わりに魔力を使ったカードのような機能も持っているらしく、寮室の鍵に学園証が使えるのはそのせいらしい。更に、ギルドにおける階級もこれを使って分かるという。これらの事からアレイシアは、文化レベルは地球でいう所の中世でありながらも、魔法を使った一部の技術では地球にも引けを取らないという仮説を立てた。実際、約千年も前からこの世界の文化は同じ様な形をずっと保って来ていると言われているため、この仮説も案外本当なのかも知れない。
説明が全て終わり、Sクラスの多くの人がまた明日と教室を離れて行く。そんな中、アレイシアとフィアンは教室を離れられないでいた。何故かといえば……
「あ、アレイシアさんっ!早く出ましょうよ!!」
「無理よ!!これ程の人が集まったら……!」
「学園紙のインタビューです!」
「うちのギルドパーティに入りませんか?」
「将来僕の嫁に!」
……あまりにもたくさんの人に囲まれ、身動きの一つも出来ないからであった。結局、寮の部屋へと帰れたのはそれから一刻程経ってからだという。
「あんなの、もううんざりよ……」
「私も疲れました……」
寮室に帰った二人は完全に疲れ切っていたため、そのまま体も洗わずにベッドへと飛び込んだ。誰が噂をこれ程まで広めたのかと考えを巡らせながら……
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~やってみたかった謎コーナー~
七篠「どうもおはこんばんちは、投稿する前、遂に総合評価三百ポイント超えたのを見て狂喜した七篠であります。読者の皆様、読んで頂き誠にありがとうございます!!えー、では、黒翼のアレイシアさん、どうぞ!」
アリア「その名前で呼ぶなって……あとアリアって何よアリアって」
七篠「いいじゃないですか。最近どうも貴女に愛着が湧いて来てしまって……愛称ですよ、愛称。次回から本編で使う予定の」
アリア「……そう、つまりは読者様の反応を見て判断するわけね。愛称アリアって悪くないわ」
七篠「そういう訳でよろしくお願いします。感想にこの愛称の賛否を書いてくれると嬉しいです!感想や評価は作者のエネルギー源ですからね」
アリア「待ってま~す♪(ニコッ)」
七篠「うぉ、サービスだw」