02-04 女の子だから……
アレイシアの変更後の口調が可愛かったからつい着飾らせたくなった。反省も後悔もしていない。
↑この一心で書き上げたため、表現がおかしい所があるかもしれません。なので後々修正するかも。
2011/1/11追記:
感嘆符(!?)の後にスペースを入れました。
若干の訂正をしました。
学園に来てから一週間、入学式を前日に控えたアレイシアは、フィアンの猫耳を弄くりながら雑談をしていた。椅子に座ったフィアンの後ろにアレイシアが立っているという感じである。入学に必要な準備は既に終わっていたために、かなり暇を持て余していたのであった。話題に登る話はほとんど魔法魔術関連であり、他の話題があったとしてもアレイシアの口調についてなどである。そんな偏った会話の中で、フィアンは珍しい話題を切り出した。
「そういえばアレイシアさんってそういう服……黒いドレスをよく着てますね。それもほとんど装飾がついていない」
「それは多分母様によく着せられていたからよ。最初は抵抗したんだけど流石に慣れてしまったわ」
アレイシアは、ここ何日かでフィアンの前でも抵抗なく喋れる様になった口調でそう返す。
「そうだったんですか……どうせならもっとおしゃれしてみません? そんなに可愛いのに勿体無いですよ?」
「……嫌だ。と、言いたい所だけどそれも確かに……」
アレイシアは迷っていた。前世、東次だった頃は中の上程度の容姿であったにもかかわらず、自身の容姿をそれ程良く思った事は無かったのである。それが今はどうだろうか。言ってしまえば、十二歳の身体ながらもほぼ完璧とも言える容姿を持っているのである。それこそ容姿に自信を持って自慢出来る程のである。服装や装飾品などで飾ればその身長もあり、人形とも見違える程に可愛く、美しくなる事は明白であった。
だが、それでこそアレイシアは悩んでいるとも言えるのである。服装や装飾品でおしゃれをするという事は、何か別の、男としてのプライドが崩れて行く様な感覚を覚えてしまう。ただでさえ、黒美さんによって女口調に矯正されたばかりのため尚更であった。
でも、とアレイシアは考える。折角これ程の容姿を持ちながらおしゃれの一つもしないというのは損というものなのではないかと。そう考えてアレイシアは決意した。
「よし、分かったわ。学園で着る服をちょっと学園街に行って見て来るわね」
「あ、私も連れて行って下さい!」
すぐに魔導書を手に持って玄関へと向かって行ったアレイシアをフィアンは追いかけて行った。因みに、学園街というのは学園内市場を含む施設一帯の事を指し示す言葉である。
アレイシアによる日光軽減の魔法を発動させながら、学園街の中心部にて二人は服屋を片っ端から探っていた。探し始めてから半刻程経った時、ある服屋に目が留まる。いや、正確にはその店の入り口付近に掛けられた服に目が留まった。
「ちょっとあの店見てみましょうか?」
「!? あれは……!」
驚くアレイシアを引っ張りながら店へと近づいて行くフィアン。アレイシアは近づいて行くにつれてはっきりと見えて来たその服に驚いて言葉を失っていた。
「この服凄く良いですね。黒のドレスだからアレイシアさんに良く似合うと思いますよ?」
「ぁ……うん、そうね。それにしてもこれは……」
フィアンが勧めた服は、黒を基調とした上の服とスカートが別れた形のドレスである。下に重ねて着るフリルの付いた白いドレスがスカートの下から少し出る様になっている。更に、赤や白の刺繍がしつこくない程度に入っているのが見られる。袖は少し広がっており、下に着る白いドレスの袖と重なる様になっていた。上に着る方の服は、胸元に網目の様に紐が通されているため、下に着ている白いドレスが少し見える様になっている。
「この服、どう?」
「気に入った、買うわよ!! 幸いサイズも丁度良いみたいだし」
アレイシアがこの服を見た時に何故驚いたのかといえば、地球で言うゴスロリにかなり近かったからである。とは言っても、フリルやレースなどは少なく、派手さの無い、バランスの取れたデザインだった。そのためか、アレイシアもこの服を見た時すぐにこれが良いと思ったという。元々は嫌がる筈なのだが、先程のフィアンとの会話で何処か吹っ切れた様である。
そのドレスを買って店から出て来た二人は、他にも髪につけるリボン用の黒い紐や、ブローチを買ってから寮室へと帰って行った。ちなみに、フィアンも何着か服を買っていた。
入学式当日、フィアンに殴り起こされる事も無く起きる事が出来たアレイシアは、前日買ったドレスに着替え始めていた。指定時間に起きられる様になったのは、亜空間修行中に起床時間を直していたからである。
まずは下に着る白いドレスを着用し、その後に黒いスカート、上部分を着る。上部分の胸元の紐を蝶結びで結び、同じ様に蝶結びで髪の左右端に黒いリボン紐を結んでおく。胸元の蝶結びの下辺りにブローチを付ければ着替えは完了である。
丁度着替えが終わった頃、フィアンがアレイシアの部屋に入って来た。寮室は、アレイシアの部屋、フィアンの部屋、リビングルーム、風呂場などの水周りと、いくつかの部屋に別れているのである。
「アレイシアさん、着替え終わりまし……」
「あ、フィアン。丁度着替えが終わった所よ」
アレイシアはそう言うが、何故かフィアンは部屋の入り口で固まったまま動かない。いつもは揺れ動いている猫尻尾も斜めになって固まっている。それを不思議に思ったアレイシアはフィアンに近づいて行った。
「……フィアンどうしたの?」
「ふぇ…? あっ、あのっ! 凄く似合ってます!!」
「あ、ありがとう」
急に似合っているなどと言われて恥ずかしいのか、若干赤面したようになるアレイシア。フィアンも恐らく、アレイシアの服があまりにも似合っているから言葉を失ってしまったのだろう。
「え…えーと、朝食をレストランで食べたらすぐに、入学式のある校舎北の大ホールに向かうという事でいいんでしょうか?」
「多分大丈夫よ。行きましょうか」
そう言って、アレイシアは机の上に置かれている魔導書を掴み、玄関へと向かって行った。なぜ外出時に毎回魔導書を持って行くのかとフィアンは疑問に思ったが、それを聞く事はしなかった。
校舎北の大ホール、そこには入学基準に基づいた平民貴族関係無しの十二歳から十六歳までの多くの生徒であふれていた。教師と思われる者が何人か、そんな多くの生徒を整えて列に並ばせている。勿論、教師も生徒も決して人間に限らず、いわゆる獣人やエルフ、小人などもいる様であった。また、極々稀ではあるが、アレイシアと同じ吸血鬼もいるのが見受けられる。
入学式が始まった。この学園の校長は三人もいるらしく、それぞれイルクス王国、メアル皇国、リレネフ帝国という三つの国の者であった。校長の話は長いのが定番であるが、この学園の校長はそれほど長く話をしなかった。その代わり、三人分である。普通に一人による長い話を聞かせられるよりはよっぽどマシではあるが、長さはゆうに半刻を越える。校長"達"による長い話にはほとんどの生徒がうんざりしている様であった。勿論アレイシアとフィアンもその中の一人、いや二人である。
「……えー、この国立魔法魔術学園では、皆さんの魔法魔術の技術の向上、並びに知る事への好奇心を養う……」
「暇ねぇ……暇……暇……」
「アレイシアさん大丈夫ですか?」
狂ったように暇と繰り返すアレイシアを心配してフィアンは声を掛ける。
「暇……暇……クククッ、あの校長を燃やしてみるのも面白そうねぇ」
「ちょっ、性格変わってますよ!」
「…………あれ、私は何を?」
「そこ静かにしなさい!」
話をしている事に気付かれた二人は、巡回していた教師に注意されてしまう。二人は勿論その場ですぐに謝った。
そして、長くて無駄の多い校長の話が終わり、次の魔力検査、及びクラス選定のために生徒達は中ホールへと向かう。総演説時間半刻にも及ぼうかと言う程の校長の話は結局、『これからの七年間、皆健やかに勉学に励んで立派な大人になって下さい』とまとめられる事が分かった。全く、時間の無駄遣いである。アレイシアは、同じクラスになる事を望むフィアンと共に中ホールへと向かって行った。
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