02-03 亜空間修行 2
ストック放出完了!
アレイシアちゃんの口調が変わったりします。このままでいいとか、戻してほしいとか、早くロリババ口調にしてほしいとか、そんなリクエストも受け付けています。
2011/1/11追記:
感嘆符(!?)の後にスペースを入れました。
若干の訂正をしました。
表現的にアレな場所を訂正しました(笑)
修行を始めてから約一年が経つ。結果から言えば、アレイシアは修行を始めてからわずか四日で能力の感覚をつかむ事に成功した。感覚をつかむだけなら比較的簡単に出来るのだが、実用的な能力の行使には更に何年もの修行が必要だという。今の段階では自身が能力を持っているという事を自覚出来る程度だが、それが出来なければ能力を使う事など絶対に出来ない。黒美さん(仮)によれば、何事も基礎が大切なのだそうだった。
今は神力、妖力、霊力の扱い方の練習をしている。能力の修行はどちらかと言うと精神的な強化によるものなので、する事といえば瞑想や自身への暗示などであり、アレイシアに言わせてみれば何もしていない様なものなのであった。そのため、実践的な練習も含む神力などの力の使い方の練習を黒美さんに頼み込んだのである。
「えーと…いつか貴女が魔力を感じ取った時と同じ方法で、まずは神力を感じ取ってもらうわ」
「分かった。手を合わせて神力をこっちに流すやり方がいい」
「分かったわ」
そう言って黒美さんはアレイシアと手を合わせて手から神力を放出した。神力は実の所魔力の原型でもあるため、魔法魔術の行使にも使用する事が出来るのである。神力を使って魔法魔術を行使した場合、実質魔力を使った場合より七分の一程度の神力で発動出来るという。
「どう? 何か分かった?」
「んん…………あれ? 何か異物感を感じる。でも何処か安心する様な……?」
不思議そうに言うアレイシアに黒美さんは応える。
「多分それが神力ね。安心する様な感覚は恐らく……何と説明すればいいのか分からないけど、全ての原初、産みの親だからだと思うわ」
「なるほど……自分の中にも神力が少しあるのが分かった」
「そう、ならこの段階は成功ね。しばらくは魔力の代用として使ってみて感覚を覚えるといいわ。……そう言えば今日はアレイシアの十三歳の誕生日ね。今日は家で休みましょうか」
そう微笑んで言う黒美さんに促され、二人は亜空間内に建てた家の中へと帰って行った。余談だが、アレイシアは黒美さんに口調をもっと女の子らしくする様に毎日言われているため、若干口調が柔らかくなった様である。これからもアレイシアの修行は続いて行く……
修行を始めて四年半程が経ったある日、アレイシアは亜空間の家の中で椅子に座って休んでいた。否、椅子に座りながらも修行していた。アレイシアは自身の目の前に置かれたコップを能力を使って瞬間移動させようとしているのである。
魔法の中には瞬間移動を発生させるものも存在するが、何処まで極めても準備に十秒は掛かってしまう。そのため実際は"瞬間"移動では無い上に、戦闘時には全く役に立たない。そこをアレイシアは一つの物が同時に二箇所に存在しているという矛盾を発生させて、本当の"瞬間"移動を成功させようとしているのである。ちなみに黒美さんが転移を使用して亜空間に入る時も三十秒程の時間が必要だった。
黒美さんの助言によれば、能力発動に神力を使えば成功率が上がる様なので、神力を込めつつ、能力を意識して、はっきりと発生させる矛盾を思い浮かべてみる事にした。神力を込めるのは、自然に存在するありとあらゆる森羅万象は元を辿れば神力に帰す、という法則に基づくというが、あまり細かい説明はしてもらえなかった。
アレイシアはここ四年半の修行で十倍近くにまで増えた神力の一部を込め、コップを動かす様に強く意識する。
(動けッ!!)
ガタッ!
「……あ!」
アレイシアが念じた瞬間にコップは横に大きく移動して倒れた。つまりは成功である。アレイシアはその時、三年もの修行がようやく報われたと心の底から喜んだという。
「瞬間移動成功した!!」
「えっ! それ本当!?」
アレイシアの叫び声に一瞬で反応して駆けつけた黒美さんも、その報告に喜びのあまりアレイシアを抱き締めた。
「ぁっ…………苦っ……し…い……! やめっ……」
ガクッ……
「あぁああ! ごめんっ!! アレイシアちゃん大丈夫!!?」
……今日もアレイシアの一日は平和である……?
初めて能力発動に成功した日から約五年半、合計十年の修行期間を終えたアレイシアは自身の体をも瞬間移動させられる様になっていた。魔力や神力などの力も修行前に比べてだいぶ大きくなっている。
「それにしても不思議なものね。ここで十年過ごしても外ではたった一刻しか経っていないなんて」
「そうね、貴女の口調も十年前に比べたらかなり可愛らしくなったわよ」
「うるさいそれを言うな! 私だって直したくなかったし!!」
「やっぱり素はそれなのね」
黒美さんは笑いながら、掴みかかるアレイシアをいとも簡単にかわす。
「まだまだぁっ!!」
「なっ!?」
と、そこで咄嗟に瞬間移動を発動させて黒美さんの背後に回り込んだアレイシアは背中から黒美さんに抱き付いた。
「……え?」
「十年間も修行に付き合ってくれてありがとう。感謝するわ。あといい加減名前教えなさいよ」
「え…あ、どういたしまして。名前は教える気ないわよ?」
不意を突く様に感謝の言葉を述べられた黒美さんは驚きながらもそう言う。
「じゃ、そろそろ出ますか! 転移」
そう言って黒美さんは膨大な神力を集中させて神界へと戻って行った。
神界に戻ったアレイシアはすぐに黒美さんに頼み、寮の部屋へと転移させてもらった。次の十年修行は来週という事になっている。ただ唯一の問題は、
「到着ー!!」
「わ! キャァッ!!」
紙に描かれた魔法陣を観察していたフィアンの真上に転移してしまったという事である……
「ヒドイですよ……いきなり上に跨ってくるなんて……」
「私が悪かったわ。ごめんなさい」
アレイシアは脳内で、これは事故だこれは事故だと繰り返していたという。
「それにしても早かったですね。まだ二刻も経っていませんよ?」
「それは………」
「……? そう言えばアレイシアさんから感じる気配がさっきまでとは別物な位に大きくなっている気がしますが何でですか?」
「あぅ……」
「口調にも違和感がありますが……?」
「ぅぅ……ごめんなさい私が悪かったから、質問責めはやめて……」
「別に質問責めはしていませんよ?」
「言葉に棘がある……」
フィアンの真上に転移してしまったせいで質問責めを夜まで喰らってしまったアレイシアだが、久しぶりにフィアンに会ったせいか何故か嬉しかったというのは恐らく別の話である。
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