どんな未来が待っているかなんて、誰しも分からないものなのですね。~こんな未来は少しも想像していませんでした~
「お前との婚約だけど……破棄っするっよおおぉぉーっん!!」
婚約者ディヴォーフが明らかにふざけた調子で告げてきたのは、人生を大きく変えることとなる決定――婚約破棄だった。
ディヴォーフとの出会いは学生時代。
お昼休憩の時に彼が急に声をかけてきて、それから、なんとなく喋るようになった。
その頃はノリの良い彼のことが好きだった。
恋愛という意味での好きかどうかは分からなかったけれど、ディヴォーフとくだらないことを話している時間は純粋に楽しかった。
今はもういろんなことが変わってしまったけれど……。
「俺はサ! もっと魅力的な女性と一緒になるんダ! で、奥さんだけじゃなく他の女性とも仲良くやって、俺のためだけのこの世の楽園を作るんダ! それが俺の夢だから、お前みたいな普通過ぎる女性は俺の妻には相応しくないんだヨ! オケイ? じゃ、そーいうことで、バイバァイ!」
彼は終始ふざけた調子で言葉を紡いでいた。
現実的ではない夢を自由に語り。
私という人間が要らなくなった理由を躊躇わず表に出す。
そうして私たちの関係は終わりを迎えることとなったのだが――翌日、彼は、事故に巻き込まれて亡くなった。
魅力溢れる女性複数人を傍に置き、ちやほやされ、好き放題暮らす。
そんな夢を熱く語っていた彼だけれど、そんな理想は呆気なく塵と化してしまった。
すべては自身が生きていてこそ。
楽園を作ると語っても、その中心となる自分が生きていなければ、もはや何の意味もない。
自分が生きていてこその夢。
自分が生きていてこその楽園。
彼の夢が形になることは……もう、二度とない。
その後私は猫の研究家になった。
きっかけはなぜか庭に放置されていた子猫が急死したこと。
もう何よりも可愛くて溺愛していたその子が亡くなってしまったことにショックを受けたことが、私の猫の研究のスタート地点を作った。
子猫に出会う前はこんな未来なんて欠片ほども想像していなかった。
だが、色々な出来事が繋がり重なり、私をこの場所へ誘った。
きっとこれが私の天職だったのだと思う。
運命が私をここへ連れて来た。
ならばその流れに乗って。
無駄に抗うことなどはせず、運命という波に乗りながら、目の前にある道を進む。
◆終わり◆




