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楠木和葉はアイスが食べたい  作者: 梅野ねむ


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楠木和葉はアイスがアイスが食べたい

 「むぅ、また負けた」

 私はそう呟いて手にしていたゲームをほっぽり出した。

 友達に誘われ、流行りのFPSゲームとやらを始めてみたはいいものの、最近はめっきり勝てなくなってきてしまった。

 最初の方こそbot?とやらが相手で気持ちよく敵を倒せていたものの、最近はプレイヤーと当たるようになり、全然勝てなくなってきてしまった。

 「なんか面白いことないかなぁ」

 ベッドの上で足をバタつかせながらゴロゴロする。行かんせん私は何にでも飽きやすい性格なので、このように何かにハマってはすぐに辞めてしまうということを繰り返していた。

 「和葉ぁ、早くお風呂入っちゃいなさい〜」

 下からの母の声を聞くも、なかなか体は動かない。そう、私は飽き性というよりシンプルになんでもめ面倒くさがる性格なのだ。

 しかし、もちろん母もその性格のことは熟知しているので私の扱いも大変上手かった。

 「風呂上がりにアイスもあるからぁ。早く入っちゃいなさいよ〜」

 そう、私は甘いものに目がない。食欲に大変忠実な女なのだ。

 「はぁい」

 そう返事をしたと同時に、ベッドから跳ね起きてい急ぎ入浴の準備を整える。やはり母はよく分かっている。

 階段を駆け降りて風呂に急ぐ。目の前に人参があると一気にやる気スイッチが入るというものだ。ふと横目にリビングを見ると兄が友達の正志君とテレビゲームをして遊んでいた。今度混ぜてもらおうかな。あ、いけない、アイスが私を待っている。

 そうして私はささーっとシャワーを済ませて、母に湯船まで浸かりなさいっ‼︎と怒られ、渋々湯船に浸かった。

 え?もっと細かく教えろだって?レディーになんてことを言いますやら。それに今回はそんなことを話している暇はないんですよ。今までのは軽い導入なんですから。

 そう、私がお風呂をあがった後に事件は起こったのです!ルンルンの私を一気に絶望の淵へと叩き込むくらいには大きな事件がね。



 私は髪の毛を乾かすのもそこそこに、風呂場から出て一直線にキッチンの冷凍庫へと向かった。ルンルンで冷凍庫を開けてお目当てのアイスを探す。普段は一番上に置いてあるのだが、見当たらなかった。そのまま下の方もかき回してみるも、どこにもいない。

 「お母さん、アイスどこ?」

 「冷凍庫のいつもの場所。一番上に置いてあるでしょ」

 遠くで洗濯物を畳んでいる母に聞くも返ってきたのはそっけない返事。しかも私の一筋の希望を打ち砕くような言葉だった。

 ない。どこにもないっ。私の唯一変わらない楽しみがっ‼︎

 「これは事件だっ!」

 そう叫ぶと、洗濯物を終えたのか母がキッチンへと戻ってきた。

 「何騒いでるのよ。あと冷凍庫開けっぱなしにしないでよ」

 「お母さん、冷凍庫のアイスが消えたのっ!これは大事件」

 「もう、大げさねぇ。きっと下の方に埋もれてたりするわよ」

 「そんなことないって、ちゃんと下まで見たもん」

 「おいおい、何騒いでるんだ?」

 私と母が言い合っていると、父と兄がやって来た。父の職業は作家で、超有名ってほどでもないけど、まぁ食べていけるくらいには売れている。兄は県内でも有数の進学校に通う天才で、楽天的で飽き性な私とは正反対だ。まぁちょっぴりお茶目なところもあって、そこが兄と私が仲が良い理由なのだが。

 兄はさっきの友達と遊んでいたままで、まだ制服だった。兄に良く似合うシンプルで洗練されたブレザーとズボン。くそうこのイケメンお兄ちゃん様め。

 「あ、二人共私のアイス知らない?お風呂上がりに食べようと思ってたのにないんだけど」

 「うーん、知らないなぁ。ちゃんと下の方まで確認したのかい?」

 「だからちゃんと見たって!」

 「そうはいってもねぇ」

 父と兄はお互い顔を見合わせて困ったような笑みを浮かべる。そうなるとだんだんとバツが悪くなってくる。

うーむ、どうしたものか。そう思っていると兄が私の頬を持ってもちもちしだした。

 「むぅ、ほにいちゃんにゃにするにょ」

 兄を睨みつけながら抗議する。が、兄はその手を動かしたまま離してくれない。むぅ。

 「ほら、そんないじけるなって。今から買ってきてやるよ」

 「赤城のチョコバーで」

 「はいはい、分かったって」

 兄は呆れながらも私のお願いを聞いてくれた。

 しかししばらく待たなければならない。お風呂上がりの冷を欲している中ではかなりきつい。なので気を取り直して冷蔵庫にあるミルクティーを取り出そうとした。

 「え?なんでないの」

 冷蔵庫のどこにも、ミルクティーのペットボトルはなかった。ありえないっ!しかもいつも飲んでいるただの市販品ではない。お高いお店で買った紅茶を淹れて冷やしておいた特別製なのだ。私のだって母にも兄にもしっかり伝えておいたのにっ。

 「あ、分かったぁ!きっと泥棒が入ったんだ」

 「こら、縁起でもないこと言うんじゃありません」

 うっ。母に怒られた。怒りたいのはこっちなのに。私のミルクティーとアイスを返せっ!

 仕方なく麦茶を飲む。

 くぅ〜、キンキンに冷えてやがる。

 そしてコップを流しにおこうとした時、ある違和感に気づいてしまった。いつも生ゴミがまとめられている三角コーナー。そこにアイスの棒が、ひょこっと突き刺さっていたのだ。

 大部分が玉ねぎやにんじんの皮などに隠れていて気づきにくかったが、いざ見つけてしまえばその違和感の正体は明らかだった。

 これは確実に事件だ。絶対に誰かが食べたのだっ‼︎

 「ねぇお母さん、私がお風呂入ってた時ってずっと洗濯物畳んでた?」

 「そうねぇ、キッチンでお皿洗ってから、先に二階で掃除してから降りてきたわ」

 「だいたいいつぐらいに降りてきた?」

 「確か浩一のお友達が帰るタイミングだったから……いつ頃かしらねぇ」

 「分かった、それだけ分かれば十分だよ」

 私はそう言ってキッチンの蓋付きのゴミ箱を開けてみた。

 そこには私の予想通り、底にミルクティーと思わしき液体が数滴残った空のペットボトルがあった。これで大体の予想はついた。ついでに私の愛しきアイスとミルクティーを掻っ攫って言った犯人も。

 「お父さん、お父さんはさっきまでなにしてたの?」

 そう問うと父は少し焦ったような顔をして答えた。

 「あ、いや今日は外で担当者さんと話をしてきて、帰ってきたのが大体30分前かな」

 なるほど、やはり予想は正しそうだ。私がお風呂に入り始めたのが今から約40分前。30分ほど入っていたから、やはり辻褄は合うし、一番しっくりくる。そしてポケットに入っていたスマホが震えた。

 「なるほどね、どういうことか全部分かった」

 私がそう呟くと、父の肩が少しビクッと震え、謝りだした。

 「ご、ごめんアイスは俺が食べちゃって……」

 「いいよお父さん、嘘つかなくて」

 私の言葉に再び父が反応し、そして肩をすくめつぶやいた。

 「まじかぁ、本当に全部分かったの?」

 「もっちろん!伊達にお父さんの娘やってないからね」

 私はそう返し、買ってもらうアイスを増やしてもらうべく兄へと電話をかけるのであった。



 約10分後、兄が申し訳なさそうにコンビニのレジ袋を引っ提げて帰ってきた。

 「はい、ご注文のチョコアイスバーだ。お詫びの印に10本買ってきた」

 中を見ると、大量のチョコアイスがあった。早速袋の中から一つ取り出して食べる。やっぱりお風呂上がりにはこのアイスが一番だ。チョコレートアイスでありながらも氷混じりのタイプなので食感はややさくさくとしたもので、それでも味は濃厚なチョコレートとほのかに香るピーナッツペーストが見事に調和していてやっぱり最高だ。少し待たされた分、いつもより感慨深く、そして美味しく感じる。というか、謎解きをした後だからだろうか。頭を使った分、アイスの糖分が非常に心地よかった。

 「お前、電話越しで全部分かったって言ってたが、どうやって分かったんだ?その、父さんも俺も割と……」

 「割と本気で隠したつもりだったのに、でしょ?」

 兄はびっくりしながらも、私の言葉に頷いた。うむ、くるしゅうない。私の天才的な推理を披露してあげようではないかっ!

ちょっと調子に乗りながらも、兄達の疑問を解消させるべく口を開いた。

 「まずキッチンの三角コーナーね。あれは分かりやすかったわ」

 兄がぎくっという擬音がまさにピッタリ合うような反応をした。やはり兄としてはうまく隠していたつもりだったらしい。

 「あそこに二本分の棒が刺さっていたことでもう分かったわ。てか、紅茶のペットボトルもそのままゴミ箱に捨てるのは迂闊すぎだよ。お兄が買い物行くついでに捨てて来て貰えばよかったのに」

 父に目線を向けると、やや斜め下を向いてバツが悪そうな顔をしていた。ふむ、この二人は嘘をつくのにとことん向いていない。しかしただ謝らせたままでは私も気分よくアイスを食べれないというものだ。

 「別に私全然怒ってないって。だってほら」

 そう言ってスマホの画面を二人に見せた。そこに写っているのは先ほど正志君から届いたライン。「あの紅茶和葉ちゃんのだったんだね、飲んじゃってごめん!」そう書かれていた。

 肩の力が抜けたように二人とも椅子に座り込んだ。まさか味方から密告されるとは思っていなかったらしい。

 「別に素直に言ってくれたらよかったのに。遊んでいる二人にお菓子としてお父さんが出しちゃったって」

 「いやぁ、和葉が結構怒ってたから、言うに言えなくて……」

 おや?どうやら私にも落ち度があったらしいぞ?

 そうとなっては仕方がない。私は袋からアイスを三本取り出して、家族に一本ずつ渡した。

 「ほら、これあげるから。仲直りっ。ねっ?」

 私渾身のウインクが炸裂し、少し空気が和らいだ。私もそのまま袋からもう一本アイスを取り出して食べる。

 うん、やっぱり家族で食べるのが最高のスパイスになるものだ。そう思いながら、私たちはシャクシャクとアイスを食べ進めるのであった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。よければ感想、レビューなど投稿の励みになりますのでよろしくお願いします。m(_ _)m

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