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12/12全話完結【ランキング32位達成】累計3万3千PV『異世界不動産投資講座~脱・社畜28歳、レバレッジで人生を変える~』  作者: 虫松
第十一部 空の世界で投資物件編

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第5章 「空中裁判バトル ― 空は誰のものか」

雲層都市レテンシア中央空域。


黄金で造られた巨大な円環がゆっくりと回転している。

その内部には、雲を固めて作られた空中法廷ソラ・コートが浮かんでいた。


審議が始まると同時に、雷のような声が響く。


「本件! 原告、スカイ=ハリケーン!!!」


原告席でスカイが拳を叩きつける。

風圧で傍聴席の羽根族が吹き飛びそうになる。


「地上の人間に空の土地を買わせるとは何事か!

 浮遊権は空の民だけのもの!!

 地上人の購入を禁止しろ!」


対する被告席。

タクミは静かに座り、横には凛と立つミラ。


その向かいに座るのは

黒ローブをまとったスカイ側の弁護士、ダンシュケル。

魔力で編まれた書類を山のように積み上げている。


空の裁判長が宣言する。


「弁護側、主張を述べよ。」


ミラが一歩前へ出る。

その瞳は真っ直ぐで、魔法陣の光を反射して宝石のように輝いていた。


「まず結論から言います。

 空の土地建物は、地上人であっても購入可能です。」


ざわあああああ!!


傍聴席が揺れ、鳥人族の翼がざわめき、天使人が驚愕の声をあげる。


ダンシュケルが立ち上がった。


「異議あり!!

 空層自治法第22条、“非空層民の無制限購買は原則禁止”!

 これは空を守る法律だ!」


ミラは落ち着いた声で返す。


「ええ、その通りです。

 しかし、同法第23条、“安定浮遊に寄与する者の購入は例外とする”。」


ダンシュケル

「ぐっ……!」


ミラはタクミの修復実績を魔法映像で映し出す。

沈下島を安定させ、魔導橋を復元し、住民のインフラを守った軌跡。


「タクミ様はもはや“空の社会基盤を支える人物”です。

 例外規定に完全に適合します。」


法廷がどよめく。


ダンシュケルは冷笑し、指先で魔導書を弾いた。


「では聞こう。

 地上の人間が空の不動産を買い漁ったらどうなる?」


空に巨大な幻影魔法が浮かぶ。


地上の金持ちが浮遊島を大量購入

→ 空の民が住む場所を失い、空中家賃が高騰する悪夢の図


ダンシュケル

「これは“投機買い”。

 実際に地上世界では問題になっただろう?」


その言葉に傍聴席が揺れる。


ミラが返そうとした瞬間、タクミが立ち上がった。


タクミ

「投機買いは絶対にさせない。

 俺は投資家だ。

 投機と投資の違いは“責任を持つかどうか”だ。」


彼は手を広げ、光の魔法陣を展開。


《浮遊権譲渡監査魔法》


「俺が空の不動産を買う時は、街を良くするためだけだ。

 島を沈めない、橋を崩さない、住民を追い出さない。

 それを証明できる。」


ミラ

「タクミ様は“修繕義務付き購入宣言”を提出できます。

 これは地上でも最も住民保護が強いモデルです。」


観客

「え……そんな制度が……?」

「むしろ空の行政より優しい……」


「黙れぇぇぇ!!貴様らは、一生。地上の土に住め!」

スカイが咆哮。

風の拳がタクミへ迫る。


だが裁判長の金槌が空を裂いた。


「沈黙!!

 ここは法廷だ!!」


スカイは押し返され、壁に叩きつけられる。


観客が息を呑む。


判決

裁判長が羽根を広げ、宣言した。


「地上人タクミによる空中物件購入

 “条件付きで許可”とする!!」


条件が天に刻まれる。


・空中インフラ維持の義務

・投機目的の購入禁止

・島の安定魔力の維持責任

・住民保護の優先


裁判長

「タクミは空の安全に寄与する存在である。

 よって例外規定を適用する。」


どよめきと拍手が空法廷を満たす。


スカイは悔しさに拳を震わせた。

「タクミ……お前を認めない……!」


「無理に認めてもらわなくてもいいよ。」

タクミは笑った。


「空の民の住民が笑って暮らせれば、それで勝ちなんだ。」


雲層に光が差し込み、裁判は幕を閉じた。


ワンポイント解説


■外国人に土地・建物の購入を禁止している国は複数存在する。

現実世界でも、外国人の不動産購入を完全または部分的に制限している国は実際にあります。

理由は「投機防止」「国家防衛」「資源の保護」「住民価格の高騰抑制」など様々。


代表的な例を挙げると


■① タイ(Thailand)

外国人は土地を購入できない

ただし、コンドミニアムの一部(外国人枠)などは購入可能

企業名義での土地取得も厳しく制限

→ 自国民の土地を守るための政策


■② フィリピン(Philippines)

外国人は原則、土地の所有が禁止

ただし、コンドミニアムの“特定割合まで”は購入可(全体の40%以内)

フィリピン国籍の配偶者との共同名義も制限あり

→ 土地は国民の生活基盤という考え方から保護


■③ インドネシア(Indonesia)

永久所有(Freehold)は外国人は禁止

Long-term lease(長期賃借)での利用は可能

→ 所有ではなく“利用権”による保護を採用


■④ 中国(China)

外国人の購入自体は可能だが

利用制限・所有期間・現地居住条件などの規制が多い

→ 実質ハードルが高い国の一つ


■⑤ スイス(Switzerland)〈一部地域〉

外国人の別荘購入が厳しく制限

特定地域では購入不可

→ 観光地での価格高騰を防ぐため


◆ なぜこんな規制が生まれるのか?

理由1:投機買い(Speculation)防止

外国資本が一気に買い占めると

土地価格が“住民の生活レベルを越えて暴騰”するため。


理由2:国家主権(National Security)

土地は防衛やインフラにも関わるため、

国人所有を制限するのは自然な政策。


理由3:資源保護

土地を資源として捉え、

“自国民のために残す”という主義。


スカイ=ハリケーンの主張

「空の土地は空の民だけのものだ!」

は、リアル世界の“外国人不動産購入禁止政策”そのもの。


一方、タクミ側の

「投機ではなく、街を守るための購入なら可能」

という主張は、現実の例外規定(公共性の高い外国企業などに認められるケース)に近い構造です。

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