第4章 「空の税と空の利権 ― 雲層行政の闇」
雲層都市
それは地上の常識が一切通用しない、空の利権が渦巻く魔導行政の最前線。
今日も雲海は静かに揺れ、ぱっと見は平和そのものだ。
だが、ミラは眉間に皺を寄せていた。
「……やっぱり出てるわね。浮遊権の乱れ。」
ミラは魔導計測器を展開し、雲層に刻まれた魔法陣のひび割れを可視化した。
青い光が地図の上に走り、ところどころに赤い亀裂が浮かび上がる。
「この赤い部分……行政がわざとメンテを後回しにしてる。
空の税を上げるために住民の不安を煽ってるわね。」
「また利権か……」
タクミはため息をついた。
空の街の“浮遊権”は土地そのものだ。
それが不安定になれば、住民は高い税金でも支払わざるを得ない。
「放っておけば、この街は沈むわ。
行政は『地上へ移転させて、新規入植者から金を取る』つもりね。」
「そんなの住民が可哀想だろ。俺が法的魔法で保護する。」
タクミは両手を合わせ、雲の魔力を拾い上げる。
魔法陣が展開《天空権利保護法陣》。
空の街の全住民の“浮遊権”をロックし、行政の操作を封じる魔法だ。
淡い光が街全体に広がった。
「よし……これで、権力者が勝手にいじることはできない。」
ミラはふっと笑った。
「タクミ様、政治家にむいてます。」
「やめてくれ……俺はただの、不動産投資家だよ。」
その時
突然、空気が震えた。
ゴゴゴゴゴ――!!
雲の海を突き破って巨大な疾風が旋回し、竜巻の中心から一人の男が降り立つ。
銀髪を後ろで束ね、マントをはためかせた男。
背負った魔導翼から常に旋風が吹き荒れている。
スカイ=ハリケーン。
「空の領域は地上人のものにはさせない」と叫ぶ過激派だ。
「タクミィィィィ!!!ゆるさーーん!!」
雷鳴のような声が空を揺るがす。
「地上の人間に空を買わせるなと言ったはずだ!
浮遊権の“売買を禁止”にしろ!!
空は空の民のものだ!!貴様を控訴する!」
タクミは目を細める。
「また面倒な相手、だな……。」
ミラがささやく。
「タクミ様、どうしますか相手は私たちを訴えるみたいです。」
スカイ=ハリケーンは空中で拳を構える。
その拳は雲をえぐり、風圧だけで建物を揺らす。
「管理も、行政も、法もいらん!
空は“力”のある者が守るべきだ!!
それが空の掟だ!!」」
「いや、守るのは住民だ。あんたの拳じゃなくてな。」
タクミは一歩前に出る。
魔法陣が彼の足元で回転し、雲層と街が彼に呼応する。
空の利権をめぐる、雲層の闇を暴く戦いが今、幕を開ける。




