第8章 「空都市レテンシア ― 群雲に浮かぶ神々と帝国」
雲の海を割って進む塔の先端が、ついに“空の大地”へ突き刺さる。
その先に広がるのは、無数の“浮遊島”が階層状に連なった巨大都市群――
【天空都市レテンシア】
五十の浮遊島を束ねた空中連邦、その中心にある“黄金の環”。
浮遊島はそれぞれ独立した魔力炉を持ち、
大小の島が鎖のように連なって巨大な都市圏を形成していた。
・畑の島
・住居区画島
・飛行商船の港島
・魔導研究の島
・貴族街の黄金島
・そして、都市の頂に浮かぶ 「神々の中枢島ヘリオポリス」
レテンシアはまさに“空の国”そのものだった。
しかし、都市には異様な緊張感があった。
空中警備隊のホバードラゴンが頻繁に巡回し、
浮遊島間を繋ぐ魔導橋はどこも封鎖の警告が点灯している。
住民たちのささやきが耳に入る。
「最近、神々の使者がやけに来る……」
「アポロンの“管理命令”が増えてるって噂よ」
「『光の税』を払わない島が沈められたって……」
ディアナの顔色が変わった。
「タクミ、ここ……おかしいよ。
まるで“神が治安を管理する都市”みたい」
タクミは静かに答える。
「神々が治安を担う都市はろくな方向にいかない。
人の暮らしと投資のバランスが崩れた都市は、必ず歪む」
黄金島のさらに上、巨大な白い塔を中心に展開した光の都市。
そこに棲むのは、かつて天界にいた“半神族”。
都市を統べるのは、
太陽の神アポロン(現世降臨体)
光の衣をまとい、神殿の頂で都市を監視していた。
彼の目的はひとつ。
「レテンシア全島を“神々の理想都市”に作り替える」
資本も権利も住民の意思も無視し、
“最も効率の良い都市”にするためなら島ごと沈めることも厭わない。
アレックスは神殿兵に囲まれた商人を見て、たまらず声を上げた。
「お前たち、商人に何をしている!」
兵士は冷たく答えた。
「光の税を滞納した島の住民です。
神の都市に相応しくありませんので……“再配置”します」
アレックスの拳が震えた。
「それは……ただの暴政だ!」
タクミは一人、レテンシアの魔力循環図を見つめていた。
「……魔力流の偏りが大きすぎる」
浮遊島を保たせる“天空魔力導線”がねじ曲がっている。
島のいくつかはすでに沈み始めていた。
原因は、神々が勝手に再開発のため魔力ラインを引き直していたこと。
「インフラを素人がいじるな……
都市が壊れる……!」
黄金島の中央広場で、アレックスとタクミは立ち止まる。
アレックスが言う。
「タクミ……俺は神々の暴走を止める。
アポロンと戦うために、上の神殿へ行く!」
タクミは静かに首を振った。
「俺の仕事は違う。
都市を“沈ませないこと”だ」
「……!」
「アレックス、お前は神殿へ行け。
神の力と直接ぶつかるなら、お前たち勇者パーティーの役目だ」
「じゃあタクミは!?」
「俺たちは下層島に降りる。
魔力導線を補修し、沈下を止める。
レテンシアの何万もの住民を救うのは、俺の戦場だ」
アレックスは拳をぶつけた。
「……分かった。
どっちが正しいとかじゃない。
どっちも必要なんだな」
タクミも拳を当てる。
「お前には神に勝ってもらわないと困るからな」
勇者アレックスのパーティー
→ 天空最上層「ヘリオポリス」へ
→ アポロン率いる半神都市との戦争へ
タクミのパーティー
→ 下層沈降島群へ
→ インフラ崩壊と浮遊島沈下を止める救出戦へ
アテネが最後に言う。
「どうか……どちらも、生きて戻ってください」
二つの影が別々の方向へ走り出す。
天空都市レテンシアの運命は、
二組のヒーローに託された。
✨第十部 古代魔導塔編 完✨




