第1章 「隣の街で居抜き物件を下見」
《ゴールドリーフ・イン》が順調に満室経営を続ける中、タクミは次の目標に向けて動き出していた。
「次の一歩は“賃貸居抜き物件”だ。買うより、借りて投資する物件数を増やす。」
彼の狙いは、借りて運営し、資金を温存しながら拠点を増やす“レバレッジ型経営”。
前回の成功で得た信頼と実績をもとに、今回は隣の街で新たな旅館物件を探すことにした。
最初の候補:駅前の廃業ホテル(1等地)
タクミは駅前の大通りにある廃業ホテルに足を運んだ。
建物は立派で、交通アクセスも完璧。しかし、提示された賃料と保証金を見た瞬間、タクミは首を振った。
「ここじゃ資金が持たない……。初期コストを抑えたい俺の戦略に合わない。」
この物件は断念することにした。
高額な賃料と初期費用は、まだ拡張途中の資金管理を圧迫してしまう。
次の候補:川沿いの旅館(2等地)
タクミが次に訪れたのは、街の外れ、川沿いに佇む古びた旅館。
駅からは少し離れているが、周囲は静かで自然に恵まれ、旅館としてのポテンシャルは十分だった。
メリット
家賃・保証金・仲介手数料が駅前の半分以下
競合が少なく、潜在的な顧客を取りやすい
川沿いの景観を活かした宿泊プランが可能
デメリット
人通りは少なく集客に工夫が必要
広告宣伝費や回転率の工夫が必要
地元常連客の獲得には時間がかかる
「よし……ここなら、低コストでリノベーションして、冒険者向けの宿にできる。」
タクミは決断した。川沿いの2等地旅館を賃貸居抜き物件として運営する。
これにより、初期費用を抑えながら拠点を増やすことが可能になる。
タクミは今回も、費用を抑えつつ最大限の収益を狙う戦略を練った。
前旅館の居抜き店舗を活用
前テナントの設備・備品をそのまま使える可能性がある
ただし「造作譲渡契約」が必要な場合あり
内装工事を自分たちで行う
労力はかかるが、業者委託より大幅節約可能
中古設備・備品を活用
厨房機器や家具を中古で調達し、コストを抑える
出資者や融資を活用する
前回の成功を評価した梅ばあさんから、担保付き融資を引き出す
根抵当権付きの融資でリスクを分散しつつ資金調達
タクミは川沿いの2等地旅館の賃貸契約を締結し、次の拠点確保に成功。
浮いた資金はリノベーションや広告、短期宿泊プランの導入に回せる。
「これでまた、レバレッジ型経営が一歩進む……!」
こうして、タクミの異世界宿屋帝国の拡張計画は次の段階へと進む。
ワンポイント解説
■「造作譲渡」とは?
造作譲渡とは、
店舗や旅館などの賃貸物件で、前のテナントが残した内装・設備・備品を譲り受ける契約のことです。
ポイント
居抜き物件でよく使われる
内装・厨房設備・家具などをそのまま利用できる
新たにゼロから作るより初期費用を大幅に節約できる
譲渡契約が必要
賃貸契約には含まれないことが多い
代金(譲渡料)を支払って正式に譲り受ける
注意点
前テナントの評判やイメージが残ることがある
設備や造作の老朽化で修理費がかかる場合がある
業態が違う場合はレイアウト変更が必要になる
例
前の旅館のベッド・浴槽・厨房機器をそのまま借り受けて使用
内装や看板もそのまま利用し、開業準備を短期間で済ませる
まとめ
「造作譲渡」は前テナントの造作物を有料で引き取ります。
物件の魅力を最大限活かし、初期費用を抑えつつスピーディに開業するための仕組み」です。




