第2章 「魔導塔の構造調査 ― 古代の耐震技術」
塔の内部へ足を踏み入れた瞬間、
タクミたちは全員、思わず息を呑んだ。
壁はひび割れ、魔力の光はところどころで瞬き、
床はわずかに波打つように揺れている。
アレックス
「……これ、完全に“欠陥住宅の内覧”じゃん……」
ブレイン
「お、おれ、こういう揺れは苦手だぞ!
水面に立つよりこわいんだが!?」
ヴァン
「フッ……塔が呻いている。
時に抗い、運命に歪む――哀れな巨人の姿だ」
アレックス
「難しく言うなバン!要するに壊れてるってことだろ!」
リリィ
「でも……魔力が乱れすぎています。
このままだと崩れ落ちますよ?」
エリオ(魔力を観測しながら)
「内部の“魔力柱”がほとんど死んでるね。
負荷を分散できていない」
タクミ
「やっぱりか。外の傾きは“症状”にすぎない。
原因は――内部構造の魔力系統の断絶だ」
その横で、敏腕秘書ミラが古代魔導塔の壁へ手を当てる。
ミラ
「……この塔、本来は“免震構造”です」
「下層に配置された《揺動の心臓》が
魔力の揺らぎ(地震に相当)を吸収していました」
アレックス
「免震!? この塔、そんなハイテクだったの?」
ミラ
「しかし今は……心臓部が完全停止。
そのせいで魔力振動が直撃し、塔全体が歪んでいます」
タクミ
「つまり――“古代の耐震システムの故障”だな」
エリオ
「塔が傾いた原因の8割はそれだね」
ヴァン(目を細めて)
「沈黙した心臓を蘇らせるには……深淵の核へ赴くしかない。
そこは、闇と火が混じる禁断領域……」
ブレイン
「待て待て!怖がらせるな!
おれ、そういう深淵系は足がすくむんだ!」
カーミラ
「……行く。」
アレックス
「カーミラさんノリノリじゃない!?」
ミラ
「心臓部までのルートを地図に投影します。
塔の中心に“動力核室”があります。
そこに《揺動の心臓》が眠っているはず」
タクミ
「よし、行くぞ。免震システムを再起動させるんだ」
リリィ
「塔の揺れがひどいです……!急ぎましょう!」
エリオ
「魔力圧が変動してる。塔そのものが“落ちようとしてる”!」
ヴァン
「崩壊の刻限は近い……
だが、闇を越える者にのみ光は開く」
アレックス
「だから難しく言うなっ!!」
塔は不気味に唸りながら揺れ続ける。
古代文明が遺した最強の免震装置、
《揺動の心臓》。
その停止した心臓を蘇らせるため、
タクミたちは塔の最深部へと進む。
ワンポイント解説
■耐震補強と耐震工事とは?
建物を“地震に強くするための工事”を総称して
耐震補強・耐震工事と呼びます。
しかし、この2つには微妙な違いがあります。
1. 耐震補強とは?(機能を高めるための対策)
建物が地震の揺れに耐えられるようにするため、
新しい部材を追加したり、弱い部分を補強したりする工事の総称。
例:
壁を追加して “耐力壁” を増やす
柱や梁を鉄骨で巻く
基礎を補強する
金物(接合部)を強化する
ブレース(筋交い)を入れる
要するに、「地震に強い身体に鍛え直す」ような作業のこと。
2. 耐震工事とは?(実際の工事プロセス全体)
一方で「耐震工事」は、
耐震補強を含む“工事全体のこと” を指します。
例:
現地調査
補強設計
補強の施工
工事後の確認・検査
耐震工事=耐震補強+工事手続きの全部。




