第8章 「境界線が消えた争いの土地」
魔のアトランティスの土地は広い。
しかし境界杭は一本も見当たらない。
風が草むらを揺らし、広大な敷地はただ曖昧に揺れているだけだった。
タクミ
「これは……完全に“隣家と揉めてるパターン”だ!
聞いた話だと、境界杭が消えてるだけで、隣家と1年間争った事例もあるらしいぞ」
勇者アレックス
「えぇ!? そんなことで揉めるの?」
戦士ブレイン
「うちの町内でも、木の枝が境界線超えただけで裁判沙汰になったらしいぞ!
境界は意外と地雷だな……」
ヴァンが腕を組み、夕陽を背にして中二病風に語る。
「フッ……境界とは、単なる土地の線にあらず。
人の欲望が作り出す“幻影の戦場”なのだ……!」
アレックス
「黙れ、中二病!」
カーミラは冷静に周囲を見渡す。
「杭が抜かれている場合、無断使用で隣家から訴訟される可能性もある。
境界線は守らねばならぬ“魔法のライン”だ」
アテネが穏やかに語る。
「法律では境界不明地は“境界確定測量”が必須です。
放置すると土地の売却や建築許可にも影響します」
僧侶リリィが手を挙げる。
「私も聞いたことがあります。
隣の家が塀を少し越えて庭を使っていたせいで、
10年以上揉め続けた家族もいるんですよね……」
魔法使いエリオ
「ボクの知り合いは、境界杭がずれてるせいで車の駐車場が半分減ったとか。
それで毎日ケンカしてた……」
ミラ
「そうなると、売却や融資も難しくなります。
銀行は“境界不明=リスク大”と判断することが多いです」
ここでミラが冷静に現場を査定する。
「タクミさん、私が現状分析します。まず、境界線不明の問題点は以下の通りです」
隣家との所有権トラブルのリスク
杭がなく、土地の利用範囲が不明確。
すぐに隣人と小競り合い・裁判沙汰になる可能性。
融資・売却の困難
銀行評価が低く、ローン審査が通らない。
売却時も測量と法的手続きが必要になり、追加費用が発生。
境界確定測量のコスト
公的に線を決めるための測量が必要。費用は数十万~数百万円。
投資価値としてのリスク
土地の価値は法的に不確定。ハイリスク・ローリターン。
トラブルが長期化すると収益性が下がる。
タクミ
「なるほど……ここ買ったら、後で裁判沙汰か……」
ヴァン
「フッ……境界の消えた地、まさに“混沌の宴”。
勇者よ、恐怖を感じよ……!」
ブレイン
「よーし、俺の剣で杭を立てれば解決……とか無理か!?」
アレックス
「ギャグで済まそうとするな!」
カーミラ
「……無意味」
リリィ
「ここは私たちが踏み込むべき土地ではないみたいですね」
エリオ
「ボクも、触らない方が無難だと思う」
ミラ
「まとめます。投資価値は極めて低く、後々のトラブル必至。
ここは現時点で購入を推奨しません。
次の物件に進みましょう」
アテネが静かに頷く。
「神も同意。ここは試練として経験を積む場所です。さあ、次へ行きましょう」
ワンポイント解説
■官民査定と民民査定とは?
1. 官民査定(官民評価)とは?
意味:土地や建物の価値を、国・自治体(官)と個人・企業(民)双方の視点で評価すること。
用途:土地収用や公共事業の補償額算定
災害時の被害評価
特徴:公的価格と市場価格の両方を考慮
境界不明や測量不足の土地では、官民査定の差が大きくなることがある
例:ある境界不明の土地を役所が「公的評価1000万円」としても、民間投資家はリスク込みで「500万円」と査定する場合がある。
2. 民民査定(民間評価)とは?
意味:土地や建物の価値を、民間同士の取引・市場価格に基づいて評価すること。
用途:不動産売買
投資物件の購入判断
特徴:市場での実勢価格や過去取引実績を基準
境界線トラブルや測量不明は減額要因となる
例:隣家と揉めている境界不明土地の場合、民間査定は「リスク込みで大幅減額」となることが多い。




