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12/12全話完結【ランキング32位達成】累計3万3千PV『異世界不動産投資講座~脱・社畜28歳、レバレッジで人生を変える~』  作者: 虫松
第九部 魔のアトランティス編

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第5章 「事故物件の濃厚すぎる気配」

次にタクミたちが案内されたのは、

古ぼけた二階建ての一軒家だった。


だ―が、玄関の前に立った瞬間から空気が変わった。


スゥ……ッ


ドアの隙間から、説明のつかない“冷気”が流れ出る。


勇者アレックス

「いやいやいやいや……絶対“出る”やつじゃん!!」


タクミ

「……ここ、“告知事項あり”。

 しかも“複数回”だ。」


アレックス

「何回も死んでるのは、あかん!!」


ミラ(タブレットを確認しながら)

「死亡事案が三回、失踪者が一名……

 周辺住民の証言では“深夜に窓を叩く音”と……

 “誰もいないはずの部屋の明かり”が――」


アレックス

「もう帰ろう!? 今日の内見ここで終わりでよくない!?」


ヴァンは玄関に手をかざし、赤い瞳を細めた。


ヴァン

「……フッ。

 闇が濃い。六つの影が蠢き、

 怨嗟の波動がこの家に縛りついている……」


アレックス

「やっぱり見えてるんだ!?」


タクミ

「ヴァン、そういうこと言うと本当に客つかないんだよ!!!」


ヴァン

「安心しろタクミ……

 我が“永夜の魔眼”がある限り、

 どんな亡霊も我らに触れることすら叶わぬ……

 クク……震えるがいい、漂泊せし彷徨魂どもよ……!」


アレックス

「やめろってば!!!」


ミラ(淡々)

「……タクミさん。

 亡霊案件は不動産価値の下落が激しいので、

 投資効率としては大幅にマイナスです。」


タクミ

「いやそこは冷静なんだねミラさん!?」


カーミラは無言で靴を脱ぎ、家へ入る。


タクミ

「えっ、カーミラさん入っちゃうの!?」


カーミラ(廊下の奥を見ながら)

「……気にしない。」


タクミ

「気にしてぇぇぇ!!」


カーミラ(無表情)

「……亡霊? あれば。……殴る。」


アレックス

「物理!? 幽霊相手に!?

この人、勇気ありすぎでしょ……」


魔法使いエリオ

「魔力反応はあるけど……“攻撃性なし”。

 ただの残留思念だね。

 僕の結界張れば大丈夫だよ。」


僧侶リリィ)

「魂浄化の歌、歌うね♪」


ぽわぁぁ……ん


淡い光が家の中を満たし、冷気が少し和らぐ。


ヴァン

「フン……浄化の光か。

 闇が薄まるのは愉快ではないが……

 亡霊どもも今は牙を失ったようだ。」


アレックス

「やっとマシになった……!」


ミラ

「ちなみに事故物件は家賃が安いため、

 “割安で住みたい層”には一定の需要があります。

 しかし再販価値は低く、出口戦略が弱いのが難点です。」


タクミ

「不動産の説明が正確すぎて逆に怖い!!」


最後にタクミはドアを閉め、深く息をついた。


タクミ

「……次からは、せめて“生者が住んでた家”にしようね?」


ヴァン

「クク……タクミ。

 この世界に“完全なる生者の家”など存在しない。

 すべての家は、過去の影を宿しているのだ……」


アレックス

「その言い方が一番怖いわ!!」


ヴァン(さらに調子に乗り始める)

「フフ……闇の帳が下りる。

聞こえるか……? この“嘆きのハミング”……!」


タクミ

「聞こえない! ていうか聞こえたら僕も逃げる!」


アテネ

「タクミ殿、床が妙に冷たいです。これは俗に言う“心霊温度”という現象でしょうか?」


タクミ

「いや、ただの日当たり悪い物件だよ! ちゃんと理性で見て!」


ヴァン(わざとらしく手をかざし)

「ほう……魂の残り香が、まだこの間取りに刻まれているとは……

これはもう、“住む者を選ぶ家”だな。」


アレックス

「選ばれたくないよ!!」


こうして、

“事故物件”の呪気を振り払いながら、

一行は次の物件へと向かった。


ワンポイント解説


■事故物件(心理的瑕疵物件)とは?

事故物件=“人が亡くなった事実”がある不動産のこと。

事件・自殺・孤独死などが該当する。


告知義務は一般的に3年が目安

国交省ガイドラインでは、原則“おおむね3年”が一つの基準。


ただし

孤独死など自然死に近いものはもっと短くなることも多い

殺人など特殊な事件は10年以上でも告知される場合あり

地域・業者・取引形態によって大きく差がある


つまり、「10年間は必ず告知」という明確ルールはないが、

実務的に“事件性の強いものは長く告知される”という傾向がある。


投資物件としての価値は?


■メリット

価格が通常の20〜50%ほど“激安”になる

利回りが非常に高くできる

心理的瑕疵が気にならない層には安定して貸せる

(外国人、学生、短期滞在、出張族など)


■デメリット

入居者募集で苦戦しやすい

リフォームしても“過去”は消せない

告知義務が残る限り、売却時も買い叩かれやすい

=短期で利回り重視の人向け。

長期で資産価値を育てたい人には不向き。

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