表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ランキング32位達成】累計1万7千PV『異世界不動産投資講座~脱・社畜28歳、レバレッジで人生を変える~』  作者: 虫松
第一部 投資家への道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/152

第8章 「借金返済、そして新たな融資へ ーレバレッジの魔法」

《ゴールドリーフ・イン》がオープンして三ヶ月。

スラムの片隅に建つその宿は、今や“異世界で最も忙しい宿屋”と呼ばれるまでになっていた。


タクミは帳簿を見つめながら、静かに微笑む。

売上は右肩上がり。客室の稼働率は……驚異の200%。


もちろん、これは単なる奇跡ではない。

彼は“時間”を分割するという戦略を導入していたのだ。


ショートステイ制度の導入


通常、宿泊施設の稼働率は「一泊単位」で計算される。

だがタクミは考えた。


「12時間の宿泊だけじゃもったいない。3時間、6時間のショートステイを導入しよう。」


昼は休憩用、夜は宿泊用。

こうして一部屋を1日で複数回転させることで、稼働率は爆発的に上昇した。


さらに、キャンセル部屋は即座に“値下げ再販”。

日当たりの悪い部屋は“訳あり特価部屋”としてギルド専用の掲示板に掲載。

その柔軟な経営は、ギルド内でも噂となり、タクミの宿は常に満室状態となった。


どんな部屋でも、空けておく時間を限界まで減らした。


その結果、毎日のように金貨がチャリンチャリンと音を立てて積み上がっていく。


客室稼働率(OCC)とは?


「客室稼働率」とは、一定期間における客室の利用状況を示す指標で、

Occupancy Rateオキュパンシー・レートとも呼ばれます。


計算式は以下の通り:

客室稼働率(%)= 使用された部屋数 ÷ 総客室数 × 100

この数字が高ければ高いほど、宿の「稼ぐ力」が強いということ。

一方で低ければ、“空室リスク”が高まり、利益は下がります。


タクミのようにショートステイ制度や特価販売などの工夫を取り入れることで、

空室時間を最小化し、売上を最大化できるのです。


ただし、稼働率が上がれば上がるほど、負担も増える。

清掃が追いつかず、客からのクレームも増えた。


「短時間でも休みたい冒険者は多い。部屋を回せば回すほど利益は積み上がる」


清掃員を3人追加し、チェックインとチェックアウトの間を最短20分に短縮。

その結果、稼働率は最大、前代未聞の350%(1日3.5回転)を叩き出した。


彼の判断は的確だった。

綺麗で清潔な宿の評価は上がり、リピーターが急増。


そしてついに。


梅ばあさんへの返済の日、夕暮れ、あの“梅庵”の戸を叩く。

奥の帳場で、梅ばあさんがいつものように金貨を指で弾いていた。


「ほう……今日はどんな用だい? 取り立てに来たんじゃないだろうね?」


タクミは無言で金貨袋をテーブルに置いた。

チャリンと心地よい音が響く。


「利子込みで、金貨十六枚。三ヶ月で完済です。」


梅ばあさんの眉がぴくりと動いた。

そして、煙草のような香草をふかしながら笑う。


「若造、やるじゃねぇかねぇ。

 あたしゃ最初から“やる男”だと思ってたよ。」


「うそつけ。」


タクミが苦笑すると、梅ばあさんは愉快そうに肩を揺らした。


「で? 今度は何を狙ってるんだい?」


「次の投資です。隣の街に、廃業した温泉宿があります。買い取りたい。」


「ほう……また金を借りるつもりかい?」


「ええ。今度は“信用”を担保に。」


梅ばあさんの目が細くなった。

そして机の引き出しから新しい契約書を取り出す。


梅ばあさんはニヤリと笑い、帳簿を開く。

「《ゴールドリーフ・イン》を担保物件として使うんだね?」


タクミはうなずいた。


「いいだろう。根抵当ねていとうを設定してやるよ。

 上限までは何度でも借りられるつまり、あんたは“信用の器”を広げたってことさ」


梅ばあさんは金貨を机の上に並べながら言った。


「借金ってのは、怖がるもんじゃない。返せる力と信用があれば、それは武器になる」


タクミは二十枚の金貨袋を閉じ、静かにうなずいた。

そして、その金貨を見つめ、静かに拳を握った。

借金とは、信頼を形に変える魔法。

そして、彼の“異世界不動産帝国”の拡張は、ここから本格的に始まるのだった。


【第一部 完】


ワンポイント解説


根抵当権ねていとうけんとは?

根抵当権とは、一定の範囲内で繰り返し借り入れや返済ができる担保制度のこと。

たとえば梅ばあさんが「上限100枚の金貨まで貸していい」と設定すれば、

タクミはその範囲内で借りたり返したりできる。

つまり、


「宿=担保」+「信用=資産」

この2つがあれば、事業拡大の資金を何度でも引き出せる!


これがまさに、異世界版・レバレッジ経営の真髄なのです。



■根抵当権が実行されると?(=担保を取られるとき)


根抵当権とは「一定の範囲で何度でも借りたり返したりできる担保制度」ですが、

もしタクミのような借り手が返済不能になった場合。

梅ばあさん(=根抵当権者)は“担保物件を差し押さえ”て売却(換金)する権利を持っています。


根抵当権実行の流れ


タクミが返済不能になる

 → 宿の運営が赤字になり、返済が滞る。


梅ばあさんが「根抵当権を実行」

 → 《ゴールドリーフ・イン》を担保として差し押さえる。


ギルドの競売人が動く

 → 宿は「競売」にかけられ、最高額をつけた者に売却される。


売却代金から返済に充てる

 → 売却金でタクミの借金が清算される。

 残金があればタクミに戻るが、足りなければ“借金が残る”。


根抵当権実行のリアルな意味


根抵当権は“便利な資金調達手段”である一方で、

「事業が失敗すれば担保を失う」というリスクも同時に背負うものです。


つまり

成功すればレバレッジで資産を何倍にも増やせる。

失敗すれば、担保を失いゼロからやり直し。


タクミの世界で言えば、

「宿がギルド競売にかけられる=夢の消失」を意味します。


梅ばあさんの言葉

「根抵当ってのは、信用の証であり、破滅の鍵でもある。“返せる者だけ”が、この魔法を使いこなせるんだよ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ