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12/12全話完結【ランキング32位達成】累計3万3千PV『異世界不動産投資講座~脱・社畜28歳、レバレッジで人生を変える~』  作者: 虫松
第八部 波乱の武道大会編

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第16章 「シュウバの涙と闇竜ネクロス。」

闘技場に立つアレックスの背から光が奔り、

白銀の翼が爆ぜるように展開した。


その姿は人ではなく

天空人セレスティアルの真形。


シュウバは、もう“生者”ではなかった。

ルシフェルの死者蘇生の禁術ネクロマンサーで蘇り、

*を憎悪と呪詛に縛られた存在《憎魔》と化していた。


黒い皮膚がひび割れ、赤い筋が全身を脈打つ。

血涙を垂らしながら、シュウバは吠えた。


「勇者ぁ……俺の親を殺した貴様が……

 なぜ……生きてる……ッ!!」


アレックスは剣を構えたまま、静かに答えた。


「……俺はお前を親を殺していない。

 だが、お前の魂は……誰かに利用されている」


「嘘をつくなぁぁ!!」


シュウバの腕が獣のように変形し、

漆黒の刃となってアレックスに叩きつけられた。


ガギィィィン!!


翼が翻り、アレックスは受け流した。

光が散り、影が飛び散る。


「シュウバ……戻れ! お前の魂は本当は……!」


「うるさいッ!俺は……もう死んだんだ!!

 もう……帰る家も、名前も……ないんだよぉぉ!!」


その叫びは、哀しいほど人間だった。


アレックスは歯を食いしばる。


「……なら俺が、お前を解放する!」


翼から蒼白い光が溢れ、アレックスの真名が響く。


「《アーク・ルーメン=アレックス》!!」


観客席でリリィが涙をこぼした。


「勇者さまの真名……!

 魂を癒し、穢れを断つ光……!」


アレックスの剣に光が宿り、

シュウバの胸元へ一直線に――


「ごめん……シュウバ……!」


閃光。


黒い憎魔の殻が砕け、

シュウバの本来の魂がふわりと姿を見せた。


「……アレックス……

 俺……やっと……思い出した……」


穏やかな笑顔だった。


「親を殺したのは……

 勇者を憎ませるための……“幻覚”だったんだな……

 あいつが……全部……」


アレックスは頷けず、震える拳を握った。


「すまない……守れなくて……」


「……ああ……

 でも……最後に、人に戻れて……よかった……」


シュウバの魂は光に包まれ、静かに消えた。


アレックスの翼が揺れ、涙が落ちた。



◇◇◇



その瞬間


地響き。

大気が悲鳴を上げる。


闘技場の真下から、

巨大な闇が昇るように浮かび上がった。


「グォオオオオオオオオオォォォォ――――ッ!!」


地獄の底を擦るような咆哮。

それだけで数百人が気絶する。


闇竜ネクロス。


全長は数百メートル。

四本の角は黒い稲妻を帯び、

鱗は闇そのもののように光を吸収する。

翼は裂けた影の布のように揺らぎ、

胸には、死んだ無数の魂がうごめいていた。


アレックスの顔が蒼白になる。


「……なんて……悪意の塊だ……!」


ネクロスの尾が地面を薙ぎ払った。


――ズゴォォォォン!!


闘技場の半分が崩れ落ちる。


アレックスは空へ舞い上がり、

翼から光弾を放つ。


「はぁぁぁああッ!!」


光弾が命中するが、

ネクロスの闇鱗は傷すらつかない。


ネクロスの口が開き、

吸い込むような黒炎が噴き出した。


「■■■■■■■■■■■――――――――ッ!!!」


アレックスはギリギリで回避する。


「くっ……防御に専念するだけで精一杯か……!」


まさに“死の神格竜”。

一対一では勝負にならない。

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