第14章 「闇竜ネクロス VS 世界を守る勇者たち」
黒き竜王ネクロスが封印より復活した。
闘技場はもはや崩壊寸前。
黒き竜王ネクロスの存在そのものが、大地をひずませ、空気を震わせる。
「来るッ!!」
勇者アレックスが叫んだ瞬間、
ネクロスの翼がゆっくりと広がった。
ドオオオオオオオオッ!!
翼の“虚無”が吸い込むように空気を消し、
直後に爆発的な衝撃波が炸裂する。
「ッぐ……!!」
「なんて馬鹿力…ッ!」
カーミラが盾を構えて体ごと押し戻される。
盾の金属が悲鳴のような音を上げた。
ヴァンは横に消えるように動き、吸血鬼の脚力で衝撃をかわす。
「化け物め……。夜が来ないのが惜しいな。」
「文句はあと! 来ます!!」
アレックスが前へ踏み出し、剣を構える。
その時
勇者パーティの仲間たちが次々と到着した。
戦士ブレイン「アレックス!遅れてすまない!」
魔法使いエリオ「避難誘導はタクミ達に任せてきた!」
僧侶リリィ「あの魔力……世界級よ。全員、絶対に気を抜かないで!」
「リリィ……ブレイン……エリオ……来てくれたのか!」
そして、観客席では――
「皆さん、この通路を通ってください!落ち着いて、押さないッ!」
タクミが声を枯らして叫び、
崩れる客席を背にして人々を外へ走らせる。
「ミラ!あっちの階段が塞がったわ!」
「ライラ、結界を張りますわ!少しでも時間を稼ぎますの!」
「トビー!そこの子供を!はやく!」
三人は戦場の外で、命を守るための戦いを続けていた。
観客の恐怖の泣き声、瓦礫の落下、
闇の瘴気で空気そのものが汚れていく。
「タクミさん!!もっと急がせないと……!」
「わかってる!だが諦めるな――ここで死ぬわけにはいかない!」
彼らの奮闘が、
後に“千人以上の生存者を救った”と語られることになる。
闘技場の戦いの砂場では、戦いが激化していた。
アレックスの斬撃が竜の顔に届く直前――
闇竜ネクロスが喉奥で魔力をねじれるように収束させる。
「まずい!!全員伏せろ!!」
グオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!
闇紅黒炎が放たれ、
闘技場の半分が吹き飛んだ。
その破壊の中、
ルシフェルがゆっくりと浮かび上がる。
「……第二段階を発動する。
《禁呪・屍王操術》」
ルシフェルの足元に、 黒い魔方陣が出現する。
不吉な鼓動。腐敗の匂い。死霊の声。
そして――
魔方陣の中心から、人影がよろめき出る。
ボロボロのマント。
血に染まったナックル。
折れた肋骨。
闘技場で死亡したはずの男。
「……シュウバ……!?
嘘だろ……生き返って……」
勇者アレックスが言葉を詰まらせた。
だが次の瞬間、シュウバの目が光った。
赤黒い呪詛の光。
「――……殺……ス……」
ルシフェルが嘲笑する。
「感情も意志も捨てた“完璧な兵器”だ。
さぁ勇者アレックス……
お前の手で一度殺してみせろよ?」
ネクロスの背後に、
“操られたシュウバ”が立ちはだかる。
アレックスは震える手で剣を握りしめた。
「シュウバ……戻ってこい……!」
シュウバは返事しない。
殴りかかる。
アレックスを、殺すためだけに。
カーミラが叫ぶ。
「情けは無用だ!アレックス!死ぬぞ!」
ヴァンが加勢しようと動くが、
シュウバの速度は常軌を逸していた。
「……!」
ブレインが割って入ろうとするが、
エリオが彼の肩を掴む。
「待てブレイン。
……これはアレックスにしか乗り越えられない。」
シュウバの拳が勇者の頬を裂く。
血が飛び散る。
闇竜ネクロスが翼を広げ、
ルシフェルが狂気の詠唱を続け、
観客が叫び、仲間が血を流している。
その時
勇者アレックスの胸に、
古代勇者の紋章が浮かび上がった。
光は剣に走り、
髪が揺れ、
空気が震えた。
リリィが驚愕の声をあげる。
「アレックスさま……それは……
まさか……勇者の“真名”……!!
封印されし力が解放されようとしているわ!!」
エリオの目が見開かれた。
「……勇者の“真名”……!!
伝説の勇者だけが持つ、世界と契約された名前……!」
大地が震え、
闘技場全体に風が巻き起こる。
アレックスが顔を上げ――
「ルシフェル……ネクロス……シュウバ
お前たちは、ここで……必ず止める!!」
光が爆ぜる。
勇者の覚醒が始まった。




