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12/12全話完結【ランキング32位達成】累計3万3千PV『異世界不動産投資講座~脱・社畜28歳、レバレッジで人生を変える~』  作者: 虫松
第八部 波乱の武道大会編

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第8章 「格闘魔術士ルシフェルの企み」

第四試合、シュウバの“無音連打サイレント・ヘイル”が終了し、勇者アレックスが止めに入った。

ゴライアは地面に伏し、僧侶リリアが駆け寄って即座に治癒魔法を唱える。


「ア……アレックス様、大丈夫ですか……!」

リリアの手から柔らかい光が広がり、アレックスの疲労と軽い打撲を癒す。


アレックスは微笑む。

「大丈夫だ、リリア。これくらいは慣れてる。」

しかし胸の内では、シュウバの凄まじい殺意を強く感じていた。



観客席は、歓声というよりも、戦慄に包まれていた。


「シュ、シュウバ……怖すぎる!」

「次の試合、俺たち誰も立てないんじゃ……」

「あの暗殺者、普通の格闘家じゃない……!」


特に子どもや女性たちは、恐怖に顔をゆがめ、保護者の腕にしがみつく者もいる。


コロッセオ全体が、一瞬の静寂と恐怖に支配された。

“シュウバ恐怖症”そう名付けられるほどの圧倒的存在感だった。


その様子を、観客席の隅で静かに見下ろす青年がいる。

黒衣の青年ルシフェル=クロウ。


「やはり……封印の波動が反応しているな」

微笑の奥に、冷たい計算が光る。


彼の過去は王都で禁書庫の魔導書を盗み、国家から追放された罪人。

しかし、その知識と禁術は今、大会という舞台の中で静かに息を吹き返していた。


それは闘技場〈コロッセオ・ミストリア〉の地下の魔法陣に仕込まれた“封印解除の鍵”を動かすこと。

大会という混沌の力を利用し、封印を破ろうとしているのだ。


「勇者も強者も、すべて、私の計画の上で踊っているに過ぎない」

ルシフェルは人々の歓声をよそに、冷静に次の動きを思案する。


一方、宿〈星降る亭〉では秘書兼女将代理のミラが、経理帳簿を確認していた。

第四試合の賞金や観戦チケットの収入が、なぜか帳簿上で微妙にずれている。


「……これは……どういうことですの?

 収入と支出が一致しませんわ……この不明金は何ですの?」


彼女は不穏な気配を感じつつも、落ち着いた表情でメモを取る。

その瞳の奥には、計算され尽くした警戒心が光る。


「まさか……この武道大会、ただの闘技会ではないのでわ……」


観客席からは、まだ興奮冷めやらぬ声が響いていた。


「シュウバ……まさか、あの静けさであんな力を……!」

「無言……なのに、圧倒的だ……!」

「これが“武神の継承者”か……!」


闘技場の砂埃が舞い上がり、シュウバは静かに立ち去る。

誰も彼の足取りに合わせて歓声を上げることはできなかった。まるで空気ごと彼の存在が支配しているかのようだ。


タクミは、観戦席の端で仮面の奥を凝視していた。

「……どこかで見た面影が……あの冷徹な瞳の奥に、昔の戦友の姿が重なる……」

胸の奥で、懐かしい戦いの日々と、失った者たちの記憶がざわめいた。


一方、闇の席でルシフェル=クロウは、薄く笑みを浮かべていた。

「……利用価値あり……ふふ、面白くなってきた」

彼の視線はシュウバの動きに鋭く絡み、闘技場の魔力の流れまで読もうとしていた。

無言の戦士の冷徹さと、圧倒的な実力――この大会は、彼の計画にぴったりだ。


その時、ミラがタクミのもとへ駆け寄る。

「タクミ様、裏口で不審な荷物搬入がありましたわ……」


タクミの表情が一瞬にして引き締まる。

「……荷物?中身は?」


ミラは小さく首を振る。

「現時点では不明です。運搬人も複数で、通常の搬入手順を避けていましたわ」


タクミは背筋を伸ばし、闘技場を見渡す。

「……何か動いているな。大会の盛り上がりに紛れて、誰かが何かを企んでいる……」


アレックスも、砂埃の向こうでシュウバを観察しつつ、険しい顔をする。

「タクミ様……この大会、ただの武闘会じゃない。危険が忍び寄っている……」


その瞬間、観客の歓声の奥で、誰も気づかぬように闇が蠢き始めていた

ルシフェルの計画、そして封印解除の序章が、静かに幕を開けたのだった。


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