第3章 「武道大会 開幕」
遺跡の町 ミストリアの中央
古代遺跡の門の前に建てられた巨大闘技場、コロッセオは今日、異様な熱気に包まれていた。
空気が震えるほどの歓声、屋台の匂い、旗を振る観客たち。収容人数は2万と言われているが、すでに定員超えの人間が詰めかけている。
タクミが中央の演壇に立つと、ざわめきが一瞬にして静まり返った。
「これより!
第一回 グランド・バトルフェスティバルを開催する!!」
タクミの声が魔法の拡声器でコロッセオ全体に響き渡り、
次の瞬間、地鳴りのような歓声が爆発した。
「タクミィィィーーー!!」
「待ってたぞーー!!」
「今年こそ伝説が生まれる!!」
タクミは微笑み、ゆっくりと掲げた巻物を広げる。
トーナメント発表(16名)
「それでは今年のトーナメント表を発表する!」
魔法により巨大ホログラムが空に浮かび、選手名が次々に表示されていく。
「第一の注目選手
鋼の女戦士 カーミラ!!」
金髪を三つ編みにまとめ、鋼鉄の手甲と胸当てをまとった長身の美女。
名はカーミラ。
“鋼の女戦士”の異名で知られ、世界中の武闘会を総なめにしてきた実力者だ。
彼女は受付に歩くと、書類を置きながら静かに宣言した。
「弱い者は退場。私は勝ちに来た――それだけよ。」
氷のように冷たい瞳。
彼女の放つ圧に、受付の者たちは思わず背筋を伸ばす。
観客「うおおおおおおおお!!」
観客席の女性たち「カーミラー!!かっこいいーー!!」
「闇の吸血剣士
ヴァン・ノクト!!」
黒いマントと深紅の装飾。
城館のようなたたずまいの青年――ヴァン・ノクトが壁に寄りかかっていた。
闇を思わせる銀髪と、吸血一族に伝わる紅の瞳。
異名は “闇の吸血剣士”。
ヴァンは薄く笑い、低く呟く。
「……この空気、血の匂いがする。」
風が砂を巻き上げ、長いマントを揺らした。
観客「ぎゃあああああ!!」
「ヒュゥゥーーー!!闇の王子ーー!!」
「風の天才格闘家
ルシフェル=クロウ!!」
黒衣の青年が、まるで黒い風の流れを読むように静かに目を細めている。
名は ルシフェル=クロウ。
しなやかな体と、風のように軽い身のこなし。
異名は “風の天才魔術格闘家”。
彼はまるで大会そのものを楽しむかのように、人混みを眺めて笑った。
「……良い風だ。今日は、強い奴に出会えそうだ。」
観客「ルシフェルーー!!今年はお前の年だァ!!」
「武神の継承者
シュウバ!!」
仮面をつけ、褐色の肌を隠すようにフードを深くかぶった巨体の戦士が、静かに立っていた。
名を――シュウバ。
彼の全身からは荒々しい覇気が漂い、
異名は “武神の継承者”。
受付用紙にはただ一言、
「参加」
とだけ記されていた。
「....」
彼は何も語らない。
だが、その沈黙こそが、彼の強さを物語っていた。
観客「シュウバァァァァ!!拳で語れーー!!」
そして、名前が読み上げられる瞬間――
タクミがわざと間を取る。
観客が前のめりになり、ざわ…と静まり返る。
「そして最後の注目選手は――
我らの勇者……
アレックス!!!」
爆発的な大歓声。
コロッセオ全体が揺れるほど。
白銀の鎧に身を包み、風を背に立つ男がいた。
背には聖剣、
四人の強者を見渡し、アレックスは静かに微笑む。
「タクミ……この大会は、とんでもない場になりそうだ。
こんな強者たちが集う場所に招いてくれて、感謝するよ。」
そして彼はタクミの肩に手を置き、言った。
「最高の戦いをしよう。
勇者として、いや、一人の戦士として、ね。」
タクミはその言葉に笑みで返し、
コロッセオの空気はさらに熱を帯びていった。
「アレックスーー!!!」
「頼むぞ勇者ァ!!」
「魔王を倒せるのはあんただけだ。男の戦いを見せてくれ!!」
勇者の仲間たちの反応
僧侶リリア
両手を胸に当てて感激している。
「ア、アレックス様の人気……すごいです……!天界まで届きそう……!」
魔法使いメル
「あのカーミラって女戦士……気配が鋼鉄みたい。アレックス、油断すると首落とされるわよ?」
戦士ゴードン
腕を組んでニヤリ。
「いいじゃねぇか。血が湧いてくるぜ。勇者の実力、しっかり見せてやれよ!」
◇◇◇
大会発表を終えて、タクミは少し休憩のため裏手の石段に腰を下ろした。
喧騒から少し離れたその場所に、カーミラが静かに立っていた。
銀の鎧、鋭い眼差し。
彼女は今日も一分の隙もない。
タクミは軽く声をかける。
「カーミラ、緊張してない? せめて肩の力を――」
カーミラは振り返らず、短く言い放った。
「甘やかしは無用。」
「お、おう……今日も鋼みたいだね……」
カーミラは剣の柄に手を添え、静かに目を閉じる。
「私は鋼の戦士。鍛え続ける者に、休息も慰めも必要ない。」
その姿は、観客が期待する“伝説級”の名に相応しかった。
第一試合はカーミラ VS プロレスラー風の大男 デストロイヤアーとの対戦が間もなく始まる。




