第7章 「遺跡の街の再生と闘技場の参加者たち」
「観光遺跡都市計画」あれから1年経過 タクミは29歳になった。
長いようで短い準備期間が過ぎた。
タクミの手がけた「観光遺跡都市計画」は、驚くべき速さで形になっていった。
崩れかけていた石造りの街並みは、職人たちの手で甦り、
広場には行商人の屋台が並び、
香ばしい焼き串と蜜菓子の匂いが風に乗って漂う。
旅人たちは宿を探し、吟遊詩人は即興で歌を紡ぐ。
そして、街の中央。
遺跡の門の前に、円形の闘技場が堂々と完成した。
石と鉄で組み上げられたその構造物は、古代ローマを思わせる荘厳さと、
冒険者たちの情熱が渦巻く新たな“祭りの中心”だった。
大会の名は「第一回 グランド・バトルフェスティバル」。
優勝賞品は「特注ミスリル装備」と「タクミの運営する宿・一年無料パス」。
チラシにはタクミ自らの直筆で、こう書かれていた。
『勇者アレックス様のご参加を心よりお待ちしております。』
大会エントリーが始まると、各地から名の知れた強者たちが続々と現れた。
注目選手たち
世界武道大会の覇者、女武道家カーミラ。
金色の髪を三つ編みにし、鋼の拳を包む手甲には「不退転」の刻印。
「男に負けたら即引退」と公言する豪胆な戦士。
闇の魔剣士、ヴァン・ノクト。
漆黒のマントに隠された片目の傷。
戦場で“死神の右腕”と呼ばれた元傭兵。
その剣には怨嗟の魂が宿るという。
格闘魔術士、ルシフェル=クロウ。
常に微笑を浮かべる青年。
噂では王都の禁書庫から魔導書を盗み出し、国家追放となった男。
彼の言葉ひとつで、空が曇る。
元暗殺組織の影、シュウバ。
顔の半分を仮面で覆い、無言のまま登録を済ませた。
身のこなしは影のように静かで、彼が通った後には、風の音すら止む。
タクミは、彼らの参加表を見て顔を曇らせた。
「……これは、ちょっと派手すぎるな。」
トビーが跳ねた。
「派手どころか、血の匂いしかしないぞ! 本当に勇者呼ぶ気か?」
ライラが資料をめくりながら眉をひそめる。
「タクミ、あんた……利用されてるかもしれない。」
「利用?」
「大会の裏で、妙な金の流れがある。
スポンサーの一部が“名前を偽って”出資してる。
それも……帝国軍関係者の名前が。」
タクミの胸に冷たいものが走る。
(まさか、勇者を呼ぶこの計画が――“勇者をおびき寄せる罠”に?)
その夜、ライラは闘技場の屋上に立ち、星空を見上げながらつぶやいた。
「まるで勇者を狙う“殺人祭”のようね……。」
風が吹き抜ける遺跡の街。
観客たちは知らない
この華やかな闘技大会の裏で、“天空よりの使者”が降り立とうとしていることを。
そして、運命の糸は、静かに、確かに勇者アレックスをこの地へと導いていた。




