表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12全話完結【ランキング32位達成】累計3万3千PV『異世界不動産投資講座~脱・社畜28歳、レバレッジで人生を変える~』  作者: 虫松
第七部 天空都市へ遺跡編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/238

第6章 「勇者を呼ぶための計画」

アテネが去ったあと、古代遺跡都市の空には、まだ淡い光の残滓が揺れていた。

夕陽が石造りの塔の陰を長く伸ばし、風が廃墟の街を吹き抜ける。


タクミは広場に立ち、黙って空を見上げていた。

「……勇者アレックスを探せ、か。」


ライラが隣に立ち、腕を組む。

「アテネの言葉、どうするつもり?」


タクミは少し考え、目を細める。

「……探すんじゃない。来てもらえばいい。」


トビーが首を傾げる。

「来てもらう? 勇者を呼ぶ方法なんてあるのか?」


タクミはゆっくりと遺跡の中央を指さした。

「この街そのものを“呼び声”にするんだ。

 遺跡を再生し、人が集まる場所にして――勇者が自然と訪れる街を作る。」


翌朝、タクミたちは復興計画を正式に発表した。

名付けて――「観光遺跡都市計画」。


古代の遺跡を封印したまま保存し、外周を修繕して安全に見学・冒険ができるよう整備。

考古学者、魔導技師、鍛冶師、そして地元の職人たちが次々と集まり、石橋が修復され、倒壊した塔には足場が組まれていった。


「ここを、“観光と冒険の両立都市”として蘇らせる。」

タクミの言葉に、ミラは頷く。

「古代の知恵を今に活かす……素敵な試みですね。」


だが、タクミの真の狙いは別にあった。

遺跡の入口前――かつて冒険者たちが集まった広場。

その場所に、彼は巨大な仮設の闘技場を建てる計画を立てた。


「名目は観光事業の一環。けれど、本当の目的は――“勇者を呼ぶこと”だ。」


タクミは地図を広げ、指で印をつける。

「この遺跡前の広場を“聖域闘場”に改装する。

 ここで、世界中の戦士たちが集う“武道大会”を開催する。」


トビーは驚いたように眉を上げた。

「勇者アレックスを呼ぶための大会か……確かに、戦いと名誉を求める者なら見逃さないだろうな。」


ライラが笑いながら剣の柄を叩く。

「いいじゃない。あたしたちも腕試しできる。」


タクミは微笑み、紙に書き込む。


優勝賞品:特注ミスリル製の武器と防具一式

そして“タクミ運営の宿がどこでも 一年間無料パスポート”


日が経つにつれ、広場には観覧席や装飾の建設が進み、街はまるで祭りのような賑わいを見せ始めた。

宿屋の客足が増え、露店が並び、職人たちは誇らしげに汗を流した。


タクミは完成したチラシを手に取り、満足げに頷いた。


『勇者アレックス様のご参加を心よりお待ちしております。』

主催:観光遺跡都市協会/代表 タクミ


ミラはチラシを見て微笑む。

「まるで手紙みたいですね、勇者への招待状。」


タクミは肩をすくめた。

「それでいい。想いが届けば、きっと来てくれる。」


やがて、ギルドを通じてチラシは世界各地へ配布された。

王都、砂漠の都市、港湾国家、そして地底の民の集落にまで。


半年後、遺跡の街は“勇者を呼ぶ街”として注目を浴びる。

しかし、タクミの思惑とは裏腹に、闘技大会には勇者だけでなく、闇の魔剣士、世界大会の覇者、暗殺者、黒魔導士など、“勇者を討つ者たち”までもが集い始めていた。


武道大会の広場に新たな火花が散る。それは、次なる嵐の予兆だった。

ワンポイント解説


■闘技場は古代ローマの遊楽文化の象徴

闘技場コロッセオは、単なる戦いの場ではなく、「娯楽・信仰・都市の誇り」が融合した空間だった。古代ローマでは剣闘士の試合、獣との戦い、模擬海戦まで行われ、人々が社会の緊張を忘れ、都市の力を感じる場所でもあった。


タクミが遺跡前の広場に作る闘技場は、そうした「古代ロマンの再現」を目指したもの。

ただ戦うだけでなく、“人が集い、語らい、憧れる舞台”として設計されている。


その目的は、

「勇者を呼び寄せる」だけでなく、

「人々が再び夢を見る都市をつくる」こと。


まさに、タクミ流の“異世界冒険再生プロジェクト”である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ