第5章 「天空よりの使者」
古代遺跡都市の広場の上空に、突然、眩い光が舞い降りる。
タクミは眉をひそめ、空を見上げる。
「……あれは誰だ?」
ライラは剣を構え、鋭い目で光の降下点を見定める。
微かに魔力の波動を感じ、身体に緊張が走る。
トビーは杖を掲げ、空中の魔力を探知する。
「通常の魔力とは違う……高度な結界や古代魔法に通じる存在だ」
光が地面に降り立つと、長衣を風になびかせた人物が静かに立っていた。
優雅な立ち振る舞いと落ち着いた佇まい
天空の使者、アテネだった。
タクミは前回、古代遺跡で手に入れた石板を思い浮かべる。
「石板解読と、村の修繕を並行して進めているところだ……アテネ、君の目的は?」
アテネは微笑み、静かに手を石板にかざす。
風に揺れる長衣の端が光を反射し、石板の古代文字が淡く輝く。
魔力の波動が周囲に広がり、空間の結界が微かに震える。
アテネの眼差しは鋭く、しかし穏やかだ。
「この石板の古代文字を解読するには、天空都市からの知識が不可欠です。石板と私が揃うことで、魔導塔が起動します。」
タクミは石板をじっと見つめ、指で触れずに周囲の安全を確認する。
「なるほど……石板のの解除には君が必要ということか」
アテネはさらに手を石板に近づけ、微かな声で告げる。
「魔導塔は、火と氷の魔女によって守られています。塔を攻略するには、力で打破しなければなりません」
タクミの目が鋭く光る。
「魔導塔が天空都市レテンシアへ繋がる道か」
「火と氷……あの谷の魔獣と関係があるのか……」
ライラは剣の柄を握りしめ、覚悟を固める。
「戦いは避けられない……でも、守るべきもののためなら」
アテネは視線を遠くに向け、静かに告げる。
「そして、勇者アレックスを探すこと。これがあなたの次の使命です」
タクミは石板を手に、アテネの言葉を反芻する。
「石板の解除、魔女の塔、そして勇者……やるべきことが増えたな」
トビーは杖を握り直し、空に向かって魔力の感覚を研ぎ澄ます。
ミラは仲間たちの防御魔法を整え、緊張の空気を和らげるように息を整える。
広場に立つタクミたちの背後には、修繕を終えつつある村と光輝く古代遺跡が広がる。
遠くの空には、まだ微かにアテネの光が揺らぎ、次なる冒険の予兆を告げていた。




