第4章 「売買契約 スラム街の空き家を買う」
翌朝。
タクミは金貨十枚の入った袋を胸に抱え、街の片隅にある不動産屋《セレス不動産》を訪れた。
ドアを開けると、埃っぽい事務所の奥で、初老の男が羽ペンを動かしていた。
白いひげに片眼鏡。看板には「土地建物取引士」と書かれている。どうやらこの世界にもそれっぽい制度があるらしい。
「よう、転生者の兄さんだな。昨日見てた“スラムの廃屋”……まだ買う気か?」
「はい。金貨一枚、用意しました。」
「まさか本当に買うとはな。あの家は“呪いの家”って噂もあるんだが……まあ、止めはしねぇ。」
不動産屋の男は笑い、古びた木製の契約書を机に広げた。
◆ STEP1 司法書士による書類確認
「まずは司法書士の先生が必要書類を確認します。」
呼ばれたのはローブ姿のエルフの女性だった。
不動産登記の専門家らしく、契約書の内容をすらすらと読み上げる。
「所有者は前の持ち主“バロット氏”。滞納税金の支払いも済んでいます。問題なし。」
◆ STEP2 登記申請用の署名・捺印
「こちらにサインと印を。」
タクミはペンを取り、震える手で署名した。
これが、異世界での“マイ物件”の第一歩。
◆ STEP3 残代金と公租公課の授受
次に、残代金の授受。
タクミは金貨二枚を置いた。金属の音が響くたびに、胸が高鳴った。
「固定資産税に相当する“公課”が銀貨三枚。こちらもお願いします。」
「了解です。」
◆ STEP4 代金入金確認
不動産屋は金貨を一枚ずつ確認していく。
現金決済のため、銀行振込のような“1時間待ち”は不要だが、その代わりに「手触りで重さを確認」するというアナログさだ。
◆ STEP5 鍵の授受
不動産屋が錆びた鉄の鍵を取り出した。
「これが、あんたの新しい“拠点”だ。」
タクミは手の中で鍵を握りしめた。冷たい金属の感触が、妙に現実味を帯びていた。
◆ STEP6 引き渡し確認書に署名
最後に、引き渡し確認のサイン。
これで正式に、スラムのボロ家はタクミの所有となった。
「……これで、終わりですか?」
「ああ。おめでとう、オーナーさん。」
◆ STEP7 仲介手数料の支払い
「仲介手数料、銀貨三枚な。」
「えっ……高いですね。」
「どこの世界でも、ここが一番儲かるんだよ。」
◆ STEP8 売買決済終了
タクミは深呼吸した。
目の前の書類、鍵、そして空っぽになった財布。
だが胸の中は、確かな充実感で満たされていた。
「これで、俺は“家賃収入”を得られる立場になったんだな。」
タクミは店を出て、青空を見上げた。
スラムの片隅にあるボロ屋....
今はただの廃墟だ。だが、彼の目には“宝”に見えていた。
「ここからだ……異世界FIRE、第一歩。」
風が吹き抜ける。
遠くで冒険者ギルドの鐘が鳴り、タクミの胸に希望の音が響いた。
ワンポイント解説
■不動産投資のメリット
タクミのように「ボロ家を買って貸す」というのは、まさに不動産投資の基本形です。
ここで得られる“学びポイント”を整理してみましょう。
① 安定収入
賃貸すれば、毎月一定の家賃が入る。景気に左右されにくい安定した収益源です。
② 資産形成
家や土地は「現物資産」。売却すればまとまった資金が得られ、担保にも使えます。
③ 減価償却(節税効果)
建物は時間とともに価値が減少するため、帳簿上で経費として扱えます。結果、税金を抑えることができるのです。




