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12/12全話完結【ランキング32位達成】累計3万3千PV『異世界不動産投資講座~脱・社畜28歳、レバレッジで人生を変える~』  作者: 虫松
第四部 異世界不動産開拓サーガ編

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第10章 「地底の試練 ― ミルワーム討伐と投資の天秤」

地面が脈打つように震え、土壁が崩れ落ちた。

タクミたちが立つ地底の大空洞――そこは、地鳴りとともに唸る“生きた洞窟”だった。


ライラが剣を抜く。

「来るわ、ぬしクラスよ……!」


トビーが魔法陣を描きながら叫ぶ。

「魔力反応、複数!中心に巨大な魔力核がある、奴だ!」


轟音とともに、巨大ミルワームが地面を突き破り、顎を開けて咆哮した。

その体は樹木のように太く、甲殻には岩の破片が食い込み、赤い魔力脈が光っている。

一瞬で空気が震え、熱と土埃が渦を巻く。


「ライラ、右から! トビー、後方を頼む!」

タクミの指示に、二人が同時に動いた。


ライラの剣が閃き、甲殻を切り裂く。しかしミルワームの皮膚は硬く、切り口から濁った液が噴き出す。

トビーの詠唱が続く。


「《雷光連鎖サンダーチェイン》!」

青白い稲妻が走り、洞窟の壁を照らす。ミルワームの体が痙攣するが、なおも暴れ狂う。


「まだ効かない!?」

ライラが歯を食いしばり、避けた岩の破片が背後の壁を砕く。


ミラが落ち着いた声で叫ぶ。

「弱点は頭部です!装甲の下に魔石が埋まっていますわ!」


「了解!」

トビーが両手を掲げ、魔力を集中。光の矢が雨のように放たれ、ミルワームの頭部を撃つ。


ライラは渾身の跳躍。

「これで――終わりッ!!」

剣に紅い光が宿り、雷鳴のごとき一撃がミルワームの額を貫いた。

洞窟全体が震え、地底湖の水面が波打つ。


沈黙。


巨大な体がゆっくりと崩れ落ち、やがて完全に動かなくなった。

ミルワーム討伐、完了。



◇◇◇



安堵の息がもれる。しかしその瞬間

洞窟の奥から、金属の靴音が響いた。


「……やれやれ。ずいぶん派手にやってくれたな。」

現れたのは、黒い軍服に帝国の紋章を刻んだ役人たちだった。

その中央に立つのは、開発庁第七局の査察官・ガルド。


「無許可の地底開発は、帝国法第89条に違反します!」

冷たい声が洞窟全体に響く。タクミが眉をひそめた。


「……戦いの最中に監査とは、律儀ですね」


ライラが剣を構え、トビーが警戒態勢を取る。緊張が再び走る。


しかし

ミラは静かに一歩前に出た。

眼鏡の奥で冷たい光を放ち、書類を掲げる。


「条約第42条、“未開発地の共生開発権”に基づき、我々の活動は合法ですわ」

契約の魔印が発動し、宙に光の文字が浮かび上がる。

「共同開発協定書――署名済み。印影は正規の帝国印章ですわ」


査察官ガルドは一瞬、言葉を失う。

やがて舌打ちし、部下に撤退を命じた。

「……ちっ、法務局の怪物秘書が同行していたとはな。今回は見逃そう。」


静寂が戻った洞窟。タクミは深呼吸し、崩れた巣の奥に光る鉱脈を見つめた。

「見ろ、あれは希少鉱“ミスリル鉱”……地底の金脈だ」


ライラが剣を肩に担ぎ、笑う。

「命懸けだったけど、掘り出し甲斐はあるわね」


ミラがペンをくるりと回す。

「これで観光・採掘・交易の三本柱が整いましたわ。次は資金調達の再契約です」


トビーが感嘆の声を上げた。

「やれやれ、投資家ってのは、戦士よりタフだな」


タクミは微笑み、言った。

「投資とはリスクと信頼の天秤を制することだ」


そして、地底の暗闇の奥。

まだ誰も知らない、新たな地脈の光がゆっくりと輝きを増していった。



✨第四部 異世界不動産開拓サーガ編 完✨


ワンポイント解説


■土地造成の開発許可とは?

土地造成の開発許可とは、山や田畑などの土地を住宅地や商業地などに整えるために、地形を変える行為(切土・盛土など)を行うときに必要な許可のことです。

これは主に「都市計画法第29条」で定められています。


【ポイント1】開発行為とは?

「建物を建てる目的で行う土地の区画形質の変更」を開発行為と呼びます。

つまり、

山を削る(切土)

低い土地を埋める(盛土)

道路や区画を作る

などはすべて「開発」とみなされます。


【ポイント2】許可が必要な範囲

都市計画区域や準都市計画区域内で、

1,000㎡以上(市街化区域では500㎡以上)を造成する場合は、

原則として都道府県知事の開発許可が必要です。

※ 例外として、農業用地や公的事業などは許可不要な場合もあります。


【ポイント3】審査の内容

開発許可を得るには、次のような項目が審査されます:

用途地域に合っているか

道路・下水道・給水設備などのインフラ整備計画

土砂災害・浸水リスク・地盤安定性への対策

周辺環境への影響(景観・騒音・自然破壊など)


【ポイント4】無許可造成のリスク

無許可で造成すると…

原状回復命令

工事停止命令

最大3年以下の懲役または100万円以下の罰金などの厳しい罰則が課されます。


タクミの場合は地底を切り開く場合、帝国の「地霊安定局」からの許可が必須。精霊の同意なしに盛土を行えば、地震や地盤沈下を招く。まさに現実世界と同じ“開発リスク”が存在するのです。

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