第8章 「地底の脅威たち」
地底の洞窟の奥へ進むにつれ、空気は湿り、地面がわずかに震えていた。
荒廃した村の地下その“闇の正体”が、いま姿を現そうとしていた。
「危険な音がする……!」ライラが剣を抜く。
前方の壁が崩れ、無数の鋼の顎が現れた。
地底の巨大アリ。アントロード。
鉱石を食う魔物で、坑道そのものを巣にしている。
「群れだ! 坑道ごと食われる!」トビーが杖を構える。
タクミは壁を見つめながら分析した。
「地層が脆い……このままだと崩落する。時間との勝負だ!」
ライラが突っ込む。
「まとめて切り裂く!」
彼女の剣が閃き、アリの群れをなぎ払う。火花と金属音が響く。
「硬すぎるっ……!」
トビーが詠唱する。
「大地の精霊よ、我らを守れ――《ストーンランス》!」
地面から岩の槍が突き上がり、アリたちを串刺しにした。
残る個体は逃げ去り、坑道は静寂を取り戻す。
タクミは崩れた壁に手を当てた。
「……この地層、鉱石が多い。地熱もあるな。観光資源どころか、地底開発の拠点にできる」
ライラは苦笑しながら言う。
「アンタ、命より不動産のことが大事なの?」
湿地帯に入ると、腐臭と共に巨大な影が現れた。
ぬるりとした舌が飛び出し、ライラを絡め取る。
「ぐっ……離せッ!」
ライラが剣を振るが、粘液が絡みつく。
トビーが叫ぶ。
「《フレアバースト》!」
火球が湿地を爆ぜさせ、熱気と蒸気が洞窟を包む。
巨大カエルはのたうち回り、蒸気の中で沈黙した。
すると地熱が刺激され、地面の裂け目から湯が湧き出す。
「温泉……!?」ライラが驚く。
タクミは湯の温度を測りながら微笑む。
「天然地熱温泉だ。観光開発すれば、この村は蘇る」
ミラ(眼鏡を光らせながら)
「まさか怪物退治が資源調査になるとは……さすがタクミ様ですわ」
さらに奥。
洞窟の中央に、巨大な黒蛇がとぐろを巻いていた。
その瞳が光り、岩壁が石に変わっていく。
「見たら石化するタイプね!」
ライラが目を逸らしながら走る。
「ライラ、目を閉じて! 俺が誘導する!」トビーが叫び、
鏡の破片を空中に浮かせる。
「魔力の光よ反射せよ《リフレクト・ミラー》!」
反射した魔力光が蛇の目に跳ね返り、バジルスネーク自身が石化した。
轟音とともに、巨大な石の蛇像が完成する。
「……立派な石像だな。観光の守護神にでもできそうだ」
タクミが真顔で言うと、ライラが笑う。
「命がけの戦いのあとに観光話とは……あなた、やっぱり只者じゃないわ」
静まり返った洞窟の奥に、光る鉱脈と巨大な通路が現れた。
その先には、地底に住むモグラ族、モグーラの村があるという。
タクミの目が輝く。
「地底の民と協力すれば、観光・鉱山・地熱発電と金脈の三拍子だ!」
ミラは冷ややかに眼鏡を押し上げた。
「……ただし、彼らが友好的ならの話ですが」
トビーが肩をすくめる。
「交渉も命がけってわけだな」
ライラは笑って剣を振るった。
「いいじゃない。次は“地底開発戦”よ!」
洞窟に再び地鳴りが響き、冒険はさらに深く。
ワンポイント解説
■地底開発と“金脈”の真実
地底は、ただ暗くて危険な世界ではない。
実は「資源の宝庫」なのだ!
古来より、地下には金・銀・鉄・魔鉱石・魔力水脈など、文明を支える貴重な資源が眠っている。
地上では見つからないレアメタルやエネルギー源も、地底の深部には多く存在する。
しかし同時に、地底開発には以下のようなリスクも伴う。
① 地熱・硫黄ガスの噴出:環境に影響を与える危険性
② 地盤崩壊・陥没リスク:不動産的には「地盤リスク案件」
③ 未知の魔物の棲息:アリ・カエル・ヘビなどが天然の防衛線を築く
タクミのような不動産鑑定士にとって、地底は「危険とチャンスが隣り合わせのゴールドラッシュ地帯」。慎重な調査と適正なリスク管理(保険・地耐力評価・魔法的補強)ができれば、
まさに“地底=金脈”と呼べる開発フロンティアになるのだ。
「地上に土地がなければ、掘ればいい。地底こそ、次なる不動産の最前線である。」




