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【ランキング32位達成】累計2万2千PV『異世界不動産投資講座~脱・社畜28歳、レバレッジで人生を変える~』  作者: 虫松
第三部 不動産再生 帝都《紅蓮亭》編

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第10章 「帝都決戦 ― ホテル王たちの黄昏」

夜の帝都、ホテル街の中心にあるグランドロイヤルホテルは、

まるで王宮のように光を放っていた。

だがその光の奥に潜む“崩壊の気配”を、誰もまだ知らなかった。


タクミが《紅蓮亭》のロビーで報告書を読んでいたとき、

ドアが激しく叩かれた。


「タクミ様! 速報です! 帝都ホテル協会が……《グランドロイヤル》の営業停止を通達しました!」


空気が一瞬、止まった。


「……まさか」


リタが息をのむ。ピピは翼をばたつかせながら叫んだ。

「ほんとだよ!“協会公式板”にもう出てる! “違法接客および王族差別行為による懲戒”!」


その頃、豪奢な《グランドロイヤル》のロビーでは、

トランプ・ラッシュが怒号を上げていた。


「ふざけるな! 俺が誰だと思ってる!」


赤い絨毯を踏み鳴らし、彼は協会の使者を睨みつける。


「帝都ホテル協会理事長、プーチン殿の命だ。弁明は地方委員会で聞く」


「俺を地方の……ビジネスホテルに左遷だと!?」


金糸のマントを掴み、トランプは震えた。

「こんな帝都の片隅で築き上げた俺の帝国を、終わらせる気か!」


「終わらせたのはお前自身だ」

背後から声がした。


ゆっくりと歩み出るタクミ。


「王族を侮辱し、客を見下した時点で、あなたは宿主としての資格を、自分で捨てたんだ」


「貧民が……調子に乗るな!」

トランプの拳が振り上がる。だがその瞬間、重い声が場を制した。


「やめろ。お前たちの争いは、もう帝都を越えた。」


現れたのは、帝都ホテル協会の総帥、

不動産王・プーチン=オルレアン。


鋼のような髭と眼光、

その背後には、タクミの視線を避ける一人の男トランプの父、ドナルド・ラッシュの姿があった。


「プーチン殿……なぜ、息子のホテルを処分など!」

ドナルドが吠える。


「帝都の秩序を守るためだ。金と権力だけの宿は、腐る」

プーチンは冷たく言い放った。


だがタクミは、その瞳の奥に“別の意図”を見抜いていた。


「……協会の威信を守るため、切り捨てたんですね」


プーチンの眉がぴくりと動く。


「若造、何を知る?」


「知っていますよ。不動産王と呼ばれるあなたが、

帝都のホテル区画の再編計画を進めていることを」


タクミは懐から一枚の設計図を広げた。

それは、《紅蓮亭》周辺の土地再開発案、協会印付きの極秘資料だった。


「……誰からそれを?」


「あなたの部下が、“おもてなし”にほだされたんです」

タクミの笑顔は穏やかだったが、目は鋭かった。


プーチンはしばし沈黙した後、重く息を吐く。


「……なるほど。お前は面白い。だが、理想だけでは帝都は動かん」


「理想を笑う人間が、帝都を腐らせたんです」


二人の視線がぶつかり、静かな緊張が走る。

やがてプーチンが口角を上げた。


「では見せてもらおう。お前の“理想の不動産”が、帝都を変えるほどの力を持つかどうかを」


翌朝、《グランドロイヤル》は営業停止になり封鎖された。

トランプ・ラッシュは地方都市ガーランドのビジネスホテルへと左遷。

帝都ホテル協会は再編へと動き始めた。


だが、タクミはそれを見ても驕らなかった。

紅蓮亭の玄関に立ち、まだ夜明けの街を見つめる。


「異世界不動産王の道は、まだほんの入口に過ぎない……」


カミーユが微笑んだ。

「次はどこの街へ?」


タクミは小さな鍵を取り出した。

梅ばあさんから託された《紅蓮亭》の鍵。

それを月光にかざし、静かに言った。


「次の新たな投資物件を探しに行こう。

この世界で、“本当のおもてなし”を根付かせるために。」


その背に朝日が差し込む。

炎のように赤い光が、帝都の空を染め上げていた。



✨第三部 帝都《紅蓮亭》編 完✨


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