第5章 「住民ゼロ、資金ゼロ、インフラゼロ―三重ゼロ地帯の再起動!」
負債都市の中心部。
真っ黒に焦げた電柱、破れたガス管、干上がった水道管が散乱する荒野。
タクミは、元ショッピングモールの瓦礫に腰を下ろし、大きくため息を吐いた。
タクミ
「……さて、次はライフラインの復旧か……地獄だ……」
小さな羽音がして、リーナが肩に着地する。
リーナ
「タクミ、がんばル! タクミつよいヨ!」
その励ましは嬉しいが、横からぬるっとした影が近づく。
バイオオセン(元副所長)
「インフラの破損……ひび割れ……断線……あぁ……たまらん……ヌチャ♡」
タクミ
「やめろ、興奮する場所じゃない!!」
ヴァンが崩れたマンションの屋上で風を受け、腕を組む。
ヴァン
「闇の都市計画が……始まる……
負債に沈みし地より、新たなる世界が産声を上げる……!」
カーミラ
「無常……」
カーミラは無表情に短くため息をつくだけだが、それが一番正しい反応に思えた。
タクミ
「毎回パーティの癖が強い!!」
タクミはインフラ図面を見ながら頭を抱えた。
・水道本管は途中で切れ
・ガス管は半壊
・電力供給は完全に途絶
・しかも、マンションの多くが未完成…
タクミ
「完成させようにも資金ゼロ、人ゼロ、信用ゼロ……どうしろっての……」
ミラが冷静に資料を広げる。
ミラ
「タクミ様。住民も建設会社も消えた以上、
通常の復旧手順では数十年かかります」
タクミ
「ですよねー……」
しかし、瓦礫の中に立ち尽くすその瞬間
タクミの目に“あるもの”が映った。
・外壁がむき出しの不気味なタワマン
・足場が永久に残されたままの階段
・建設途中で止まった巨大クレーン
・半分だけ完成した吹き抜けロビー
タクミの思考が弾けた。
タクミ
「……未完成なら……
未完成のまま活用すればいい!」
全員が固まった。
カーミラ
「……どういうこと?」
タクミは一気に説明を始める。
未完成マンション”の価値を変える!
タクミ
「普通なら欠陥物件。でも逆に言えば、
“手を加えられる自由”がある!」
彼のプランが爆発する。
● 安全な部分だけ魔法補強して公開!
● 外壁むき出しのまま → 廃墟アートに!
● 半壊したタワマン → “廃墟スカイホテル”へ再設計!
● 未完成の部屋 → 冒険者向け“DIY賃貸エリア”に!
● 巨大クレーン → 観光アトラクション化!
● 半分のロビー → インスタ映えスポットに!
ミラの目が輝く。
「タクミ様……それは、
“未完成そのものを価値にする”ということでしょうか!?」
タクミ
「そう! 完成しなかった過去じゃなく、
未完成の未来として売り出すんだ!」
カーミラが信じられないものを見る目でタワマンを見上げる。
「逆転開発……?」
ヴァンは震えながら天を仰ぐ。
ヴァン
「未完成……それは闇のロマン……!
終わらぬ物語……完成へと向かう者たちの魂……!」
リーナがぱちぱち拍手する。
リーナ
「タクミ天才! タクミすごいヨ!」
そしてバイオオセンが床のヒビ割れを見て涎を垂らす。
バイオオセン
「未完成……負債……崩落の予感……最高……ヌチャ♡」
タクミ
「だから変な意味で楽しむな!!!」
だがタクミの逆転のアイデアは、
負債都市に“かすかな光”を差し始めていた。




