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【ランキング32位達成】累計1万6千PV『異世界不動産投資講座~脱・社畜28歳、レバレッジで人生を変える~』  作者: 虫松
第三部 不動産再生 帝都《紅蓮亭》編

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第8章 「帝都ホテル業界を舞台にした異世界経済戦争」

夜の帝都。


街灯の灯が揺らめく中、《紅蓮亭》の看板が突如、暗闇に沈んだ。


「停電!?」

リタが悲鳴を上げる。

厨房の火が落ち、湯釜のポンプも止まった。客たちはざわめき、外の通りでは黒服の影が車に乗り込む。


「……やられたな」

タクミは窓越しに呟く。


外部の送電盤が、意図的にショートされていた。

電力供給を握る業者《帝都エナジー》はトランプ・ラッシュ系列。完全に“裏”の仕掛けだった。


「非常用ランプ、点けて!」

カミーユの指示で、ボルクがランタンを並べる。

ピピが泣きそうな声を上げた。


「お客さん、帰っちゃうよぉ!」


だが、タクミは笑った。


「帰さないさ。こういう時こそ“人の力”で勝負だ」


彼は倉庫から、古いランプと蝋燭を運び出した。

やがて《紅蓮亭》の客間には、柔らかな灯が揺れる。


湯けむりの向こうで、ランタンの光が客たちの顔を照らす。

暗闇に浮かぶ“温泉宿の灯”は、まるで異世界の祈りのようだった。


「……明るさなんて、電気だけじゃないのね」


カミーユがつぶやく。


翌朝、《帝都新聞》の片隅にこう載った。


《停電でも営業続行!紅蓮亭、奇跡の“灯の宿”》

「お湯も温かく、心まで温まった」――宿泊客談。


SNSには“#奇跡の宿 #紅蓮亭の灯”のタグが拡散。

結果、停電どころか新規予約が急増した。



◇◇◇


だが、トランプ・ラッシュは黙っていなかった。


「SNSで人気? ふざけるな……」

彼は煙草をもみ消し、部下に命じた。


「偽名で100件、予約を入れろ。

当日、一斉キャンセルだ。支払いは前金なしでな」


数日後、紅蓮亭の予約表は満室。

喜ぶピピたち――だが当日、ほとんどの客が現れない。


「……これ、全部キャンセルです」

カミーユの声が震えた。


夜、玄関前には誰もいない。

湯だけが静かに湧き続けている。


タクミは無言で立ち上がると、メモ帳を開いた。

「予約フォームの改修と、来客保証金制度を導入しよう。

キャンセル客分の部屋は、今夜だけ半額で出すんだ」


ピピが手書きで「緊急割引券」を配り始める。

“キャンセル地獄”は、逆に通りすがりの客を呼び寄せた。


「泊まれるの?この時間に?」

「しかも半額!?」


その夜、紅蓮亭は再び満室となった。


タクミは笑う。

「攻めてきたなら、利用して勝つ。それが商売ってもんだ」



◇◇◇


その頃

トランプ・ラッシュの豪奢な新築ホテル《グランドロイヤル》に一本の報せが入った。


「隣国ルゼリアのプリンセス、帝都滞在を希望。

宿泊先はグランドロイヤルホテル。」


トランプはワインを掲げ、にやりと笑う。

「これで俺の勝ちは決まった。帝都の“顔”になるのはこのグランドロイヤルホテルだ」


噂は瞬く間に広がり、帝都中が沸き立った。

一方、紅蓮亭の面々もそのニュースを耳にする。


「プリンセスが……トランプのホテルに?」

ピピが口を押さえる。


カミーユが新聞を握りしめた。

「《帝都ホテル協会》の推薦って書いてある。あそこが仕組んだわね……」


リタが低い声で言う。

「つまり、相手はもう“帝都”そのものってことですか」


室内の空気が張りつめる。

タクミは静かに息を吐き、言った。


「だったら俺たちは、“帝都に選ばれない者”の宿として生きる。

肩書きも推薦もいらない。来たいと思った人を迎えるだけだ。」


カミーユがうなずく。

「協会の許可がなきゃ何もできない。そんな腐った世の中を変えてやりましょう」


湯けむりの向こうで、紅蓮亭の明かりが再び灯る。

次の戦いは、「権威」対「信念」。

帝都ホテル戦争は、王族をも巻き込む新たな局面へと進んでいく。


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