第4章 「地中深く、謎の魔力反応を捕捉」
忘れられた町、その地下深く。
タクミたちは、吹き出す有害魔霧をかき分けながら降下を続けていた。
ゴォォォ……ッ!
岩盤の隙間から紫の魔霧が絶え間なく吹き上がる。
ミラ
「タクミ様、この霧……通常の瘴気より魔力濃度が桁違いです。
地下に“何か”があるとしか思えません」
リーナ
「ミラネー、“ナニカ”ジャナクテ……“ヤバイモノ”デス……」
タクミ
「まあ、やばいのはいつも通りだな。ここまで来ると慣れるわ」
その時だ。
タクミが持つ魔力測定器(簡易版)が
ピギャァァァァア!!
と音を立てて振り切れた。
タクミ
「おいおい、メーターぶっ壊れたぞ!?」
ミラ
「タクミ様!地中から……これは信じられないほどの魔力反応です!」
ヴァン
「ふっ……闇の胎動……。
地の底で蠢く力が、我らを呼んでいる……!」
カーミラ
「突撃」
バイオオセン
「わぁぁ♡ やばい匂いするぅ……最高……ヌチャ♡」
タクミ
「お前だけテンション違うだろ絶対!」
地底魔物、襲来!!
ズズッ……ズルルルルルルッ!!
魔霧の中から、巨大な地底魔物が五体、這い出てきた。
溶けた岩のような体を引きずりながら、紫色の目をギラつかせる。
ミラ
「タクミ様!前方に魔物反応、数……五!!」
リーナ
「ギャー! ヌルヌルシテル!!」
ヴァンが飛び出した。
ヴァン
「戦いの刻! 闇の契約は今ここに!!
死神の断罪!!」
真っ黒な斬撃が地底を裂く――が。
地底魔物
「……ゴボ?」
効いていない。
全く効いていない。
ヴァン
「ば、馬鹿な……!?闇が……拒絶された……!」
カーミラが無言で拳を構えた。
カーミラ
「壊す。」
轟烈の拳――
アイアン・スパイラル・ストライク!!
カーミラの拳が高速回転し、地底魔物の頭に直撃する――が。
バキッ。
カーミラ
「…………。」
逆に拳が少し凹んだ。
タクミ
「いや、物理ぜんっぜん効いてねぇじゃん!!」
リーナ
「タクミタクミ! このヌルヌル……“物理無効”って匂いするデス!」
ミラ
「タクミ様、これは魔力と重力が複合した防御反応……
どうやらこの地下には“魔力の脈動”が走っています」
タクミ
「脈動? 地下に……動いてる魔力回路があるってことか?」
ミラ
「はい。何らかの巨大装置、あるいは……もっと別の……」
言いかけたミラの声が、一段階低くなった。
ミラ
「……ここは、ただの地下ではありません。
“都市の心臓”のような何かがある可能性が高いです」
地底魔物が迫る。
ズズズズズッ!!
バイオオセン
「きゃああこわいぃ♡ でも嗅ぎたいぃ♡ この魔霧……ヌチャ♡」
タクミ
「嗅ぐな!!死ぬぞ!」
タクミは地面に手を当て、地脈の流れを読む。
タクミ
「……分かった。この魔物、
“重力方向”が固定だから動けるんだ」
ヴァン
「重力……だと?」
タクミ
「重力を逆にすりゃ無力化できる!
地脈反転装置……起動ッ!!」
地面がゴゴゴゴゴゴ! と揺れ、
重力が反転し、地底魔物たちが天井に吸い込まれるように吹っ飛んだ。
バシュゥゥゥン!!
リーナ
「わぁぁ! とんだデス! 天井にベチャッしたデス!」
ミラ
「タクミ様の判断、見事です!」
ヴァン
「……重力さえも操るとは。
タクミ、お前が真の魔王では?」
タクミ
「やめろ誤解されるから!」
ドオォォォン!!
大きな地響きと共に、地面が崩落した。
下から吹き上がるのは、
古代文明の遺跡のような通路、石造りの塔、
そして巨大な広間。
カーミラ
「……都市。」
ミラ
「タクミ様……これは……
失われた古代魔族の“鉱山都市”です!!」
ヴァン
「封じられし都市の目覚め……時は来た……!」
リーナ
「ここ……なにか“キラキラの匂い”するデス……?」
タクミ
「キラキラ……?」
リーナ
「 リーナ、ワカル!カネノニオイガスルナリ!!」
タクミ
「(お宝……?資源……?まさか……)」
ミラ
「タクミ様。この都市が町再生の鍵になるかもしれません」
タクミ
「よし……調査を続けるぞ!」
こうして忘れられた町の再生は
思いがけず巨大な転換点を迎えた。
この古代都市の中心には、
世界を揺るがす“本物の宝”が眠っていることを。




