第3章 「地下への第一歩―封印された魔高炉(まこうろ)」
忘れられた町の中心部。
崩れ落ちたタワマン群の隙間から、
地面にぽっかりと空いた“裂け目”が見つかった。
ミラが小さく叫ぶ。
「タクミ様 ……地下に続いております。」
タクミは崩壊建物の間にしゃがみ込み、
懐中魔灯を落とし込む。
……底、見えない。
ヴァンがそっと近づく。
「闇が呼んでいる……
これは深淵の咆哮……世界の心臓が軋む音……」
タクミ
「お前それ全部想像だろ!!」
リーナが横で、羽を震わせる。
「タクミ……、ナニカイルヨ……コワイ……」
その時だった。
――ぼふっ……!
地割れの奥から、濃密な黒い魔霧が噴き上がる。
カーミラが短く警告する。
「毒。」
タクミ
「即答!? やばいの!?」
ミラは布で口元を覆いながら叫ぶ。
「タクミ様、この魔霧……魔力の密度が異常です。
地下で何か……大きなエネルギーが暴走しております。」
バイオオセンはうっとりしながら手を伸ばした。
「んひぃ……この毒の刺激……肌にピリピリくる……最高……ヌチャ♡」
タクミ
「やめろ!! 触るな!!」
◇◇◇
ロープで降下を開始したタクミたちは、
巨大な地下空洞へたどり着く。
そこには――
古代魔王軍の刻印が刻まれた封印扉がそびえていた。
リーナ
「スゴイ……オオキイ扉……コワイ……」
ヴァンは目を細める。
「千年前の沈黙……封じられし黒歴史の門……」
タクミ
「黒歴史言うな! 魔王様に怒られるぞ!」
ミラは扉に刻まれた文字を読み取る。
「“魔高炉 第三層”……?
ここ、巨大な魔力炉があった施設だよ!」
タクミ
「魔力炉……? でも今は停止してるな」
ミラ
「もしまだ動力が残ってたら……
インフラ復旧の基点になるかもしれない!」
タクミ
(……この町にまだ価値がある?
いや、さすがにそううまくはいかないよな)
そう思った瞬間
扉の下から、ずるり……と黒い影が這い出た。
地底魔物が出現!
身体は霧のように溶け、
骨だけの腕が伸びる不気味な魔物。
タクミ
「うわっ!? なんか来た!!」
カーミラが短く抜刀。
「来る。」
バイオオセン
「感染チャンス……♡ ヌチャッ」
タクミ
「お前は下がってろ!!」
ヴァンが前に出て、腕を広げた。
「我が呪われし魂よ……
今こそ夜を裂き、闇を統べよ!!」
タクミ
「技名だけ早くして!!」
ヴァン
「“影裂”!!」
黒い斬光が地底魔物の身体を切り裂いた――
が、すぐに霧が再生する。
ミラ
「タクミ! 切っても再生する! 物理じゃ倒せない!」
タクミ
「じゃあどうするんだよ!!」
リーナが震えながら叫ぶ。
「アタシ……下から“すごい魔力”かんじる……
こっち、穴ある……!」
タクミ
「穴? どこに?」
リーナが指差す暗い奥――
そこには、崩れた床の下に通路の影。
ミラ
「タクミ! あの通路、魔物の本体に繋がってる!
核心部を断てば止まるはず!」
タクミ
「つまり……地下、更に地下ってことか!」
タクミたちは、地底魔物をかわしながら
奥の穴へと突入した。
バイオオセン
「逃げるのぉ? ああん……もっと近くで見たい……ヌチャ♡」
ヴァン
「来るぞ……“深淵の胎動”が……!」
カーミラ
「前方。」
タクミ
「わかってる!!」
濃霧の奥で何かが脈打つ。
世界の根を揺らすような、低く重い鼓動。
タクミ
「なんだ……これ……」
ミラ
「まるで巨大な魔力炉……いえ、まだ断言できないけど……
“何か”がある!」
リーナ
「タクミ……キケン……スゴクキケン……!」
そして、
地下の奥から、第二の地底魔物が這い出す――
タクミ
「まだ出るのかよ!?!?」
忘れられた町の“最下層”。
ここからすべての物語が動き始める。




