第1章 「勇者との別れ、そして忘れられた町へ」
勇者アレックスの復活により、デスアイランドは崩壊を免れた。
瓦礫が崩れ落ちる直前、勇者はタクミの腕をがっちり掴む。
アレックス
「タクミ……本当にありがとう。
お前がいなかったら、俺、永遠に冷凍保存されてたわ」
タクミ
「いや……あなたが寝てる間に世界が終わるところでしたよ」
アレックスは深く頭を下げた。
アレックス
「俺は魔王城へ行く。必ず決着をつける!」
タクミ
「不動産のほうも、決着つけたいんですけどね」
二人は固い握手を交わす。
勇者パーティが霧の向こうに消えていくのを見届けると
タクミたち不動産チームは、新たな“地獄”へ向かうことになった。
向かう先…その名も
「伝説の忘れられた町リゾート」
王族アラジンが渡した資料は、あまりに薄かった。
タクミ
「資料……これだけ? チラシより情報薄いんですが?」
アラジン
「なに、簡単だ。
“魔王が失敗した巨大開発都市の再生”
それだけだ」
タクミ
「簡単じゃなかった!!」
不動産チームは荒野へ向かい、やがて問題の都市が姿を現す。
◆ 広い駅前 → 雑草と魔物の巣
◆ タワーマンション → 窓ガラスほぼ割れ、傾斜
◆ モール → 骨とコウモリの倉庫
◆ 住民 → もちろんゼロ
◆ インフラ → 勝手に魔力が漏れているせいで電力だけ消費
ヴァン
「これは……都市というより墓場の王国……」
カーミラ
「魔王様もよくこんな場所にタワマン建てたわね……」
バイオオセン(新任デスランド館長)
「ヌチャ♡ 私が住んであげてもいいのにぃ……?」
タクミ
「いや館長はまず風呂に入ってください」
ミラは崩れた歩道を見て目を輝かせる。
ミラ
「タクミ様 “何もないことこそ最高の資源” っていう言葉があります。」
タクミ
「誰の名言だよ、それ」
リーナは冷静に分析する。
リーナ
「確カニ都市……地形ハイイ。
地脈モ悪クナイ。
タダ、何モ活イサレテナイ」
タクミ
「つまり……やり方次第では……?」
リーナ
「再建デキル 金儲ケデキル」
タクミ
「マジか!? じゃあ観光資源は?」
全員
「……………………」
タクミ
「…………え、ゼロ?」
ヴァン
「マイナスだな」
カーミラ
「死」
タクミ
「詰んだ!!」
しかし
地面の奥から、微かに“脈動”が響いた。
ゴウン……
ゴウン……
ミラ
「あれ……今の地鳴り……?」
タクミ
「気のせい……じゃないな」
リーナ
「コノ都市、地下ニ“何カアル」
カーミラ
「でも……こんな廃墟に何があるっていうの?」
この町に残されている問題は山積み。
・魔王様がこの場所に固執した理由
・住民が一人も住まなかった理由
・無人の高層タワマンが老朽化して倒壊寸前
・インフラ維持の魔力装置が暴走し、無人なのに電力だけ食う
すべてが、ひとつにつながろうとしていた。
タクミ
「……嫌な予感しかしない。
でも、やるしかないんだよな……!」
タクミたち不動産投資チームは、
世界最大級の失敗都市再生プロジェクトに挑む。




