第10章 「勇者脱獄作戦ついに決行へ!」
タクミはついに秘匿していた魔界の禁断兵器
《監獄フェーズ逆転装置》を起動した。
「アレックス、今からお前は“死ぬ”。いいか、絶対に動くなよ!」
「お、おう……って、ちょっと冷たっ……タクミこれ本当に大丈夫――ひゃっ!?」
装置が稼働すると、勇者アレックスは瞬時に氷点下へ。
薄青い魔力の霧がまとわりつき、疑似的な仮死状態(ほぼ死)へと変わっていく。
そして数分後。
「タクミ……これ、仮死だよな?ほんとに仮死だよな?」
タクミがアレックスの顔をのぞきこんだ瞬間、
カチンッ(氷結)
氷漬けとなった勇者アレックスは仮死状態となった。
(雪山で遭難して凍った人みたいな状態)
◇◇◇
看守A
「大変でーっすうううう所長! 勇者が……氷漬けで……死んでます!!」
看守たちは蒼白。
「な、なんだとおぉぉッッ!!」
獄長ガルドロスは頭を抱えて叫び声をあげた。
明日は、魔王直々の来訪による“勇者公開処刑ショー”の日。
「処刑する前に死体にしてどうするんだ! 盛り上がらんだろうがぁ!!
魔王様は血飛沫と絶叫が好きなのだぞ!?」
「そ、そんなこと言われましても……」
処刑ショーのスケジュール表を見つめながら震える看守たち。
「勇者死亡」とメモを見ただけでガルドロスは気絶しそうだ。
そのころタクミ率いる脱獄組は、
黒い帽子と黒マントで完全に“葬儀屋”の姿へ。
「よし行くぞ。あくまで“死体搬送”だ。落ち着け」
「タクミ……本当にアレックスは死んでないよね……?」
「……たぶん」
「たぶん!?」
棺(中にはカチコチのアレックス)を押しながら、
死体安置所へ向かうタクミたち。
しかし死体安置室に入った瞬間、
静寂の中に不気味な声が響いた。
「……やはり来たな。タクミ」
振り向くと、そこには手を組んで待ち構える所長ガルドロス。
「手際のよい葬儀屋など、最初から怪しいと思っていた……
お前ら、勇者を盗みに来たのだろう?」
タクミは舌打ち。
読まれていたか。
氷の棺のアレックスは、今にも“本当に死にそう”なほど青白い。
ガルドロスは獰猛な笑みを浮かべ、
部下たちが周囲からタクミたちを包囲する。
「デスアイランドから生きて出られると思うなよ……!」
所長ガルガロスと部下たちとタクミたちの死闘が今始まろうとしていた。




