第10章 「アラジンの大判定 ― 王族のリゾート勝負」
砂漠の大王族で大富豪のアラジンが、ようやく砂嵐と金の匂いを巻き散らしながら到着した。
身にまとうローブは宝石が重すぎて肩が下がり、足元には“金貨の風”が吹いている。歩くだけでチャリンチャリンと音がする男は、タクミたちの前で高らかに宣言した。
「本日よりリゾート都市・最終審査を開始する!」
護衛たちは王族特有の“仕事してる風ポーズ”をとって立ち並ぶ。
ランプーンは緊張のあまり、鼻の穴が通常の3割増しになっていた。
■ランプーン・リゾートの視察
金持ちが金持ちのためだけに作った、金の亡者の都市
アラジンが最初に訪れたのは、ライバルであるランプーンが建設した“黄金のリゾート都市”。
砂漠のど真ん中に、
・金のプール
・金のベッド
・金のトイレ
・金のサソリ(本物)
何から何まで金色すぎて、逆に視界に優しさがない。
アラジンは一通り見て、ふーっとため息をついた。
「金持ちが、金持ちのために、金持ちを呼びこむだけの都市だな」
ランプーンは誇らしげに胸を張る。
しかしアラジンは続けた。
「庶民を全く見ていない。市場がない。生きる生活がない。
これでは“宗教施設”に近いぞ。崇拝対象は金だがな」
ランプーン
「(宗教…?いや褒められてる…?)」
褒められてはいない。
タクミたちが疑問に思っていると、カーミラがぽつりと言った。
「あの二人…昔、同じ“砂漠王塾”の同期だった」
ヴァン
「えっ、同期? あの金ピカと、あの砂魔神が?」
リーナ
「性格、真逆ナノニ…!」
カーミラ
「アラジンは“民衆の暮らし”を学び、
ランプーンは“金を増やす方法”だけを学んだ」
タクミ
「うわ…分かりやすい分岐点…」
アラジンは視察の最中、ランプーンにだけ異様に辛辣。
その理由は、同期対決の火花だった。
◇タクミ側の都市 王宮タージマハーレル視察
アラジンが次に向かったのは、タクミたちが造り上げた魔界ドバイ都市。
白大理石が砂漠の光を浴び、空の青を反射しながら浮かび上がる。
市場には職人、料理人、魔法品商人で賑わい、
子どもたちが走り回り、路地には音楽が響く。
アラジンは静かに言った。
「……息をしている都市だな」
タクミ
「え、えっ、あの金貨大好き王子が褒めた?」
ミラ
「“人がいる”からこそ成り立つ街です! ランプーンのリゾートと違って!」
そのとき
ミラが情熱を込めて市場の意義を語ると、アラジンが反論する。
アラジン
「市場は混乱も産む。統治の面では管理されたリゾートのほうが楽だ」
ミラ
「だからといって庶民を切り捨てていい理由にはなりません!」
アラジン
「だが金は全てを解決する」
リーナ
「解決しません!」
タクミ
「(あの…王族相手にそのテンション大丈夫?)」
カーミラ
「(むしろ私が心配)」
すると
議論が白熱してきたとき、アラジンの護衛がリーナに詰め寄った。
護衛
「口が過ぎるぞ庶民――」
ボコッ!!
カーミラの拳が、護衛の兜ごと顔面を凹ませた。
無言。
完全殺意ゼロの、ただの“静寂パンチ”。
護衛
「(音もなく…意識が…!)」
タクミ
「カーミラさん!? 今の絶対に加減してませんでしたよね!?」
カーミラ
「ムカついたから」
タクミ
「カーミラさまぁぁぁ!!」
次の瞬間、ヴァンがアラジンの背後でコソコソ何かしていた。
タクミ
「おいヴァン、何してるの?」
ヴァン
「いや、アラジンの“影”って高級そうだから…ちょっと吸えば
闇魔力のレベルが上がるかなと思って…」
アラジン
「やめろォォォッ!!!
人の影は勝手に吸うな!!」
ヴァン
「す、すみません…!」
タクミ
「怒られて当然だよ!!!」
一通りの視察を終え、アラジンは砂丘の頂に立った。
金貨の風が止まり、彼の瞳だけが鋭く光る。
「最終判定を下す。
どちらが“砂漠王都再建プロジェクト”を継ぐにふさわしいか――」
ランプーン
「(ドキドキドキドキ!!)」
タクミ
「(胃が…胃が死にそう…)」
アラジン
「だが
“最後の審査会場”はここではない」
タクミ・ランプーン
「「えっ?」」
アラジン
「次だ。
“破滅の森”
魔界最大の凶悪生物保護区にて
最終勝負を行う!」
タクミ
「な、なんで破滅の森!? あそこは入るだけで死ぬレベルですよ!?」
アラジン
「都市建設の神髄は、“死地での判断力”だ」
カーミラ
「…まあ、楽しそうじゃない?」
ヴァン
「クク…闇が濃い。影の鼓動が聞こえるよ。」
ミラ
「タクミ様、ご覚悟を…!」
ミラが破滅の森の情報を可視化した。
・砂漠の果てに突然現れる 黒いジャングル地帯
・理由不明の“瘴気の霧”が一年中漂う
・地図に載らず、勝手に道が変わる「動く森」
・ナビもコンパスも役に立たない
・危険魔獣が多く生息 1日として生き残るの困難な地
タクミ
「ええええええ!?
俺の次の不動産投資先って……
“デスサファリパーク”なの!!??
聞いてない! てか死ぬ! 観光者より俺が死ぬ!!」
こうしてタクミの魔界国家開発アークは、次の地獄へと進む!
✨第十九部 呪われた砂漠リゾートーデスオアシス編 完✨




