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【ランキング32位達成】累計1万6千PV『異世界不動産投資講座~脱・社畜28歳、レバレッジで人生を変える~』  作者: 虫松
第三部 不動産再生 帝都《紅蓮亭》編

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第3章 「朽ちた宿の亡霊たち」

埃にまみれた《紅蓮亭》の広間。

割れたランプ、錆びついた風呂釜、朽ちた床板

かつての栄光の面影は、どこにもなかった。


そんな中、タクミの前にひとりの老女が姿を現した。

背筋を伸ばし、白い髪をきちんと結い上げている。

その瞳には、長い歳月を越えた“誇り”がまだ宿っていた。


「……あんたが、新しい主人かい?」


「ええ。俺はタクミ。梅ばあさんから、この宿の鍵を受け取りました。」


老女はゆっくりと頷いた。


「梅様の宿を、もう一度灯す者が現れたか……。

あたしはカミーユ。この宿で四十年、給仕をしてきた女だよ。」


その名に、タクミは息を呑んだ。

かつて《紅蓮亭》を一流に育てた名物給仕。

梅ばあさんの右腕と呼ばれた存在だ。


やがて、カミーユの噂を聞きつけ、かつての従業員たちも少しずつ戻ってきた。

鍛冶職人のベルン、掃除係の少年マリオ、厨房の料理人ロッコ。

朽ち果てた宿の中に、少しずつ人の声と笑顔が戻り始める。


そんな折――タクミは梅ばあさんの遺品の中から、一枚の古い許可証を見つけた。

『帝都宿営業許可 第127号 発行者:帝都宿ギルド』


翌日、タクミはカミーユとともに宿ギルドへ向かった。

荘厳な石造りの建物の奥、理事長リュシアン・オルレアンが彼らを待ち構えていた。


「……これは古い書類だ。今の規定では無効だ。」


リュシアンは冷ややかに言い放ち、許可証を机に置いた。


だが、タクミは静かに言い返した。

「つまり、“今の規定に当てはまれば”許可されるということですね?」


「……形式上は、そうだ。」


「なら、こうしましょう。」

タクミは横にいたカミーユを前へ出した。


「彼女は、この《紅蓮亭》で長年働いていた帝都の人間です。

この宿の伝統も文化も、帝都の心も、すべて知っている。」


リュシアンの表情がわずかに動く。


「帝都宿の運営資格は、“帝都の者”に限る。……たしかに、彼女なら規定に該当する。」


タクミは小さく微笑んだ。

「では、正式に申請します。

《紅蓮亭》支配人、カミーユ・ド・フレーヌ。

再登録申請者、タクミ・サトウ(補佐人)。」


リュシアンは深くため息をつき、机の上の印章をゆっくりと押した。


「……前代未聞だな。異世界人と帝都人の共同経営など。」


タクミはその印を見つめながら、静かに言った。


「この宿を誰でも笑って泊まれる場所にするためです。」


その言葉に、カミーユの目が細くなった。

彼女の口元には、梅ばあさんに似た微笑みが浮かんでいた。


こうして、《紅蓮亭》は正式に“帝都の宿”として、再び灯りをともすこととなった。


ワンポイント解説


■ 地元性 × 外来発想 = 再生の鍵」

この展開では、帝都の人=カミーユを支配人に据えることで、

「規制(=帝都限定運営)」という壁を合法的に突破。

タクミはあくまで“補佐人”として登録し、外来の発想を現地文化に融合させるという形を取ります。


これは現実の不動産・観光ビジネスにも通じる考え方です。

地方再生や宿泊業では、

地元人材の信用(行政・地域適合性)

外来人材の発想(マーケティング・新技術)

この両輪がそろってこそ、持続可能な成長が生まれます。

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