第5章 「幽霊階の惨状 ― 死者が労働基準法を訴える」
タクミたちは“噂の問題階層”700〜750階あたりに位置する通称「幽霊階」**へ足を踏み入れた。
途端に、寒気。
灯りが揺れ、家具が勝手に動き、床はミシミシと呻く。
そして
サァァン!!
横から飛んできた古びた机が、タクミの横をかすめて壁に激突。
ミラが即メモを取り始める。
ミラ
「勝手に浮遊する家具による負傷リスク……高。
労災保険料さらに跳ね上がる予感……」
薄い霧の中から、ひとりの半透明の幽霊がすーっと現れた。
そして幽霊の労働災害申請が始まる
幽霊職員A
「すみません、死んでるんですが、労働災害の申請をしたくて……」
タクミ
「いや、死んでるんですよね!? そこからが災害じゃないんですか!?」
幽霊職員A
「違います。仕事中に二度死んだんです。“二重労災”です。」
ミラ
「二重労災……聞いたことがない……絶対書類増える……」
幽霊職員Bまで並び始める。
“職員幽霊列”ができ、次々に声が上がった。
幽霊職員B
「500年前、上司の古代亡霊に『死んだふりするな!』と殴られて再死しました!」
幽霊職員C
「私なんか、浮遊速度が遅いという理由で減給されました!」
リーナ
「え、幽霊にも給料あるの? 経費で払ってる? もしかして……赤字!? 赤字なの!? やだぁぁ!」
ヴァンが剣を構え、突然ポーズを決める。
ヴァン
「この霊たちよ……俺が浄化の黒翼剣で運命を切り裂いてやる!」
カーミラ
「……空振りして床が抜けるだけだぞ。」
ゴッ!!
本当に床が抜け、ヴァンが落ちた。
タクミ
「ぎゃあああ! また500階に落下!? 今日は三回目だぞ!」
家具が勝手に飛ぶ“幽霊ハウス”
奥の部屋では家具が踊るように飛び回っていた。
椅子「ぴゅーん」
机「ドーン」
タンス「がおーん」
リーナ
「ねぇ、あのタンス、絶対生きてるよね!? 襲われてるよね!? 観光に転用できないかな……『勝手に家具が襲ってくるツアー』とか!」
タクミ
「死人が増える未来しか見えない!」
古代亡霊による“パワハラの歴史館”
突き進むと、壁一面に古代文字が彫られた区画に到達。
スピリト
「ここは“古代亡霊の怒号室”だよぉ〜。
昔、ここは幽霊上司のパワハラが毎日行われてたんだ〜」
壁から声が響く。
古代亡霊の記録
「遅刻だと? なら死んで詫びろ!
今すぐ死んで魂を置いていけぇい!」
タクミ
「パワハラどころじゃない! 業務内容が死ですでに終わってる!!」
さらに別の声。
古代亡霊の記録2
「休日希望? 何を言う。死者に休みはない。永労だ、永労!!」
ミラ
「“永労”……新しいブラックワード……」
リーナ
「死んでも働かされて、さらに労災請求……これ赤字地獄じゃん!?」
カーミラは瓦礫まみれの通路を歩きながら、ただ一言。
カーミラ
「……歩きづらい。」
確かに足元は地獄。
瓦礫、折れた骨、割れた魔水晶、謎の膿瘍がぷくぷく膨らむ泥……。
タクミ
「この階層、再整備するのに何年かかるんだ……」
ミラ
「銀河レベルの追加予算が必要です。」
リーナ
「詰んだぁぁぁ!!」
ヴァン(500階から這い戻ってくる)
「……さぁ、再びこの黒き翼で死者の叫びに終止符を……!」
タクミ
「まず帰ってこい! お前ずっと落ちてたよ!」
地獄の幽霊階を後にして
タクミたちは全員ボロボロになりながら幽霊階を撤退。
背後では幽霊がまだ申請書を振っていた。
幽霊
「書類……書類忘れてますよおおおお」
タクミ
「いらない! 次の階行くぞ! 今は無理だ!!」
こうして魔界補修チームは、さらなる地獄へ進むのであった。




