第1章 「魔界1000階ダンジョン開発編、開幕!」
竜王半島リゾート・ドラゴンスカイホテルが開業して一週間。
火山ショーは連日満席、バンジージャンプの予約は3か月待ち。
観光客の声はもうカオスである。
「ぎゃあああ!! マグマの熱さが本物すぎる!!最高!!」
「竜の咆哮きた!耳が死ぬ!最高!!」
「竜に肩噛まれたけど記念だからOK!!」
タクミはスカイラウンジで壮観を見下ろしながら、しみじみ呟いた。
タクミ「景色最高、治安最悪……だが、これが観光だ!」
カーミラは隣で腕を組んで、冷たく一言。
カーミラ「……勝利。」
ヴァンは日の光を背に、なぜか剣を掲げて叫ぶ。
ヴァン「この世にまた一つ……闇の楽園が誕生したッ!」
(※意味はよく分からない)
ミラはタブレットを見つめながら淡々と数字を読み上げる。
ミラ「利益率186%。稼働率98%。すばらしい立ち上がりです。」
そして、ひときわ小さい妖精リーナが、嬉しそうに飛び回った。
リーナ「オ金!オ金!オ金ノ匂ニガスルううう!!」
そのとき、天から黒炎の光が降り注いだ。
ボウッッ!!!
空間が裂け、黒き封書が落ちてくる。
魔法陣がうねり、圧倒的な支配力が空気を握り潰す。
ミラが分析するより早く、カーミラが一言。
カーミラ「……魔界。」
封書には、巨大な赤い文字。
『魔界封書 ― 魔王ラスボッスデスより』
タクミは震える手で封書を開いた。
“魔界の象徴である『魔の1000階ダンジョン』が老朽化し、
崩落・事故・迷子・勇者の爆死が頻発している。
ついに観光客も減り、赤字続行。
人界最高の都市開発者タクミよ、再生を任す。”
“なお、最下層1000階には我が従妹、
ウラボッスデスが待っている。
彼女曰く『千年ぶりの人間だ、楽しみじゃ』とのことだ。”
フロア全員が凍りついた。
タクミ「……千年ぶり??敵?味方?食われる?」
ミラ「“楽しみ”は往々にして危険です」
カーミラ「……試練。」
ヴァン「ふっ……千年の闇が俺を呼んでいるのだな」
リーナ「魔界ハ金ノ宝庫ダヨ!!行クシカナイデショ!!」
タクミ「おまえ理由が金しかないだろ!!」
リーナ「エッ?逆ニ他ニ理由イル?」
圧倒的正論。
不動産投資家チームは沈黙した。
その後、ミラが冷静に分析を始めた。
ミラ「魔界ダンジョンの開発権……市場規模は不明ですが、
最低でも数十兆ゴールドの価値はあります。」
リーナ「ホラアアアああああああああ!!!行クシカナイデショ!!」
タクミは頭を抱えた。
タクミ「……魔界ダンジョンなんて、行ったら死ぬ。」
だがカーミラがスッと前へ出る。
鋭い紅の瞳でタクミを見た。
カーミラ「……勝つ。」
その一言に、全員の空気が変わった。
タクミ「……よし。行くか。」
リーナ「行クシカナイ ジャナイ!行ク“デショウ”!!」
ヴァンは黒マントを翻し、剣を掲げた。
ヴァン「この魂! 千階の地獄へ突き刺さるッ!!」
(※意味はよく分からない)
■魔界ゲート、開通。
黒紫の魔法陣が回転し、中心に大きな円が開いた。
そこは荒れ果てたダンジョン入り口。
崩れた石造りのアーチ、折れ曲がった階段、ゆがんだ建物。
観光客ゼロ。
ミラ「想像以上に老朽化しています……。」
カーミラ「……崩壊寸前。」
タクミ「こんなの、もう観光以前に危険物件じゃん……!」
しかし、リーナはニヤァッと笑って指差した。
リーナ「ココニ“最後ノ町”ヲ作ロウヨ」
タクミ「最後の町?」
リーナ「1000階ダンジョンに挑ム人モ、働ク魔族モ、
職人サンモ、冒険者モ、魔王軍モ
ミンナガ泊マレル場所!」
ミラ「……なるほど。ダンジョン入口側の都市化……」
ヴァン「ふっ、人界と魔界を繋ぐ境界都市か……闇が深まる……」
リーナは空中に金色の光で文字を書いた。
『ラストシティー』
タクミ「……最後の町、か。いい名前だ。」
リーナ「ココヲ玄関口ニシテ、1000階ダンジョンヲ
“観光名所”ニ改造スルンダヨ!」
タクミの胸がドクンと鳴った。
タクミ「やってやろう。
魔界1000階ダンジョン、
再生プロジェクト始動だ!」
カーミラ「……開発。」
ミラ「予算計算、始めます。」
ヴァン「闇の扉よ、開け……!」
リーナ「オ金ガ舞ウよぉおおおおお!!」
こうして
魔界史上最大のダンジョン不動産。 再開発計画が幕を開けた。




