第3章 「マスタードラゴン登場 ― 火口の王との対峙」
竜王聖域
火口の荒野に地鳴りが轟く。
ドオオオオオォォン!!!
地面が振動し、赤い溶岩が吹き上がる。
風が巻き上がり、岩や灰が舞うその瞬間、空に巨大な影が浮かんだ。
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マスタードラゴン
竜王半島を治める“竜王”
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六枚の翼、百メートルの巨躯、全身を覆う黄金の鱗。
その巨大な目が光った瞬間、タクミたちは背筋に冷たい電流が走る。
空気が「バキッ」と音を立てて割れた。
六枚の翼が一度だけ羽ばたいた。
その風圧で、
タクミたちの足元の火山岩が粉々に砕け、
カーミラの髪が真後ろに一直線に引き伸ばされ、
ヴァンは鼻血を噴いた。
そして
マスタードラゴンの巨大な目がギラリと光った。
次の瞬間。
タクミ
「ッッッッッ!!!???」
全身の血が沸騰したように熱くなり、
心臓が“ギュッ”と握りつぶされる感覚が走る。
視界が白黒になる。
足が勝手に震える。
呼吸が止まり、肺が動かなくなる。
ミラ
「た、タクミ様……この威圧、
人間の生命活動を停止させるレベルです……!」
カーミラ
「……死ぬ」
ヴァン(中二病でも抗えない圧)
「ぐっ……ぐはっ……!
我が……闇の力が……沈む……ッ!」
リーナ(震えながら)
「リュ、リュウサン……目コワイ……!」
マスタードラゴンの一言で、さらに空気が砕けた。
マスタードラゴン
「――人間よ」
その言葉だけで地面が割れた。
タクミは反射的に土下座する勢いで膝を折り、
全身汗まみれで叫ぶ。
タクミ
「ひぃぃっ!!!
ちょ、ちょっと待って!?
まだ何も悪いことしてません!!?」
マスタードラゴンは、ゆっくりとタクミへ顔を近づける。
直径20mの巨大な瞳孔が、タクミの姿を映し込む。
マスタードラゴン
「貴様……
一撃で消し炭にできる存在を前にして、
なお“開発交渉”などと言うのか?」
タクミ
「す、すみません!
人間代表として……生き残りたいです!!」
ヴァン(四つん這い)
「竜王よ……!
我が魂を……粉々に……しないで……」
カーミラ(無表情で震えている)
「…………怖い」
ミラ
「タクミ様、正直に申し上げますが……
この覇気、戦闘力換算で世界崩壊級です」
リーナ(涙目でタクミにしがみつく)
「リュ、リュウサン……オコッテル……!」
マスタードラゴンは、微かに鼻息を漏らす。
その熱だけで、タクミの髪の毛がちりっと焦げる。
マスタードラゴン
「“竜族の望むリゾート”……
そんな言葉、ただの戯言に聞こえるが?」
タクミ
「ちがいます!!
本気です!!!
ぜんっっっぜん戯言じゃありません!!!」
炎が吹き上がる火口で、タクミは死にかけながらも叫んだ。
その姿を見て、マスタードラゴンは初めて興味を示す。
マスタードラゴン
「……生きる意思だけは強いか。
よかろう、人間。話を聞いてやる」
タクミ
「ひ、ひやあああ……(即崩れ落ちる)」
リーナ
「タクミ、ヨク頑張ッタ……(泣)」
カーミラ
「死んでないだけ……偉い」
ヴァン
「我が魂……今にも抜けるところだった……」
マスタードラゴンの目がさらに光を増す。
タクミの影は溶岩の光と相まって小さく見えた。
その一瞥で、全員の心臓が凍りつく。
マスタードラゴン
「かつて貴様ら人間が、
“ドラゴン温泉郷パラダイス計画”なる名のもとに、
我らの寝床を勝手に観光地にしようとしたことを忘れたか?」
タクミ(必死に言い訳)
「そ、それは……俺たちは今度こそ違います!
竜族と共存できる理想のリゾートを作りたいんです!」
リーナ
「リュウサン、一緒ニ楽シイ、リゾートツクル」
カーミラ(静かに一言)
「……信用を示せ」
ミラ(解析中)
「火山口バンジー、竜専用スカイホテル、火炎ショー……条件を整理しました」
マスタードラゴンの巨大な目がさらにギラリと光る。
その瞬間、タクミの心臓は完全に止まりかけた。
マスタードラゴン
「ふむ……口だけでなく、行動も示すか。
ならば条件を聞いてやろう。
だが、人間よ失敗すれば――」
タクミ(全身震えながら)
「し、失敗したら……?」
マスタードラゴン
「――貴様らを観光資源として、火口に展示する」
タクミ
「ぎゃあああああ! そんな重すぎる試練ある!?!」
ヴァン
「ふはは! この絶望の舞台こそ、我が中二病魂を輝かせる……!」
リーナ
「タクミ、頑張リ! 私タチデ竜ト一緒ニリゾートツクル!」
火口の風が吹き抜け、火山灰が舞う中、世界初の“竜族公認リゾート開発”への挑戦が始まった。
カーミラ(無言で一言)
「……始まった」
タクミは拳を握りしめる。
「よし……この試練、絶対に乗り越えてみせる!」




