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【ランキング32位達成】累計1万9千PV『異世界不動産投資講座~脱・社畜28歳、レバレッジで人生を変える~』  作者: 虫松
第三部 不動産再生 帝都《紅蓮亭》編

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第1章 「紅蓮亭、再生の炎」

帝都の空は、煤けた灰色だった。


高層の魔導塔が林立し、空を走る馬車が光を放つ。

その足元、帝都南区の裏通りに、ひっそりと一軒の宿が眠っていた。


挿絵(By みてみん)


《紅蓮亭》


かつては“旅人の憩いの宿”と呼ばれた名宿も、いまは見る影もない。

看板の字は欠け、庭の池は干からび、玄関の瓦は崩れ落ちていた。

タクミは梅ばあさんから預かった古びた鍵を握りしめ、重い扉を押し開けた。


「……これは、ひどいな」


舞い上がる埃、朽ちた畳、蜘蛛の巣だらけの天井。

部屋の中には、かつての客の忘れ物と思しき古びたトランクが残っている。

彼は静かに廊下を歩き、各部屋を見て回った。


トイレは木製の旧式式。魔導水洗機能など影も形もない。

風呂場にはひび割れた石風呂。お湯を張るには半日かかる構造。

洗面台の鏡は曇り、魔法照明も点かない。寝室のベッドはバネが錆びついていた。


「……まるで時間が止まった宿だ」


タクミはため息をついたが、次の瞬間、目の奥に火が灯った。

「0からの出発だな。なら、ここから始めよう」


そう呟き、埃まみれのカウンターに手を置いた。

《紅蓮亭》の再生、それは《椿山荘》の延長ではなく、まったく新しい挑戦だった。

なぜなら、ここは帝都。客層も価値観も、すべてが異なる。


翌日、タクミは帝都の宿事情を調べるため、街へ出た。

まず向かったのは、今話題の超高級ホテル《グランドロイヤル》。

ライバル会社が運営する、帝都の象徴とも言える巨大宿泊塔だ。


「いらっしゃいませ、ようこそ《グランドロイヤル・パレス》へ」


出迎えたのは、銀糸の制服をまとった受付嬢。

玄関ホールには香水と花の香りが漂い、床は磨き抜かれた大理石。

魔導ゴーレムが荷物を運び、精霊がドリンクを配っている。


「……これが、帝都の“おもてなし”か」


タクミは目を細めながら、客として内部を体験した。

部屋は自動開閉扉、ベッドは睡眠魔法付き。

風呂は魔導泉直結で温度調整自由。

朝食はホログラムで選べる多国籍料理。

スタッフの笑顔も完璧で、どこにも欠点がない。


だが――どこか“冷たい”と感じた。


徹底されたサービス、無駄のない動き。

だが、そこには人の息遣いがない。

「笑顔を浮かべるプログラム」と、「人の温もり」は違うのだ。


夜、宿を出たタクミは帝都の風に立ち止まり、呟いた。

「……同じことをしても、勝てない」


文明も、金も、設備も、帝都の方が遥かに上だ。

だが、彼には《椿山荘》で培った哲学がある。


“おもてなし”とは、心を届けること。


「紅蓮亭は、帝都のどこにもない宿にする」


彼の視線は、遠くに瞬く魔導塔の光を見据えていた。

その瞳には、確かに再生の炎が宿っていた。


その夜、タクミは紅蓮亭に戻り、帳簿を開いた。

金貨は100枚。(約1億円くらい)

それでも彼は静かに笑った。


「設備じゃない。心で勝負するんだ」


埃まみれのランプに火を灯すと、

その小さな光が、帝都の闇を少しだけ照らした。


紅蓮亭、再生の第一歩が、今、始まった。

ワンポイント解説


■不動産再生とは?

不動産再生ふどうさんさいせいとは、老朽化・空室・経営難などで価値が下がってしまった建物や土地を、新しい付加価値を加えて再び収益を生み出す資産へと生まれ変わらせることをいいます。


1.リフォームとリノベーションと不動産再生の違い

リフォーム

古くなった部分の修繕部分的(内装や設備)維持・修理中心


リノベーション

住み心地・機能性の向上空間全体(間取り変更など)快適性・デザイン重視


不動産再生

収益性と資産価値の復活物件+運営+市場戦略投資・経営重視


つまり、再生とは単なる“建物の修理”ではなく、

「物件の再設計 × 運営戦略 × ターゲット再定義」の三位一体の事業です。


2.なぜ今、不動産再生が注目されているのか

人口減少と空き家増加で新築より中古活用が合理的になった。

建築コスト高騰により、既存建物の活用がコストメリットを持つ。

地域創生・観光振興の流れで、古民家・旅館・商店街などが再評価されている。


特にホテル・旅館分野では、

「老舗旅館を現代風に再生」することで、

外国人観光客や若年層に人気を集める例が増えています。


3.再生の3ステップ

調査・診断(現状把握)建物構造・配管・耐震性のチェック

立地・交通・周辺施設・競合ホテルの調査

収支・キャッシュフローの現状分析


タクミが紅蓮亭を訪れて「古びたトイレや風呂を見てショックを受けた」のは、この段階。


② 計画・改修(再設計)

コンセプト設計(誰に・何を・どう提供するか)

改修・デザイン・設備の更新

費用対効果(ROI)の試算


他ホテルを視察して“差別化の必要性”を感じたタクミの気づきがここにあたります。


③ 運営・ブランド化(再生後の経営)

新しいターゲット層への集客戦略

SNSや口コミによるブランディング

サービス品質・顧客満足度の向上

“独自のおもてなし”を考えたタクミの決意は、まさにこの段階です。


4.ホテル・旅館再生の成功ポイント

ハード×ソフトの両輪

建物改修だけでなく、「体験・物語・接客」で心をつかむ。


地域との連携

地元食材・職人・文化を活かすとブランディング力が高まる。


費用対効果の徹底

“全部直す”より、“利益を生む部分に絞って改修”すること。


再投資計画(Exit戦略)

売却益を狙うのか、運営益を伸ばすのか、目的を明確に。


まとめ

不動産再生とは、

「古びた建物に、もう一度“息吹”を吹き込む仕事」です。

それは単なる経済活動ではなく、

人の思い出・地域の歴史・職人の技術を未来に繋ぐ“文化の継承”でもあります。


タクミが紅蓮亭に感じた「ここをもう一度、人が集う場所にしたい」という気持ちこそ、不動産再生の原点です。

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