第9章 「大観光客争奪戦 ― 地元密着妖精体験 VS オレルアン帝国」
妖精群島の空が、まるで戦場のように騒がしくなった。
朝焼けとともに吹き荒れるのは、潮風でも魔法でもなく
観光客を奪い合う怒号と宣伝合戦の嵐である。
■オレルアン帝国の奇襲プロモーション
巨大オレルアンホテルの上空。
プーチンの号令で、
百機以上の広告ドローン群が編隊飛行を開始した。
「来い! 世界最高級の地上楽園へ!
全室スイート! 五つ星どころか十六星!!」
スピーカーが空を震わせる。
空中に、巨大ホログラムでホテルの広告タワーが立ち上がる。
スパ、プール、サウナ、カジノ、サーカス、シアター、格闘ショー、海底トンネル、そしてVR詐欺体験ゾーン。
まるで“帝国が本気で侵略に来た”としか思えない規模だ。
海岸には長蛇の列。
観光客
「すげぇ…!」
「なんだあの城みたいなホテル!」
「オレルアンの金の力は桁違いだ!!」
ヴァン
「ふ…光の洪水。闇に生きる俺でも目が焼かれる…!
だが、我らの勝利はまだ沈まぬ!」
中二病全開で吠える。
■タクミの反撃 ― 妖精体験フルパワー
一方、フェアリーホテル。
島の森から、
無数の妖精たちの光が飛び立つ。
リーナが先頭に立ち、楽しげに舞った。
リーナ
「みなさん! フェアリーダンスの時間ですよー!」
観光客の子供たちが歓声を上げる。
タクミ
「よし、全アトラクション全開!! ミラ、誘導頼む!」
ミラ(冷静)
「はい。現在、SNS分析では“灯火の舞”が世界トレンド7位。
ターゲット層を海岸3番ゲートへ誘導します」
指先一つで人流をコントロールする。
フェアリーホテルの目玉アトラクション
詐欺ゼロ特区のミッションゲーム、騙され体験、妖精ガイドの自然巡礼、カオス迷路
どれも大行列ができ始めていた。
そして午後。
SNSに、ある噂が駆け巡る。
「オレルアンホテル、基礎が傾いてるらしいぞ」
「崩落寸前だって…?」
SNS投稿者は、ホテルガイド階級審査員・バドレス。
世界ホテル業界でも影響力を持つ男だ。
もちろん、これは噂
だが、“噂に弱い観光客心理”は一気に動く。
オレルアンホテルの受付から、人々が逃げ出し始めた。
観光客
「やっぱり怖い!」
「子供連れて入れん!」
「傾いてるの、やばくない?」
プーチン
「誰が言った!? 誰がそんなデマを流した!!
金だ!!! 金で黙らせろォ!!」
しかし
救援に向かった作業兵士が、ホテルの柱を叩く。
ゴゴ…ッ
兵士
「……社長……マジ…で傾いてます」
プーチン
「なん……だと?」
急ピッチで建設したせいで、基礎が地盤の変化に耐えられなかったのだ。
“世界帝国の顔”のホテルが、少しずつ傾きはじめていた。
ミラはすでにそれを察知していた。
ミラ
「タクミさん、来ます。
今から観光客の大移動が始まります」
タクミ
「本当に…逆転できるか!?」
ミラ
「できます。
“安全”という価値は……どこの世界でも最強です」
次の瞬間。
フェアリーホテルの入口に観光客が雪崩のように押し寄せた。
観光客
「フェアリーホテルに行こう!」
「子供はあっちのがいい!」
「妖精の灯火の舞、今夜がハイライトだって!」
ヴァン
「来た…! 勝利の風が…!
闇の翼を震わせよッ!!」
タクミ
「よっしゃあああ!!
口コミの力!
SNSの力だああああ!!」
プーチン
「クッ…! クッ……!
まだだ……まだ終わりではない!!!噂はデマであると拡散しろ! もっと書き込みを削除しろ!」
オレルアン帝国の支配か。
地元フェアリー復興か。
勝利の女神は、誰に微笑むのか。




