第4章 「観光客争奪戦 ― フェアリーホテル vs おそロシアンホテル」
妖精島に、戦いの火蓋が切られた翌朝。
しかし今度の戦いは戦車でも兵士でもなく観光客の心で決まる戦争だった。
■ プーチン・オレルアン、広告戦争を開始
海岸線にそびえる新築途中の巨大ホテル群。
ロシアンホールディングスの青と黒の旗が風を裂き、上空の大型ドローンが島中に宣伝ホログラムを映し出した。
「ようこそ! オレルアン妖精島リゾートへ!
世界最大級! 5,000室超の超豪華ホテル、開業ーー!!」
空には花火が弾け、クルーザーからは音楽隊のブラスが響く。
翌朝には早くも観光客の大行列が桟橋を埋め尽くしていた。
■ ロシアン側の豪華施設
プーチン・オレルアンは鼻で笑いながら、高さ70階のホテルロビーから島を見下ろす。
「見よ、タクミ。
これが“資本主義の力”だ。金と力があれば、妖精島など一瞬で世界一の観光地になるのだ」
ホテル内にはすでに観光客の歓声が響いていた。
東洋最大級の天海プール
24時間営業のロイヤルサウナ
10種類のステージを持つ巨大シアター
世界トップダンサーによるショータイム
選手が実際に練習しているロシアン格闘アリーナ
そして極めつけは…島内唯一のカジノ
さらにSNS広告に100億円を投入したため、ネットには
「妖精島=オレルアンホテルの極楽天国!」
という宣伝が踊り続けた。
客たちは叫ぶ。
「すげええ!!
妖精なんかより、ホテルがテーマパークじゃん!」
「カジノある! ショーある! プールある!
もはやラスベガス超えてる!!」
金と宣伝力で、島は“おそロシアン”一色に塗りつぶされていく。
◇◇◇
タクミの建てた木造2階建ての小さなコンドミニアムホテルは、隣の巨大ホテル軍と比べるとまるで子猫のように小さい。
従業員は地元の妖精たちと、リーナ、そしてヴァン、カーミラ、ミラ。
だがタクミは胸を張った。
「リーナ、カーミラ。
僕たちは派手さじゃ勝てないけど…
“おもてなし”では絶対に負けないからな!」
■ フェアリーホテルのサービス
妖精たちが客の荷物をふわりと運ぶ「浮遊チェックイン」
リーナによる自然光の魔法で作る「光の朝食」
妖精王が育てた「幻の花茶」
夜には妖精たちの「灯火の舞」
さらにタクミは“詐欺ゼロ特区”アトラクションを設置。
「こちら、どれだけ詐欺を見破れるかチャレンジです!
本当に“悪徳不動産の勧誘シミュレーション”もあるよ!」
リーナは楽しそうに飛び回る。
「タクミ、タクミ〜!
お客さん、すごい笑ってるヨ! フェアリーのおもてなし、好評ダヨ!」
しかし現実は厳しい。
開業初日の宿泊客は わずか7名。
対してプーチンのオレルアンホテルは 初日で12万人 の来場者。
妖精王がしょんぼりした顔でタクミの肩に乗る。
「タクミ…ワタシ、王なのに
お客サン一人も呼べない…」
「大丈夫です、妖精王。
ここから巻き返すんですよ!」
タクミは拳を握った。
「派手さに勝てなくても、心に残るホテルなら…必ず勝てる!」
一方その頃、プーチンは…
豪華スイートの最上階で、プーチン・オレルアンはグラスを傾けていた。
「ふふふ…
これで妖精島の観光客は、すべて私のものだ。
タクミよ、貴様のちっぽけなアリ旅館など、すぐに踏みつぶされる」
秘書が駆け寄る。
「CEO、宣伝戦でも圧倒的優勢です!
SNSは“妖精島=ロシアン島”で統一されました!」
プーチンはソファにもたれながら言った。
「よく覚えておけ。
この島は…
プーチン・オレルアンが世界経済の頂点に立つための舞台だ。
タクミよ。貴様は私が踏み台にする敵役にすぎん」
その目は、冷たく妖精島を見下ろしていた。




